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みんなやってる◯◯をやめたら建築CGのレベルが上がった話

私は建築意匠設計者であると同時に建築ビジュアライゼーションも仕事にしています。

そんな私ですが、仕事の中で頻出するけど意識して言わないようにしている言葉があります。

それはなんだと思いますか?








答えは「パース」です。




パースとは平たく言えば手描きやCGをつかって描く建物の完成予想図のことです。

建築ビジュアライゼーションをやっている時点で、少なからずパースをつくっていることになります。

しかし、私はあえてこの「パース」という単語を封印しています。

これは私なりのこだわりに過ぎないのですが、何かのプロフェッショナルな仕事に共通している考え方かもしれないと思いました。

ですので、思い切って記事にしてみようと思います。


そもそもパースとは

パース(Perspective Drawing)とは日本語では「透視図」という意味です。

これは図法の一種で、任意の視点を設定し、これを起点として立体を仮想の画面上に投影したもののことを指します。

ル・コルビュジエによるサヴォア邸の2点透視図 引用元:DOK

設計図面では表現できない立体感、空間の奥行感を平面に表現できるため、建物の完成予想図の表現として用いられます。

かつては上記の例のように手描きの作図によって描かれるものでしたが、コンピューターグラフィックスの進歩により、3DCGを用いたフォトリアルなものが一般的になってきました。

これらを建築業界の中では

 建築パース
 パース図
 CGパース

など、色んな呼び方をされていますが、共通して「パース」という単語が入っています。

また、パースをつくる人たちのことは

パース屋さん
パーサー

などと呼ばれています。


なぜパースと呼ばないか

かくいう私も昔はパースという言葉を使用していました。

しかし、建築のCGをつくる仕事をするようになった頃から使わなくなっていったと思います。

私がつくるCGによるイメージは図として描くのがゴールではなく、そこから見える目で没入できる空間を描いていると思うようになったからです。

私がやっていることを言葉にすると「環境構築」「シーンビルド」の方が意味が近いと思います。

良い空間をつくっていった上で、その一部を切り出したものが透視図というかたちに集約されることはありますが、私がやっていることはあくまで臨場感のある空間をつくっていることに尽きます。

ファンズワース邸のCGによる模写

私が描くCGは、常にその場所で起こっていることが感じられるものになることを意識しています。


言わないからこそ見えるもの

経験談になってしまいますが、パースという言葉を使わなくなってからは、絵の質が変わってきたように感じています。

パースと呼んでいたころは説明的な図の範疇を出ず、どこか凡庸な画面になってしまっていたと思います。

パースという言葉は本来「立体を平面に投影した図」なので、パースをつくっていた頃はその域を出ていなかったと思います。

ここから言えることは、その言葉のもつ意味以上のものは生まれないということです。

パースという言葉を自分の中で封印してからは、その場のもつ雰囲気まで描くように意識が向くようになったと思います。

受け取る側にとっては至極どうでもよい話ですが、こういった心構えが作品に与える影響は決して小さくないと感じています。

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堀江優太|Yuta Horie
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