Unreal Engineはコレがすごい! 建築ビジュアライゼーションにUEが最適な理由
あなたはUnreal Engine(UE)という名を聞いたことがあるでしょうか?
私の記事を読んでいる方は建築系の人かBlenderなどの3DCG関係の人が大半だと思いますが、特に建築系の人には聞き慣れない名前だと思います。
Unreal EngineはEpic Gamesが開発しているゲームエンジンと呼ばれるゲームをつくるためのソフトウェアです。
最近だとFinal Fantasy VII RebirthがUE4で、鉄拳8がUE5で開発されています。
ゲームが作れるということは、映画やテレビの制作、建築ビジュアライゼーション、自動車のコンフィギュレーター、プロジェクションマッピング、各種シミュレーションなど、デジタルメディアの様々な用途で使用されます。
私自身も、建築ビジュアライゼーションの特に動画を制作する際にUnreal Engine 5.0以降のバージョンを使用しています。
ちなみに建築系の人が使うTwinmotionはこのUnreal Engineをベースに建築ビジュアライゼーションに特化したソフトウェアです。
この記事では、そんなUnreal Engineの魅力について語ってみようと思います。
Unreal Engine 5が建築ビジュアライゼーションに最適な理由
Unreal Engineが建築ビジュアライゼーションの特に動画で最適な理由はいくつもあります。
例えば…
リアルタイムレンダリングでも高精細なフォトリアル表現ができる
森や都市など、ポリゴン数の多い大規模なシーンを構築することができる
天候などの環境が少ないステップで作成できる
制作物の自由度が高い
などが挙げられます。
本当はもっとありますが、すごい細かい話しになってしまうので、一旦ここまでにしておきます。
下記の2つの動画は私がUE5で作成した建築ビジュアライゼーション作品で、どちらもリアルタイムレンダリングで書き出しを行っています。
光や影の動き、素材の表情、天候やその場の空気感などが、とてもリアルに表現されていると思います。
ちなみにリアルタイムレンダリングってなに?という方のために補足しておくと、3Dモデル上の光の影響などを超高速に計算し、即時に描画する方法のことです。
詳しく知りたい方は過去の記事でもまとめているので、こちらも見てみてください。
UEが最高のソフトウェアなのは間違い無いのですが、もちろんデメリットが無いわけではありません。
習得までの難易度が高い
それなりのスペックのパソコンが必要
静止画だけをつくる場合は制作コストが高い
特に何でもできる分、学習コストが高いのは難点です。
かくいう私も完全に使いこなせているわけではありません。
UEを使うたびに公式のチュートリアルやコミュニティの掲示板などを穴が空くほど見ながら制作しています。
ただし、それを補って余りあるほどの魅力が詰まっているのも紛うことなき事実です。
そもそもUnreal Engineって何がすごいの?
このUnreal Engineの何がすごいかって、その圧倒的なグラフィックです。
もっというとリアルタイムレンダリングの能力が他の追随を許さないほどにずば抜けています。
文字で見るより画像や映像で見た方が早いですね。
こちらは2020年5月にUnreal Engine 5.0がリリース直後に出されたデモマップ『古代の谷』のシーンです。
ぜひ下記のYoutubeで映像を見てみてください。
上の画像のような映画のクオリティでゲームがプレイできるというのがわかると思います。
他にもマトリックスのデモもあります。
もしかしたら、こちらの方がご存知の方が多いかもしれませんね。
こちらの動画はUnreal Engine公式の動画ですが、MATRIX AWAKENSを題材としたデモゲームです。
04:30あたりを見ると映画クオリティの映像のままゲームが始まりますが、映像からゲームへの以降があまりにもスムーズで度肝を抜かれると思います。
もちろん、このクオリティでプレイするにはPlay Station 5やゲーミングPCのような高スペックのハードウェアが必要になるのですが、それでも映画と同等のグラフィックでゲームができるというのは非常に魅力的です。
これらのデモはグラフィックがすごいのは当然なのですが、本当にすごいのはUnreal Engine 5の革新的な技術進化によって、従来よりも非常に少ない工数で、かつ膨大な量のデータを使用することができるようになった点にあります。
Unreal Engineのバージョンが4から5になって、新機能がたくさん追加されました。
しかし、その中でもLumenとNaniteは特に革新的な技術だと断言します。
Lumenとは
Lumenとは公式資料によると動的なグローバルイルミネーションと反射のことです。
グローバルイルミネーション(GI)とは光が物体にどのように反射や屈折、拡散するかをシミュレートするライティング手法のことです。
下の画像はGIの有り無しを示した画像です。
このように光源からの光が何度も反射されて、うっすらと受光面に周辺環境の影響が出ることをグローバルイルミネーションと言います。
Lumenでは、シーン全体のライティングを動的に計算する仕組みが採用されているので、光源や光の遮蔽物を動かしたとしてもリアルタイムにグローバルイルミネーションや反射を反映してくれるという画期的な仕組みになっています。
こちらのYoutubeではUnreal EngineのLumen機能をわかりやすく解説してただいています。
この技術により、従来ではライトマップUVという物質の質感を表すマテリアルの他に、光用の展開図を用意し間接光の陰影を焼き付けなければならなかったのが不要になりました。
これは作業工程が1つ減るという驚異的な内容です。
Naniteとは
Naniteとは公式資料によると仮想化マイクロポリゴン ジオメトリ システムのことを指します。
言葉だとよくわかりませんが、シンプルに言うと超ハイポリゴンのモデルを描画距離に合わせて自動的にポリゴン数を減らして最適な状態で描画してくれる機能のことです。
3Dモデルは三角形のポリゴンから成っており、ゲームではポリゴン数が多ければ多いほど描画するのに負荷がかかります。
通常描画負荷を軽減するために、カメラからの距離によってポリゴン数を減らしたモデルを用意します。(LOD : Level Of Detail と言います)
Naniteを適用するとカメラから離れるにつれてポリゴン数を自動で減らした状態で描画してきます。
逆にカメラが近づくにつれて三角形のポリゴンが増えていくので、モデルのディテールが見えるようになります。
従来のゲームではこの距離に応じた3Dモデルを用意しなければならなかったところ、このNaniteにより、ハイポリのモデルだけ用意すれば自動で調整してくれるようになりました。
これにより、LOD用のモデルを複数用意することも無くなり、さらに下手すればデータ容量まで下げてしまうという革命的なシステムです。
大げさに言うと、ゲーム内に3Dモデルを無限に置いても、画面に映る分しか描画しないので、負荷が増えないということです。
おわりに
UE5には他にも素晴らしい機能がもりだくさんですが、このLumenとNaniteは文字通りゲームチェンジャーです。
想像に難くないとおもいますが、ライトマップの作成もLOD用のモデル作成も、かなり難しい技術でした。
ですが、これらが不要になったということは、それだけ使いやすくなったということです。
そもそもCGど素人だった私が短い期間でUEを使った作品を作れるようになっているということは、それだけ使いやすくなっていることの証明になるのではないでしょうか。
Unreal Engineはまだまだ学習コストは高いとはいえ、使えるようになると世界がかなり広がる素晴らしいソフトウェアです。
この機会に挑戦してみてはいかがでしょうか?