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建築CGのつくり方 1枚のビジュアルができるまでのワークフロー

建築ビジュアライゼーションの中でもっとも基本なのは静止画(いわゆるパース(透視図))でしょう。

この記事では私が建築ビジュアライゼーションで静止画を作成する際に行っている工程を紹介したいと思います。

これを読む方の中にはCG制作を依頼される方もいると思います。

そんな方はCG制作のワークフローを知ると、どの段階でどんな情報が必要なのかがわかるので、担当者とのやりとりがスムーズになると思います。

以下の目次に沿って解説します。



建築CGのワークフロー

人によってつくり方は異なると思いますが、私は以下の7つのプロセスを経て作成しています。

  1. モデリング

  2. マテリアルの作成と適用

  3. カメラ設定

  4. ライティング

  5. プロップスタイリング

  6. レンダリング

  7. コンポジット

この7工程を経て一つのビジュアルを作り出しています。
ひとつづつ、簡単にどんなことをやっているか紹介したいと思います。


1. モデリング

モデリングとは3D空間上に3Dモデルをつくっていく行為です。
何はともあれ、3Dモデルが無ければ始まりません。

何もないバーチャルな空間に面(メッシュ)を使って床や壁や天井といった部位をつくっていきます。

基本的には図面がある前提でモデリングをしていきます。

CAD図面をインポートして下敷きにすることもありますが、あまり複雑な形をしていなければ、図面を見ながら直接作成しています。

私がふだん使っているBlenderは、Sketch UpやRhinoのような3DCADと比べると建築のモデリング方法に少しクセがあります。

このXの投稿当時に比べるとBlenderに新機能が追加されていたり、私のやり方が最適化されつつあるので、今ならもう少しスマートにモデリングできると思います。笑

設計事務所からCGビジュアライズの依頼が来た際に、設計事務所で作成された3Dモデルを提供していただくこともあります。

その場合にはこの工程は省略できるかというと実はそうでもありあません。

いかんせん、設計事務所の所員が自分たちの検討用につくったモデルなので、ビジュアライズ向けの形になっていません。

具体的には

・3Dモデルが3D空間の原点から遥かに離れた場所でつくられている
・最新の状況が反映されていない
・マテリアルを当てるのに最適な状態になっていない
・必要な部材が入っていない
・窓枠やドアノブがない
・単純な形の立方体が何故か超ハイポリメッシュになっている

ということが起きています。

なのでモデルを提供いただいても、基本的にはそれを下敷きにモデリングし直しています。笑

もちろんゼロからつくるよりは下敷きとなる3Dモデルがあったほうがこちらの作業はやりやすいので、3Dモデルの提供がある場合はその分値下げしています。

とはいえ、設計事務所から提供されたデータがそのまま使えるわけではないのです。


2. マテリアルの作成と適用

私の場合はモデリングができたらマテリアルを作成していきます。

一般的にはライティング(照明設定)の方を先に行う場合が多いと思いますが、建築ビジュアライゼーションの場合は

・使用する素材がある程度決まっている
・どこのカットを作成するか、決まっていない場合がある

ので、ライティングよりも先にマテリアルを当てて、その後にどんなアングルで撮るかを考えていきます。

素材が決まっていない場合でも、仮のマテリアルを当てて、なるべく実際に建ったときのイメージを固めていきます。

マテリアルを作成する際にはきちんと実寸となるように寸法を見ながらUV展開をしています。

ちなみに私はこのUV展開がけっこう苦手です。笑

なにより めんど 大変なのでなるべくUV展開しなくてすむようなつくり方をしていたりします。

それはまた別の機会にでも紹介しますね。

ちなみにBlender限定にはなりますが、マテリアルのつくり方は私のYoutubeでも紹介しているので、興味があったらご覧ください。



3. カメラ設定

カメラ設定に関しては必ずしもこの段階に限らず、モデリングができた段階でカメラ設定をすることもあります。

ですが、建築ビジュアライゼーションの場合、ある程度マテリアルが入った状態で見た方が手戻りが少ないので、私はこの段階で行うことが多いです。

建築をどこから撮るか、複数の案を作成して依頼主にどのカットにするか確認してもらいます。


4. ライティング

ここまで来たら、ようやくライティング(照明設定)に入ります。

3.で決めたカメラを見ながら、どこに光が入ったら建築が魅力的に見えるか探っていきます。

God Ray(光芒)などを用いて演出を行うことはありますが、現実世界を忠実に再現するのが基本です。

例えば北側から強い光を当てるなどの現実離れしたライティングはしないようにしています。


5. プロップスタイリング

カメラアングルが決まって、いい感じの光を設定できたら、次は小道具を置いて雰囲気づくりをしていきます。

椅子やテーブルなどの家具や、その上に置かれる小物類、また植栽などの外部環境を整えていくのもこの段階です。

小物の置き方ひとつで雰囲気がガラッと変わるので、腕の見せどころです。

小物類を置くことで生活感などの空間がもつ雰囲気を生み出していきます



6. レンダリング

小道具まで並べ追えたら、あとはレンダリングを開始して画像として書き出していきます。

レンダリング設定はシーンによって細かく調整しながら設定を行います。

レンダリング開始のコマンドを押せばレンダリングは開始されてあとはパソコンに頑張ってもらう…

というのが理想ですが、なかなかそうもいきません。笑

いざレンダリングを開始してみると気づくことがたくさんあるので、私の場合は最初は低めの解像度に設定して何度も何度もレンダリングをかけながら、最終形を確認しています

最終形を確認しながら、場合によっては光の入り方を調整したり、小道具の位置や数を調整したりしています。

レンダリングを開始してから終わるまでの時間は解像度やシーン内のポリゴンの量によって変わります。

納品用の場合はリッチな設定にするので、短くても1枚30分程度、長いと8時間くらい回しています。
(メインPCのGPUはRTX3090です)

レンダリングは時間がかかるので、この段階で発注者から大きな修正が入ると納期に間に合わない可能性が出てきます

ですので、最終レンダリングをかける前には発注者に確認をするようにしています。

もし最終確認後に発注者都合で3Dモデルを調整する必要があるような大きな変更があった場合には納期の再調整と追加料金が生じる場合があるので、発注される方は十分にお気をつけ下さい。


7. コンポジット

画像をレンダリングしたら、最後に色味調整を行います。

静止画であれば私はPhotoshopを使って調整しています。

私はパーツ別の細かいレタッチはあまりやらないようにしています。

グローバルイルミネーションなど反射光の影響が認識していない場所にもかかっている可能性があるので、Photoshop上で細々と調整しすぎると不自然に見えてしまうからです。

ですので、パーツ別の調整はレンダリング前に一通り済ませておきます。

この段階では全体の明るさや彩度、コントラストなどを調整して、画像がキリッとするように調整するくらいに留めています。

ここまできてようやく完成です。


おわりに

いかがでしたでしょうか?

私のワークフローとしては前述の通りとなります。

これから建築ビジュアライゼーションに挑戦する人や、CGを発注する方の参考になれば幸いです。

CG制作のワークフローはやる人によっても変わりますし、制作条件によっても若干変わってくると思います。

これからCGに挑戦される方は、ベースとなるワークフローを押さえつつ、状況に応じて臨機応変に対応しながら自分なりのワークフローを確立していけると良いと思います。

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堀江優太|Yuta Horie
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