地方税と地方交付税 ~京都市の財政危機の根本原因は税収の多寡ではない~
はじめに
京都市の財政危機に関する報道では、京都市の公表のストーリーに合わせて、さも財政危機の原因は市税収入の少なさであるかのような説明が散見されました。
実態は、京都市の財政危機は、「歳入」ではなく「歳出」に原因があったということを改めて知って頂きたいを思います。
財政危機の原因とされる市税収入の少なさ
京都市の財政危機に関して、テレビや新聞で報道されるのは概ねこういうストーリーです。
「京都は、固定資産税が非課税である神社仏閣や大学が多く、また、大学生が多いことで納税する所得のない市民が多いため税収が少ない。バブルの時期に地下鉄東西線を整備したことで多額の負債が残った。そこにコロナ禍が襲い観光を中心に大打撃を受けた。」
後半は、別の論点なので置いておくとして、前半の税収部分に関して検証していきます。
京都市の市税収入が政令指定都市の平均より少ないことが強調されますが、そもそも、大阪市や名古屋市など一部の都市が大きく平均を引き上げているだけで、京都市は決して市税収入が問題視されるほど特別に低くはありません。
京都市が公表する決算の説明資料には必ず、市税が少ない要因が添付されます。個人市民税は、先ほどのストーリーに合った通り、大学生が多いことに触れられています。
固定資産税に関しては、配慮もあってか、神社仏閣には触れておりませんが、古い木造家屋が多いことを要因に税収が少ないことを強調しています。
一方で、名古屋市並に多い「法人市民税」については説明も資料もなく、意図的に京都市の税収が少ないことを演出しています。
地方交付税は地方税を補完する制度
地方交付税は、本来は地方の固有財源ですが、自治体間の財源の偏在を解消するために、国が地方に代わって国税として徴収し配分しています。
各都道府県・各市町村によって税収の多寡がありますが、例えば、「税収が少ないから公園がありません」というようなことがあると困ります。そこで、どの地域の自治体であっても一定の行政サービスを提供できるように、税収の少ない自治体には多く、税収の多い自治体には少なく、地方交付税を配分することで、国が各自治体間の財源の不均衡を調整しているわけです。
そうなんです。京都市の税収が少ない分は、地方交付税をたくさんもらえるということになります。
説明書きの通り、京都市の地方交付税は、政令指定都市の平均の約1.3倍も受け取っています。
なお、地方交付税の詳しい説明と、今回は説明を省いた臨時財政対策債については、こちらの投稿をご参照下さい。
標準財政規模で見る京都市の歳入
標準財政規模というのは、市税と地方交付税(臨時財政対策債分も含む)の合計額で、京都市が自由に使える財源(一般財源)となる「歳入」金額です。
ご覧の通り、市税と地方交付税の合計額では、政令指定都市でも7番目に高くなっており、「歳入」という観点でみれば、むしろ多い方なのです。
京都市の公表もメディアの報道も、京都市の財政危機の主な要因として「歳入」とりわけ税収にスポットを当てているのが的外れなことがよくわかります。
結局、「歳入」はしっかりあるにも関わらず、「歳出」つまり使い方に問題があるという不都合な真実を誤魔化しているのです。
まとめ
京都市の公表やメディアの報道では、京都市の財政危機の原因があたかも市税収入が少ないことであるかのような説明が散見される。
京都市の公表でも、税収の少なさを強調する意図的な説明が多いが、そもそも京都市の税収は極端に少ないわけではない。
地方交付税は、地方税収が少ない自治体に多く配られるので、京都市が税収が少ない分は、当然、地方交付税で多くもらえる。
結果、市税収入と地方交付税を合わせた一般財源(自由に使える「歳入」)は、政令指定都市の中でも多い方となる。
京都市の財政危機の根本原因は、税金の使い方である「歳出」にあるのは明らかである。