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東大物理40点への軌跡 - 知識から実践へ、90日間の集中特訓で掴んだ飛躍

第1章:挫折からの気づき

「物理の理論は完璧に理解していたはずなのに、なぜ点数は伸びないのか」

高校3年生の4月、私の東大物理への挑戦が始まった。

通っていた塾の先生は「物理は理論の理解が重要だ」と強調していた。

その言葉を聞いて、私は、

「理論さえ完璧に理解すれば大丈夫なはずだ」

と解釈してしまった。

その考えのもと、半年かけて理論学習に没頭した。

塾の講座で学んだ内容を何度も復習し、物理法則を暗記し、概念の理解を深めることに力を注いだ。

しかし、これは後から振り返れば、先生の言葉の真意を取り違えた、致命的な勘違いだった。

模試の結果は惨憺たるものだった。東大模試では5〜10点(60点満点)という散々な結果が続く。理解したはずの理論が、なぜか点数に結びつかない。

「もっと理論を完璧にすれば点数は上がるはずだ」

その思い込みのまま受験に挑んだが、共通テストで680点/900点という結果に終わり、足切りにより東大受験の門は閉ざされた。

1浪目。

予備校の授業を受け、さらに理論の理解を深めようとした。

確かに簡単な問題は解けるようになった。

しかし、東大レベルの問題には全く歯が立たない。

そして迎えた初めての東大2次試験。

結果は物理20点/60点。この時、初めて気がついた。

「理論を知っているだけでは、意味がない」

振り返ってみれば、学習時間の配分は理論8:演習2という極端なものだった。しかも演習と言っても、基本的な問題ばかり。東大レベルの問題にはほとんど手をつけていなかった。

塾の先生が言っていた「理論の理解が重要」という言葉の本当の意味は、「理論を実践で使えるレベルまで理解する」ということだったのだろう。

しかし当時の私は、その真意を理解できていなかった。

知識はあっても、それを実践で使えなければ意味がない。この気づきは、その後の学習方法を大きく変えることになる。


第2章:2浪目での大転換

高3での共通テスト足切りから一年。

1浪目で初めて臨んだ東大2次試験。結果は物理20点/60点。

この経験は、私に新たな問いを投げかけた。

「今までのやり方は間違っていたのではないか?」

「点数を上げるために、本当に必要なことは何か?」

それまでの学習を振り返ると、理論は理解しているつもりでも、実際の問題ではその知識を使いこなせていなかった。特に東大レベルの難問になると、まるで歯が立たない。20点という点数は、その事実を如実に示していた。これは単なる理論の理解不足ではなく、もっと根本的な問題があるのではないか。

そんな自問自答を繰り返すうちに、一つの仮説が浮かんできた。

「理論を実践で使える形に変えるには、とにかく演習量が必要なのではないか」

この仮説を検証するため、2浪目では学習方法を大きく変えることにした。最も大きな変更点は、演習と理論の時間配分だ。それまでの理論7:演習3から、演習9:理論1という大胆な転換を図った。

さらに、この方針転換をより確実なものにするため、一つの決断をした。

90日間、物理だけに集中する特訓期間を設けることにしたのだ。1日10時間を物理学習に充てる。英語など他の科目は最小限に抑え、物理の問題演習に没頭した。

「もっとこうすれば点数が上がるのではないか」

この仮説検証の過程は、私にとって新しい発見の連続だった。

特に、「難問題の系統とその解き方」という教材を使った演習では、それまでとは全く異なるアプローチで問題に取り組むことを学んだ。

最初の1、2周は丁寧に、論理的に考えて、記述しながら解く。

3周目以降は時間を計測しながら解き、いかに効率的に答えにたどり着けるかを試行錯誤した。計算のショートカット方法を見つけ出し、よりシンプルな解法を模索する。

この取り組みの成果は、徐々に数字となって現れ始めた。

模試の点数は1浪目の20点から40点へと着実に上昇していった。

理論重視から演習重視への転換。90日間の集中特訓。これらの決断は、私の物理の理解を大きく変えることになった。

そして何より、「できるようになる」という手応えを、初めて実感として掴むことができた。


第3章:具体的な学習方法の進化

2浪目での90日間の集中特訓。この期間で、私の学習方法は大きく進化していった。

最も重要だったのは、「難問題の系統とその解き方」という教材との向き合い方だ。同じ問題を繰り返し解くことで、段階的に解法を進化させていった。

第1段階は、とにかく丁寧に解く。

問題を解く際は、すべての過程を書き出し、論理の飛躍がないように気をつけた。1問に1時間以上かけることも珍しくなかった。この段階で大切なのは、スピードではなく、確実な理解だ。

第2段階は、解法の最適化。

同じ問題を2周目、3周目と解いていく中で、計算のショートカット方法を探っていった。

「この計算はこの方法を使えば簡単になる」

「この考え方でより早く答えにたどり着ける」


といった発見の連続だった。

特に力を入れたのが、図の書き方の工夫だ。

例えば、回路の問題では、電圧や電流の値の配置を工夫することで、計算ミスを減らすことができた。他の受験生の解答も参考にしながら、自分にとって最も分かりやすい表現方法を模索した。

