握手以上に、君に近づきたい
■見知った天井と、見知らぬ温かさ
目が覚める。
いつも見ている天井。自分の部屋。
昨日までの暑さとは、うってかわって、少し寒い。窓を開けっぱなしにしたせいか、いつもよりずいぶん早い時間に起きてしまった。朝の冷たい空気は、気持ち良くもあるが、どこか心にぽっかりと空いてしまった穴の存在を教えてくれる。夢の中で、何かをし忘れてしまったような寂しさを感じさせる、そんな目覚めだ。
ふと横に目をやると、文庫とすだちが置いてある。
卒業式でもらった「企画文庫」と、企画生が持って来てくれた「すだち」。昨日「言葉の企画」が終わってしまったことを思い出す。
身体を起すと、覚えのない温かさを感じた。
身体はすっかり冷えてしまっているのに、どこかぽかぽかする。
子どものころ、母親に抱きしめられたような、懐かしいぬくもりを感じていた。そう考えていくと、そのぬくもりの正体に気づく。おそらく企画生だ。
■握手以上に、君に近づきたい
企画生は、たくさんの言葉を、僕にくれました。
言葉には、形がありません。
手紙にして、何度でも読めるように、僕にくれました。声にして、温かさを、僕にくれました。
言葉には、形はないけれど、僕の中に、たくさん残っている。
別れ際に、握手をしたり、ハグをしたりする感覚が分からなかった。パフォーマンスの一種だと思っていた。でも今ならわかるのです。
覚えていたいと思うのです。
忘れてしまうから。きっとずっと覚えていることなんてできないことを、分かっているから、その人の全部を覚えていたいと思うから。少しでも近くに感じていたいと思うから、握手をしたり、ハグをしたりするのです。
そんな簡単なことに気づかなかった僕は、後悔しているのです。全力であなたを忘れないと、伝えなかったことを。
「思っていることは真実だから、伝えなくていい」という握手の距離間から、もう一歩踏み込んで、思いを伝えていこう。そういう人に出会えたら、これからそうしようと思う。いや、そうしたい!
■すだちが残していったものは…
寝ながらすだちを齧ってみる。…めちゃすっぱい。完全に覚醒し、ベッドの上にいることをあきらめる。
そうだ、note書こう。
言葉の企画後は、いつもnoteを書いていた。いつものカフェに移動して、PCを開く。半年前とは変わらず、noteを書くのは、いつまでたっても慣れない。うんうん唸っているところに、コーヒーを口にする。ハッとする。いつもと違う。どこか後味に爽快感がある。
…すだちだ。
すだちの味が、まだ少し口の中に残っていることに気づく。どこか背中を押してくれるこの爽快感。思わず笑ってしまう。企画生は、次の日の朝食べることを、狙っていたのだろうか。
すだちの爽快感が消えないうちに、noteを書く。半年間の記録に、思いを馳せながら、僕はこれからもきっと、言葉を紡いでいく。
握手以上に、近づきたい人たち。
言葉の企画生。
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