ビル・ベイリーよ、家に帰っておくれ
家に帰ってきました。どうも僕です。
邦訳の妙と申しますか、ある他言語を日本語に訳した際に、図らずも原語とは異なるニュアンスを含んでしまうケースがあります。
素晴らしい翻訳により魅力がより強まるケースもありますが、残念ながらそうでもないこともありまして、ひとつに、たとえばジャズ・スタンダードの"You'd Be So Nice To Come Home To"に対して大橋巨泉氏がつけた邦題『帰ってくれたら嬉しいわ』のような、誤訳であるケースがあります。
※実際は「あなたが待つ家に帰れたらなあ」という意味
一方で、訳としてまちがってはいないものの、日本語の取り方によって真逆の意味になってしまう例もあり、その顕著なものが、今日突然ふと思い出した、表題の『ビル・ベイリーよ、家に帰っておくれ』です。
賢明な読者の皆様におかれましてはお察しの通り、このビル・ベイリー氏、「帰れ帰れ、もういい加減帰っておくれよ」…と、いくら言っても帰らない意固地な男…ではございません。
こういう時にはきちんと原題にあたるのが大事です。調べてみると、
Bill Bailey, Won't You Please Come Home
ということでございまして、正しくニュアンスを伝えるならば、きちんと"Come"の部分を強調して、
『ビル・ベイリーよ、家に帰って「来て」おくれ』
とするのが適切なわけであります。
つまり表題の訳は、いわば間違ってはいないが不適切、ということです。あれ、最近どこかで聞いた表現のような。
トップ画像のカーネルサンダースも、カーネルは名前ではなくて「大佐」という意味で、しかも従軍中に大佐だったわけでもなく、「ケンタッキー州の名誉称号」として与えられたものである…とか、カーネルパニックは「ケンタッキーおじさん大混乱」という意味ではない、とか、そういうわけであります。多分。
ちなみにケンタッキー州でカーネルの称号をもらった、いわゆるカーネルおじさんには日本人もいます。これ豆知識。
つまり僕がいいたいのは、原語にあたるのも素敵ですよ、ということです。
邦訳もいいのですが、とくに文学や詩、歌などは、音韻の美しさを感じ取ったり、その意味の真に迫るためには原語に触れてみるのが大事。
というわけで、聞いてみましょうビル・ベイリー。
エラ・フィッツジェラルドのバージョンでどうぞ。
https://youtu.be/OthWvIBBDhg
歌詞はWikipediaに。
というわけでまた次回。