また、解答の書き方も最適化していった。

法則名、式、そして答えのみを書き、途中の計算は答案用紙には書かないようにした。これにより、限られた時間内でより多くの問題を解くことができるようになった。

進捗の可視化も重要だった。

参考書の各問題に、できたかどうかを〇×で記録していった。

また、解答にかかった時間も記録し、少しずつでも短縮できるよう意識した。間違えた問題については、なぜ間違えたのかを必ず言語化し、同じ失敗を繰り返さないよう心がけた。

「できた!」という経験を積み重ねることで、自信もついてきた。

模試の点数も、着実に上昇していった。

物理の問題を見たときの印象も変わってきた。

以前は「どうやって解けばいいんだろう」と途方に暮れていたのが、「ここからアプローチすればいけそうだ」と、解法の方針が立てられるようになってきた。

理論を知識として持っているだけでなく、それを実践で使えるツールとして磨き上げていく。それが本当の「理論の理解」なのだと、この時期に深く実感することができた。


第4章:精神面での成長

2浪目。

90日間の物理集中特訓は、私の精神面も大きく成長させることとなった。

当初は「毎日10時間も物理だけをやり続けられるのか」という不安もあった。しかし、その不安は意外にもすぐに消えていった。

その理由は、極めてシンプルだった。

「やるべきことは物理だけ」

この明確な焦点化が、逆に心を楽にしてくれた。

数学をやるべきか、英語をやるべきか、という選択に迷う必要がない。

目の前にあるのは物理の問題だけ。

この単純さが、むしろ心の安定をもたらしてくれた。

また、1つのことに集中することで、進歩が見えやすくなった。

昨日解けなかった問題が今日は解ける。

先週は1時間かかった問題が、今週は30分で解ける。

そんな小さな進歩の積み重ねが、次への原動力となっていった。


「これを乗り切れば、大学で自分の好きなことが学べる」

この先にある目標も、私を支えてくれた。

しかし、それ以上に重要だったのは、現在の環境への感謝の気持ちだった。

今、自分は勉強だけに集中できる。

それどころか、勉強していることに対して誰からも文句を言われることなく、むしろ応援さしてくれる人たちがいる。

この恵まれた環境に気づいたとき、「苦しい」という感覚自体が、実は気の持ちようなのではないかと思えてきた。

周りの人たちが喜んでくれること。

それが新たなモチベーションとなっていった。

問題演習の結果が伸び悩むこともあった。

しかし、そんなときも

「まだできないだけ。そのうち伸びる」


と自分に言い聞かせた。

この「まだ」という言葉には不思議な力があった。

「できない」という現実を認めながらも、そこに「今は」という時間軸を加えることで、希望を持ち続けることができた。

振り返ってみると、この時期の精神面での成長は、その後の人生にも大きな影響を与えることとなった。

目標を絞りシンプルにすること。

進歩を実感できる仕組みを作ること

現状に感謝しながら前に進むこと。

「まだできない」を「まだ」と捉えること。

これらは、単なる受験勉強のテクニックを超えた、人生の指針となっていった。


第5章:読者へのメッセージ

私の体験は、決して特別なものではありません。

むしろ、多くの受験生が陥りやすい「罠」にはまり、そこから這い上がってきた、ごく普通の過程だったと思います。

だからこそ、同じように物理と格闘している皆さんに、具体的なアドバイスとして以下のポイントを共有したいと思います。

理論と演習のバランスを見直す

「理論の理解が重要」という言葉の本質は、「理論を実践で使えるレベルまで理解する」ということです。

そのためには、以下のステップを意識してください。

1. 基本的な理論学習は早めに終わらせる

2. 演習の比重を大きくする(理論1:演習9を目指す)

3. 同じ問題を複数回解く

- 1周目:丁寧に、論理的に

- 2周目以降:解法の最適化、時間短縮

<効率的な学習方法>

1. 図の書き方を工夫する

- 自分にとって分かりやすい表現方法を見つける

- 他の人の解答も参考にする

2. 解答を最適化する

- 法則名、式、答えのみを記載

- 途中計算は別紙で

3. 進捗を可視化する

- できた問題に〇をつける

- 解答時間を記録する

- 間違いの原因を言語化する

<よくある誤りとその対処法>

1. 理論学習に固執しすぎる

→ 早めに演習に移行する

2. 易しい問題ばかり解く

→ 難しい問題にも意図的に取り組む

3. 解けない問題を後回しにする

→ 解説を見て、理解を深める

4. 時間を気にしすぎる

→ 最初は丁寧さを重視する

< 精神面のアドバイス>

1. 目標を絞りシンプルにする

- 科目を限定する

- 取り組む教材を限定する

2. 進歩を実感できる仕組みを作る

- 小さな成功体験を積み重ねる

- 記録をつける

3. 環境への感謝を忘れない

- 勉強に集中できる環境に感謝する

- 応援してくれる人の存在を意識する

4. 「まだできない」を「まだ」と捉える

- 時間軸を意識する

- 成長の過程として捉える

最後に強調しておきたいのは、これは単なる点数アップの技術ではないということです。

物理の問題を解くプロセスで身につけた

論理的に考える力」「効率化する視点」「精神面での強さ」

は、その後の人生でも必ず活きてきます。

皆さんも、ぜひ自分なりの方法を見つけ出してください。

そして、その過程で得られる気づきを大切にしてください。

必ず、それは皆さんの大きな財産となるはずです。


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