ディスプレイ業界とは?
ディスプレイ=展示
私たちの生活に身近な存在のディスプレイ(=いわゆる展示)は、実は様々なところでその効力を発揮しています。
店舗の場所を示す看板・サイン・広告。
ショッピングモールやレストランの個性的な内装や装飾。
貴重な展示品を覆うクリアケースが並んだ博物館、美術館。
何かを象徴する屋外モニュメント。
ビジネスの環境を整えるオフィス空間。
休日を楽しくするテーマパークやイベント会場。
派手な演出で空間を盛り上げる展示会やエンタメライブ会場。
ディスプレイ業界の会社
それらすべての空間を媒体に、プランニングからデザイン、施工までを請け負うのがディスプレイ業界です。
もっとわかりやすく伝えるなら、人々を魅了する華やかな空間を作り上げる業界です。
そんなディスプレイ業界の空間は、一般的な建築物とは違って短期的なものがほとんどで、よって建物・空間を作り上げるための工事期間も建築現場が2年や3年かかるのに対して、2~3週間で改装をしたり、展示会に至っては1日や2日で現場を完成させます。
この業界の代表的な企業は「乃村工藝社」と「丹青社」です。この2社は総合ディスプレイ会社と呼ばれ、プランニング~営業~デザイン~施工までを一貫して請け負うことが出来ます。
もちろん乃村工藝社や丹青社が世の中的に売り上げも高く、上場しているため代表的な会社として取り上げられることが多いですが、スペースやラックランド、博展やトーガシといった施工会社もディスプレイ業界を代表する企業です。
それぞれの会社で得意とする空間は異なり、内装を得意とする会社、イベントや展示会を得意とする会社、それぞれ特徴があります。
ディスプレイ空間の種類
この業界では空間をだいたい大きく分けて3つ
「商業施設」・・・店舗の内装や大型商業施設、いわゆる内装工事にあたるもの
「イベント・展示会」・・・東京ビックサイトなどで開かれる展示会から企業の説明会、試験会場の設営など短期的な空間施工を指す
「文化施設」・・・博物館や美術館など貴重な展示品を扱う施設。自治体が絡んでいるものが多く、構想から含めると1年~2年かかるものをある。
上記に分かれます。「その他」として結婚式場やホテルなどの余暇施設、テーマパークやオフィス空間などをカテゴリ分けした、それぞれの会社が得意とする分布を私の主観で配置してみました。聞いたことのある会社がいる人もいるかもしれません。
あくまでも私から見た業界の分布図なので、所属する会社の人からしたら「違う」なんていう意見もあるかもしれません。ご容赦ください。
私がこれまで経験したのは「商業施設」と「イベント・展示会」あと「その他」カテゴリの結婚式場やホテル、オフィスなどの施工現場を経験しました。唯一「文化施設」だけは経験したことがなく、今思えば経験してみたかったと少し思います。
ディスプレイ現場の環境
それぞれの空間施工によって現場環境も工事期間も工事時間も異なるのがこの業界の特徴です。
例えばホテルの客室改装なんかは、チェックアウト~チェックインまでの時間でしか工事をすることが出来ません。ましてや大型のホテルとなると客室の数も何百もあるので工程をしっかり練って、決められた日数、決められた時間で現場業務を遂行する必要があります。最後の品質チェックにしても、毎回同じような部屋を見て回るのでどの部屋を見たのかわからなくなってしまうこともあります(笑)
また、私は経験したことありませんが、後輩が担当した空港のテナントの改装工事では、工事のために持ち込む道具一つ一つを管理したことがあるみたいです。噂ではビスやネジ1本ずつ管理していたとかも・・・。空港の施工現場では工具や材料のわずかな忘れ物でも、それがフライトに影響したら何億という損害が発生するため、たとえネジ1本でも神経を張り巡らせて管理しないといけないらしいです。大変ですよね・・・
いろんな現場があるので、それはまた別の機会に紹介したいと思います。
ディスプレイ業界とコロナ
2021年現在はコロナウイルスの影響によって、どの会社もコロナ前の経営状況とは言えません。展示会に至っては中止になっているところも多いため、イベント・展示会を生業としていた施工会社は大打撃を受けています。私の知っている会社では週休3日制を導入したり、役員の給料を下げたりと何とか経営を継続するので精一杯だという会社もあります。もちろん展示会の現場で働いていた音響や照明の会社、床のパンチカーペットを施工する職人さんは仕事が激減している状況です。
展示会が好き
私は展示会が好きです。
なにもないゼロの空間から、トラスやオクタノルムといったシステム部材を駆使して、全員が一つのブースを作り上げるという目標に向かって、ある時は夜中の24時から、ある時は24時間夜通しで一つの空間を作り上げ、会期が終了したら全員がまた一丸となって空間をぶち壊す。そして数時間であっという間に何もない空間に戻る。まさに”戦争”です。
もはや変態の域に達しているかもしれませんが、展示会場に響き渡る高所作業車の「ピーピー」という快音が心地よく聞こえるときもあります。
新人の時はめまぐるしく変わる工程についていけずあたふたしていた記憶があります。
でもその経験があったからこそ、内装の現場に入った時にスピード感と職人さんのフォローをそつなくこなせたんだと今では思います。
展示会の現場についても語りつくせないので、また別の機会で紹介することにします。
建設業とは違う
ディスプレイの現場は建築業とは違って現場が狭くて、工期が短いです。しかしそれなりの大きな会社になると安全管理もそれなりのしっかりとした業務を求められます。現場の規模の大小、受注金額の大小に限らず、作業をするという意味で常に職人さんは危険と隣り合わせの作業にあります。安全書類とはもし万が一に現場で事故が起きた時に、その原因と責任範疇を明確にするため、そして次に同じ事故を起こさないために必要な業務の一つです。
しかし、建築現場のように広い空間で整えられた環境での安全教育や、日々の書類管理業務というのがディスプレイ業界の施工現場ではどうしてもかなわない時もあります。屋外の現場であれば、職人さんが通勤してきた車の中で書類を書いてもらうなんてこともあります。時間の限られた現場では手書きの書類を十分にチェックする暇もありません。
ディスプレイ業界の市場規模
建築業界の市場規模はおよそ50兆円、今の日本の市場規模のトップにあります。それに比べてディスプレイ業界の市場規模はおよそ1.6兆円とニッチな業界ではありますが、人が生活して楽しさを求める上では、決してなくなることのない業界でもあります。時代ごとに求められるデザインの質は変化し、企業も試行錯誤して集客できる空間を追い求めます。オリンピック・パラリンピック、そして万博と、日本経済に影響する大きなイベントががあるたびにディスプレイ業界は密接にかかわってきました。今後も必要不可欠且つ、建築業と比べて少しだけおしゃれに見えるこの業界のことをもっと知ってもらいたい、そのために私は発信することを続けます。
短くまとめるつもりがつい長くなってしまいました。ここまで読んでいただきありがとうございます。次はもっと掘り下げて業界のことを紹介していきたいと思います。