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トラクションハックというアンチリーン

これまで世界の約300社ほどのプレシードスタートアップを支援してきて、必ずと言って良いほどリーンスタートアップのフレームワークを応用してValue-upに繋げてきました。

アンチ・リーンスタートアップという言葉は
2016年末頃にNYのAI系企業x.aiが提唱したり、
ピーターティールがリーンスタートアップを否定したりしたことで
当時スタートアップ界隈では話題になりました。

TECHFUNDでも同様にリーンスタートアップに否定的な考えを
何度か抱き、上記の件も含め、アンチリーンを検証してきましたが
やはりリーンスタートアップのフレームワークは非常に強力で、
否定を否定することができてしまっていました。

リーンの定義は他所に任せ、否定の否定も主題ではないので簡単にだけしておくと
x.aiの提唱する短期間での仮説検証自体の不や期間を区切ったアクセラレーションの否定には一部同意できますが
AI系の企業でも(TECHFUNDではエンターテイメント系の企業という仮説でした)
突き詰めれば顧客・課題仮説があり、検証が必要です。そのスパンを短くするべきだと思います。
ピーターティールもリーンよりビジョンだと語っていますが、
仰る通りでありリーンを否定するものではありません。
現在TECHFUNDではリーンキャンバスを
スタートアップキャンバスという形にアップデートし、
ビジョンやFMF(Founder Market Fit)を前提とした
リーンを行えるようにしました。

今回私たちが体験したアンチリーンはこれまでのような事象とは異なりました。

現在を含めこれまでTECHFUND内で新規事業をいくつも立ち上げようとしてきているのですが、なかなか顧客が見つかりませんでした。
共通して起きていたことは3点でした。
①顧客セグメントに該当するアーリーアダプターが少ない(SOMで1000社ぐらい)
②仮説検証が高速に進んではいるものの、PSFしない
③必要な箇所のピボットを行っている

本来であれば、このままリーンスタートアップの手法に則り、
顧客セグメントや課題仮説のピボット・検証を繰り返していくべきですが、
顧客が獲得できないままリソースが足りなくなっていく焦燥感の方が強くなっていきました。

ここで私たちが出した答えは「そもそも顧客・課題仮説を置かない」というアンチリーン的方法です。
いきなりやると失敗しますが、あくまでリーンな仮説検証を行なった上で
それでも効果が出ない時には、あえて顧客・課題仮説を置かずに商品をマーケティングすることで
獲得できた方法を評価し獲得できた相手から学ぶことができるのではないかと考えました。

本来リーンスタートアップでは「何を学ぶか(Learn)」から逆算して「仮説を構築(Build)」しますが、
タブーとされている仮説構築のための学びから始めてしまうようなやり方です。
何万時間とリーンスタートアップのことを考えてきた自分たちだからこそ、
100時間のリーンスタートアップ議論よりもユーザー2人の声を大事にしようという考えに至ったわけです。

現在TECHFUND内ではこの考え方に則り、リーンが非効率的という結果になった一部の新規事業は顧客・課題仮説を置かずに初期マーケティングを行っています。

私たちはこの手法を「トラクションハック」と呼んでいます。
これは、上記①〜③のような事象が起きている新規事業には非常に有効な手法だと考えており、
さらにCACが高い事業だとより一層有効な手法だと考えています。
これまでの仮説検証のためのマーケティングやグロースハックに変わる、仮説構築のためのマーケティングです。

今後同様の事象に出会った時には、リーンスタートアップをあえて捨て、トラクションをハックしていきたいと思っています。

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