見出し画像

クリプトラクトBGM傑作集

 領主だった皆々様いかがお過ごしでしょうか。
 各々の新たな道を進んでいる事かと思いますが、偶には過去を懐かしんでみるのもまた人生かと思います。

 幻獣契約クリプトラクト。ファンタジー作品として世間ではマイナーも良いところ、しかも今は例の件でメメントモリは知られていても同時に名前を出されたクリプトラクトは知らない、或いは話題に触れられすらしないという有り様。

 しかしクリプトラクトの数ある長所の中で明確に凄まじい点が一点あります。
 なんと、収録曲がやや被っているもののサウンドトラックが7枚も販売され、合計300曲ものゲームBGMがあるのです。
 これ程オリジナル曲を用意したゲームとなるとわたしはちょっと思いつきません。作曲者や編曲者、演奏者の方々の苦労は凄まじい物かと察するに余りあります。

 そんなクリプトラクトでわたしが今も特に愛でている曲を紹介します。
 便宜上紹介するにあたりランキング制にしていますが、恐らく視聴者ごとに愛した曲や思い出の曲がある筈なのであくまでわたし個人の好みであるというのを前置きさせていただいたところで、ランキング紹介に移ります。

20位 知の湖から来た魔人

 強敵の襲来を感じさせる、他の曲でも聴かないくらい激しく強く叩かれ存在感を主張するドラムの音が印象的。バイオリンの力強い演奏も中期後期のクリプトラクトのBGMでは見掛けないタイプでありそれらが合わさって非常に完成度が高い曲に仕上がっている。
 全体的に高めな音質とアップテンポ気味な曲調が気分を上向けにさせてくれるクリプトラクトの初期に近いBGMでありながら屈指の戦闘曲。
 全300曲に及ぶBGMで推しが絡んでいない物の中で思い出補正が無いにも関わらずわたしは20位に残り続けた名曲。

19位 迅雷を絡繰る虎妖姫

 シャンマオを意識させる曲調。
 バイオリンの弦が鳴らす暫く鳴り止まぬ高音は管楽器の高音とはまた違う感情を生み、シャンマオの途切れぬ2000年の怒りを音にして具現した物である。
 ゲーム中でも当時はシャンマオの全体攻撃の被弾を許せば即座に全滅してしまうため、カウントダウンが進む度に近付く「可視化した死」を嫌でも感じる激戦を繰り広げた記憶は今も懐かしい。
 因みに絡繰るとは物や人を動かすという意味であり、迅雷とはレイシェンなのでそれを絡繰るという事はシャンマオはレイシェンの指示役である。


18位 英雄の詩と暁の平原

 夜明けを意味する暁を曲名に冠したこのBGMは暗い闇に光が差す、夜から朝へ移り変わる瞬間を感じさせる明るい曲調。
 荘厳でありながら勇猛さを感じ、同時に英雄の詩シリーズラストを飾る寂しさをも曲調の一部の静寂が表していて、静と動という相反する要素を一つにした名曲。
 暁とはこれから登る陽のテフレア、その陰となったローランの関係も表しているのかもしれない。夜が明けると太陽は登り夜闇は何処かへ消え去りゆく。

17位 光芒の塔羽撃く絶祈の翼


 羽撃くとは『はばたく』と読む。鳥が空に飛び立つ意味を指す。鳥とはシェロギエイラでありフアナである。
 しかしフアナが望んだのは軛から逃れる翼ではなく祈る為の手であり、シェロギエイラとなった事で手が翼となり祈りが絶えた―――つまり絶祈とは祈りを絶やした異形と化したフアナの二つ名とも呼べる。
 曲調はほぼピアノのみが演奏する物でありながらフアナに降り掛かった悲劇を感じさせる物悲しくも心打たれる高貴さも秘めた名曲。

16位 翼を率いる王竜


 五帝ドラグゼロスが空を駆ける疾走感を感じさせるBGM。管楽器と背景で鳴るシンバルとドラムの三重奏がドラグゼロスの勇壮さと気高さをよく表現している。
 「外敵は排除するだけだ!」、「この世界に力を示す!」という強い意思が込められた声は今も耳に焼き付いて離れない。
 キャラと曲が完全に一体化したBGMナンバー100までの中で屈指の名曲で決してドラグゼロスから切り離せず、他でこれをかけても何故か違和感があるという完全固有BGMと化している。

15位 大灯台


 光芒の塔と同じピアノ演奏オンリー曲でありながらこちらは儚さと切なさを訴えかける曲調。
 ベルモントとフアナの悲恋を感じさせる物悲しさとキャスティリアで垣間見た戦乱の時代に生きた「騎士」と「姫」という王道をもよく表している気がする。
 騎士物語とは大体が非業の死や無念に終わる物が多く、ベルモントもそれから逃れられなかったという事だろう。
 列伝と神話込みで思い出補正がかかる名曲。

