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AIは建築CGの仕事を奪うのか?

MidjourneyやStable Diffusion、Chat GPTやLuma AIなど、2022年ごろから急激にAIが身近なものになりました。

このnoteにもベータ版ですがAI補助が搭載されているくらい、誰でも手軽に扱えるようになっています。

生成AIがあまりにも優秀なために

AIはクリエイターの職を奪う

なんて言葉が毎日のように囁かれています。

本当にそうなのでしょうか?


建築CGの仕事はAIに取って代わられるか?

3DCGをやっている立場からすると画像生成AIは画像をつくるという目的が一緒なので、競合となりうる関係です。

特に建築CGは所謂「建築パース」と呼ばれる静止画で提出する機会が圧倒的に多いので、AIの参入障壁がとても低い領域です。

では建築CGの仕事はAIによって無くなるのか?

私の予測では建築CGの仕事は
短期的には無くならない。ただしプロの出番は減る。
だと思っています。

それはなぜか、紐解いてみます。

現在、建築CGは大きく分けて以下の3種類があります。

 ①検討のために制作するもの
 ②施主の承認を得るためのもの 
 ③施主以外が見るためのもの

もう少し詳しく説明します。


①検討のために制作するもの

これは設計事務所内で検討する際に作成するものです。

形の良し悪しだけでなく窓の位置や素材の組み合わせを確認するために作成します。

この段階のCGは専門家内でイメージを共有するものなので、フォトリアルなレンダリングまでは不要です。

特に近年では、設計者はCADだけでなくBIMと呼ばれる統合型の設計ソフトによって、図面を書く副産物として3Dモデルができているる状態になってきています。

そのため、最近では設計事務所内で作成する場合が一般的だと思います。

BIMを使用した検討画面の例
引用元:CGWORLD



②施主の承認を得るためのもの

こちらは設計事務所が検討した内容を施主にプレゼンテーションして承認を得るために作成するものです。

建築に関わる仕事をしていない人にとって、建築の図面は読み解くのが非常に困難です。

そのため、フォトリアルなCGは設計内容を理解してもらうために大変重宝します。

こちらは設計事務所内で作成することも増えてきましたが、CGの専門家に依頼して作成してもらうこともまだまだ多いです。


③施主以外が見るためのもの

こちらは広告などに使用されるものです。

分譲マンションのチラシに載っている完成予想図や、最近だとNOT A HOTELが出している本物と間違えるくらい精巧なCGがこれに該当します。

NOT A HOTEL の精巧なイメージCG
引用元:NOT A HOTEL

この領域になると、高いクオリティが求められるので設計事務所内で内製できるものではなくなります

必然的にCG制作のプロが作成するものになります。

また、これらは広告用につくられる精巧なイメージなので対象の建築物が個人住宅の場合には作成しません。


AIが仕事を奪う領域

AIが普及する前でも①はもとより②の施主の承認を得るためのものは設計事務所内で作成することが増えてきていました。

おまけに最近の生成AIは簡易な絵をベースにフォトリアルにブラッシュアップしてくれる機能があります。

設計時につくる3DモデルをAIに流してリアルなイメージに書き出すことが可能なので、AIが普及すれば設計者が設計の延長線でできてしまいます。

おそらくこの施主の承認を得るためのものは3DCGの専門家の出番は激減するでしょう。


AIが代われないもの

ですが③の施主以外が見る広告のためのものはまだしばらくは需要があると見ています。

なぜなら、広告に求められるような人の行動を刺激する魅力的な雰囲気と建築物の精度を両立させる必要があるからです。

①や②は説明のための図版であれば良いですが、広告に求められるものは人の行動を誘発するような魅力があることです。

このようなイメージを作り出すには、技術者的な能力ではなく、アーティスト的な能力が必要になります。

AIでも素敵なイメージは作り出せますが、それを指示することができなければ魅力的な絵は生まれません。


AI時代に建築CG屋は何をすべきか

じゃあ建築CGを専門とする人はどうすべきか、ということに行き着きます。

私の中の結論としては、

アーティストとしての能力を磨き、AIと協力してその能力を強化すること

だと思っています。

今のところ、3DCGの得意な場所、AIの得意な場所はそれぞれ異なっているので、どちらも学び取り入れていくのが重要だと思います。

下記はそれぞれの得意な場所をかけ合わせた例です。

3DCGの高精細なレンダリングに生成AIをかけ合わせた作例

まだ研究中ですが、CGでもAIでもない、もう一歩先に進めるような気がしています。


さいごに

記事の最初に、建築CGの仕事は
短期的には無くならない。ただしプロの出番は減る。
と記載しました。

"短期的に"は仕事はなくならないと思いますが、"長期的に"は建築CGの仕事はどうなるかまったくわかりません。

AIの進化の速度は指数関数的に上がっているので、5年後の状態ですら今の私たちの想像を絶することになっているかもしれません。

AIは確実に私たちの生活を変えるツールだと思うので、現代に生きる私たちは職業によらず動向を追っていくべき対象だと思います。

今後どんな世界が待っているのか、今からとても楽しみです。

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堀江優太|Yuta Horie
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