Sweat Equity -何者でもない起業家を起業家たらしめる力-
TECHFUNDのビジョンは「Everyday, Everywhere, the Eve of the Revolution. (毎日、至るところで、革命前夜)」です。
私がこのビジョンにすると決めた背景は、学生時代にまでさかのぼります。
当時、友人に一人の学生起業家がいました。
彼との出会いは私が大学4年生のとき。
当時私が学生ながらフリーで開発を請けていた時期です。
彼に話を聞くと、非常に面白いアイデアを持っているにも関わらず
彼はエンジニアではないし、周りにエンジニアもいない、
"アイデアはあるけどサービスを作れない!"という状況だったのです。
サービスのアイデアをプレゼンしてくれた彼は非常に情熱的で
心動かされるものがありました。
「みんなで旅を作るサービスを作りたい」
「世界中に、国を超えてもっともっと友人関係が出来るサービスを作りたい」
「“好き”で隔たりのない世界をつくりたい」
非常にユニークなアイデアと情熱を持っているにも関わらず、
投資家からは「サービスができたらまた来てね」という状態。
エンジニアのところへ行けば「給与はもらえるの?」と突き返される。
しかし、ビジネスモデルは投資家達に相談をすることでかなり良いものになっていましたし、
周りにはユーザーになってくれそうな人たちもいる。
これは1秒でも早くスタートさせ、検証することが重要なタイミングだと感じていました。
もちろん資金は無いので無償で手伝い始めたのですが、当初はビジネスという感覚よりかは、
良い起業家が良いアイデアを持っているのでこの先どうなるのか知りたいとか
同じ大学生を助けることがいつか自分にとってプラスになるだろうとか
自分のビジョンにも通じる部分があるので手伝おうぐらいの、
ある意味エンジェル投資家のようなスタンスでした。
机上で話し合うよりも、作ることで世の中を変えて行こうと思ったのです。
(当時北海道にいた私は松濤の彼の家に泊まりがけでお邪魔し、革新的な新しいサービスを起業家とゼロから一緒に作ることにワクワクし気付いたら朝までプロダクトの話をしながら開発をしていました。懐かしい青春の思い出です。)
結果、「trippiece」というサービスが生まれました。
α版までリリースしたところ、周りの友人たちが利用してくれて、一気に数百ユーザーまで増えました。
まだデザインも当てられていない雑なサービスにもかかわらずです。
そしてそれを見た友人の一人がデザインをもっと良くしたいと声をかけてきてくれてアップデートされ、他のエンジニアも手伝いたいと加わってくれて、気がつけばチームが出来上がっていました。
その後投資家からも約2億円の資金調達をするまでに成長しました。
最初のプロダクトができれば、起業家のビジョン・情熱は何倍にも掛け算されることが証明された気がしました。
これをもっと増やす事ができれば、世の中に与えるインパクトも非常に大きくなる。
そう確信を持つことができました。
今の世の中、投資家に会いに行っても目の肥えた方が多いので
「サービスを作ってからまた来て」と言われ、
エンジニアを採用しようとしても「どんな技術が必要なのか分からない」と言われ、
八方ふさがりになることが多々あると思っています。
友人の起業家に話を聞くとその手の悩みをよく聞きますし、
世の中のニーズもあると肌で感じていました。
技術があれば、サービスを作る事ができ、資金調達が可能になって、
技術者の採用もうまく行き、本当のスタートを切る事ができる。
私自身も、起業家と一緒にゼロからサービスを作っていくことや、今までにないサービスを作って世の中に大きなインパクトを与えることができる喜びがある。
そこで「技術のサポートを行う代わりに株式をいただく」というモデル「技術投資」を思いつくに至りました。
このモデルはシリコンバレーでは「Sweat Equity」と呼ばれ、エンジェルの間で一時期流行しました。
(当時MOVIDA JAPANの孫 泰蔵さんが教えてくださいました)
そこから、アクセラレーションプログラムという形で事業化し、
Sweat Equityに取り組む会社「TECHFUND」を2014年10月9日(テックの日)に立ち上げました。
当時会社としてSweat Equityに取り組むのは世界初の試みでした。
これまで「投資」というと、資金の投資を指すことが多かったかと思います。
私たちは、そこに技術を投資しています。
起業家が成し遂げたいビジョンに対して技術的なサポートをして行き、
実務レベルだとCTOのように、技術選定やアーキテクチャ設計を行い、サービス・アプリを共に作り、監査して守りを固め、技術者の採用を手伝って一緒にスケールを目指して行きます。
仮に起業家が失敗してしまったとしても、もう一度始めれば良い。
スタートアップをやっているとピボット(事業モデル変更)なんて当たり前です。
私たちが提供する投資事業は、お金の投資よりもレバレッジが効くスキームだと思っています。
お金と技術者のリソースがイコールのように思えますが、技術は作れば作るほど社内にナレッジが残ります。
これはピボットに耐えやすい構造だと考えています。
実際、「Coupe」という2019年にCyberAgentにM&Aされた投資先は、元々サロンモデルと美容師のマッチングサービスから事業を開始しましたが、
事業の途中でモデルマネジメントの事業にピボットしています。
仮説を立てしっかり検証しきることも大事ですが、
その後ピボットを奨励できることで、成功確率を極端に上げることができるのではないかと思っています。
TECHFUNDにはエンジニアや、デザイナー、グロースハッカー等、
技術者が多数集まっています。
リクルートやサイバーやDeNA、楽天といったメガベンチャー出身者が多く、
Google主催のハッカソンで入賞や世界的なブロックチェーンハッカソンでアジア1位をとるような、
1日で世の中を変えるサービスを作れる人材たちです。
これがTECHFUNDの強みであり、中心価値です。
よく「VC(投資家)のリプレースなのか?」という質問をいただくのですが、私たちは技術支援に特化しています。
VCはスタートアップを各フェーズで支援するという意味では同じ志を持っている仲間だと思っています。
アクセラレーションプログラムのコンセプトに共感してくださるVCも多くいらっしゃるので、
起業家の方の可能性がどんどん広がるように、一層連携強化をはかっていきたいと思っています。
さらに言えば、Sweat Equityは一つの価値観だと思っています。
頑張ってるスタートアップに対して、作ること以外に例えばソーシャル上で応援するだけでも、その応援分の株がその応援した人に渡るような世界が作れたら、それが一番良いと思っています。
今はまだ法律的にそのような設計を行うことは難しいですが、いつかそのようなことが実現できるようにしていきたいと思っています。
エンジェル投資家のような気持ちで行う最初の小さな応援こそが、その時点ではまだ何者でもない起業家を、真の起業家たらしめる力になるはずなのです。
最も難しい挑戦をしている人が、最も幸せであるべきです。
人は、自分の才能に気づくことができるはずです。
挑戦してもいいんだということに気づくことができるはず。
世界を変えられるうちの1人なんだと気づくことができる。
毎日、至るところで、革命前夜。
TECHFUNDにはこの志に共感してくださった野村ホールディングス社をはじめとする投資家の皆様より第三者割当増資で1.2億円の資金調達を行って、
現在約40名のGeniusが集まり、
Sweat Equityという価値観を大事にしながら、グローバルにアクセラレーションプログラムを展開して来れています。
このビジョンを、私も一人の起業家として、人生を懸けて達成していきたいと思っています。