14位 蒼檄の剣示すは一の騎士


 前座のゴルロゥ大瀑布も名曲だが、このBGMは第一形態たる卵を破壊するといきなりそれまでの緩慢な攻めから波濤の様な猛攻に変わる当に激流の様な勢いを感じさせる曲調。
 バイオリンが鳴らす音の凄絶さがローランの剣技の冴えを表しているようであり、これから始まる新しいシリーズの英雄神話が更なる激戦である事を領主達に否応なく叩き込んだ名曲。

13位 天涯に捧ぐ祈り


 グラージャで繰り広げられた別れと痛みを表した曲。
 天涯とは空の果てを意味し、それに祈りを捧げるというのはつまり、ティアナ達が空に還ったエレオノーラへ捧げる安息を願う祈りを意味している。
 曲調は物悲しくもそれでも前を向く双子の意志を後半の上向く音でよく表現している名曲。

12位 鳴轟の草原起つ群狼の長


 ゼウェルズールのBGM。英雄神話の中では最弱と名高く、むしろ前座のエメロードの方が厄介だったとすら言える。
 しかしBGM自体は英雄ガーラーンの狩りが今正に行われる様なアップテンポな曲調が聴きやすく耳に馴染みやすい。
 前半のメインを務める笛の音が牧歌的でありながら後半はドラムや太鼓などの打楽器が中心となり狩りの激しさとそれが終わる静寂の流れを曲全体で表しているような気がする名曲。

11位 満ち足る飾り


 「飾り」とは虚飾と名乗っていたヴァネイトを指しており外面を飾るだけで中身が虚ろだった者が満ちる、つまりサロメから解放されて自由になったヴァネイトの心の動きを表しているのがこのBGM。
 過去に囚われた者が未来を向く人間讃歌がクリプトラクトの真骨頂であり、作中で成長を遂げたヴァネイトに相応しい昇華の中でも屈指の名曲。
 踊り子のヴァネイトに曲全体が放つ独特なリズムが重なり、彼女が踊っているような姿を幻視させる。

10位 大地割る獣の王


 数あるクリプトラクトのBGMでも力強さという題材をこれ以上無い程に表現した名曲。
 五帝全体がこれをテーマBGMにしているのでこの曲自体が「五帝が持つ圧倒的な存在感」を放つように意識して仕上げられており、グラハ=ザールの獣王たる威圧感を感じさせる曲。
 余談だが、グラハという言葉は掴む、捕らえるという意味があるらしく獣王たる巨軀の彼が名乗るのに相応しい名前と言える。

9位 昇華の扉


 死の先にある昇華の扉を抜ける資格をある者が見る夕暮れに浮かぶ無数の扉という非現実的な光景を前にした心情を表した名曲。
 クリプトラクトの世界において生きる事は死を隣人にする事であり、日常が闘争である。
 昇華の扉はそんな世界で脅威に抗う事を止めない者達の前に現れる鏡であり、目を背けていた過去の苦痛や戒めと向き合い自分を見つめ直し先に進むきっかけを与える「昇華」の為の世界なのかもしれない。

8位 竜王、再臨


 黄昏の城で羽ばたく竜王アポカリプスの王威を感じさせる名曲。
 そこにあった穏やかな日常が突如崩壊する象徴。各地を飛び回り領主の領地を冒頭で襲った、幻獣が「天災」たる所以をこれ以上ない程に雄弁に語りながらもブレイクやシェオールの脅威に抗う、生きる為に戦うという生存競争の激しさも感じさせる嵐の様なBGM。
 始まりと終わりを象徴する存在であるアポカリプスに相応しいテンションが上がる曲調に仕上がっている。

7位 薄明擁する聖女


 薄明とは薄暗い早朝のほの暗い深夜に差し始める淡い日差しであり、つまり夜明け前の光である。
 それはナディアが傍観者から当事者に変わった瞬間を指し、薄明を擁する―――つまり空を覆う暗雲を払う光となる決意のBGM。
 最終盤の契約の履行でもこのBGMが流れており、そこで領主が出会った主要人物が総出演していることから「闇の中にある光」を謳う曲なのは疑う余地もない名曲中の名曲。

6位 終焉を与えし幻獣の王


 はじめてクリプトラクトに4wという裏ステージの概念を持ち込んだ幻獣王プロビデンスのBGM。
 アークの別側面たるプロビデンスが持つ「人間という種の排除」を明確に行う幻獣王としてこれ以上無い程に明確な「どちらかが滅びるまで戦う」という人間対幻獣の構図をよく表した威圧的な曲調になっている。
 当時、プロビデンスの猛攻の中これがかかっていた環境で長考しながらプロビデンスの攻勢を数十分耐えるというトラウマ度MAXレベルのクリプトラクト戦闘BGM。
 他にも混沌の王などトラウマレベルの戦闘を繰り広げてきた敵は数いれど環境の変化や当時基準で攻撃に移る余裕が中々無い「神話」という難易度を表現しきるなど、あらゆる意味でプロビデンスが齎した影響は絶大である。

5位 貪婪たるヘクセンハウス


 貪婪(どんらん)とは一言で言えば貪り食うという事であり、お菓子の家というデザインでありながら捕食者として描かれたヘクセンハウスのファンシーな曲の裏にある物々しい曲調がその気質を表現している。
 この童話神話レベルになるともはや敵が必殺コンボを仕掛けてくるのは日常茶飯事であり、こちらはそれを受け切るか流して短期決戦にする「どちらが先に相手を食らうか」という貪り食う関係にあった。
 が、神話自体に抜け道が多くBGMがこれまでの神話にないメルヘンチックさと棘々しさが同居した事で最期付近の神話でありながら非常に評価が高い敵でもありその裏で流れるこの曲は領主の気分を高揚させた名曲。

4位 決意の鎖と大罪の出獄


 過去の人間であるハウラとヴォイドが現世で生きる中で人の変遷、かつていた人が残した物を感じ取り1000年という悠久の時の経過の果てにハウラが望んでいた「人が脅威に抗う時代」の到来を肌で感じる、希望を謳う名曲。
 光ハウラという時代のうねりをも新たに生んだキャラが実装された一つの大きなターニングポイントがこの曲でもある。
ハウラが持つ強大な力が如実に現れた曲調である。
 余談だが領主一行が暫しの間、闇サシャと光ハウラというドリームタッグが史実で行われた敵にとって絶望しかない布陣で旅をしていたことに多くの領主が当時同情した。

3位 邂逅、氷点下の暴帝


 ヴァーレンハイトのBGM。
 わたしは恐らくクリプトラクト神話史上最高傑作の曲だと思っていて、氷を砕いて現れたヴァーレンハイトがヴァルファーゲンという国全体を吹雪に見舞っていた圧倒的な幻獣というそれまでの幻獣とは一線を画し、正にプロビデンスとは別の幻獣の帝王という驚異を放っていた。
 透き透るBGMに蒼の風景のベルゼの気配を感じながら、倒さなければいけない強敵というストーリーでも後々まで領主が時折想起した難敵でもあり曲とヴァーレンハイト、双方が神話と化していた。

2位 赤き壁の追憶Ⅲ


 「共に往くぞ、ギルヴェルト。ついてこれるか、ローラン。」と完全に吹っ切れたハウザーが呼び掛けると共に鳴り響くこのBGMはハウザーの終点にして頂点でもあり求めていた物に手が届いた悲願の瞬間を表している。
 追憶1〜3や篝火シリーズなど、多くの列伝やストーリーを経て此処に至ったハウザーの心情を慮るとその心情は察するに余りあり、名曲の中の名曲という括りすら超える。
 個人的な心情や加点を加えなければわたしは間違いなくこれを一位にしていた程のクリプトラクト史上最高クラスの名曲。

1位 双翼のレスレクティオ


 わたしの中でクリプトラクト史上最高かつ最優秀BGM。
 列伝タイトルとBGMの同名を両方冠し、更にそれが2周年記念列伝であり、アザトース(???)を除くと列伝ネタバレを防ぐ為に唯一声優表記にまで拘り(???)があったティアナという固有演出や列伝専用キャラのシンシャ版進化前火ティアナまで出るという他に無い圧倒的な待遇を受けながら、ティアナや契約2シンシャ、イーリスという当時基準で圧倒的なパワーを有するユニットが実装されることで「それまで敵側に力で押されていたのを此方も純粋な力で抗える様になった」瞬間の到来であり、列伝でもストーリーで長く関わらせたティアナの煩悩とシンシャの苦悩を解き放った、正に双子に翼が生えた瞬間でもある。
 売り上げ的にもこの頃がクリプトラクトの絶頂期であり、後にこの曲のアレンジ版をCDのウリにして出している事から運営のあらゆる後押しを受けていたとも言える。
 曲調自体は正に希望そのものをイメージしてあり、長い暗闇や夜、静けさをイメージした天涯に捧げる祈りとは表裏一体の構成になっていてそれが明けた日の出の様な曲である。

 いかがでしたでしょうか。ご納得いただけるかいただけないかさておき、今に繋がる過去もまた自分。
 この記事が領主だったという記憶に再び触れ、名曲の数々に耳を傾ける機会やきっかけになることがあれば幸いです。
 それでは、また機会があればいずれ。

いいなと思ったら応援しよう!