第11回:たった一人を熱狂させる/パプリカ理論
こんにちは、株式会社TO YOUの岩下です。
第1回から第4回で「たった一人を熱狂させる」という弊社コンセプトと渋谷・神泉で営業しているセレクトショップR for Dにどう落とし込んでいったのか、という全体像をお話してきました。
第1回:たった一人を熱狂させる
第2回:たった一人を熱狂させる/R for Dの場合
第3回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(前編)
第4回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(後編)
第5回目では私の自己紹介もしましたので、第6回以降はもう少しディテールに注目してミクロに切り分けたテーマを取り扱っていきたいと思います。
テーマ設定は気まぐれです。
せっかくなので続けたいなと思っていますが、どこまで持つのか。
毎日1つ文章を書くことを続けるというのは結構大変なことなのだと毎日感じます。でもやっぱり反応をいただけると頑張れる気がするので、ぜひスキやフォローなどお願いします。
第11回のテーマは「パプリカ理論」です。
経営学を学んだ方はもう耳にタコができるほど聞いているであろう、ブルーオーシャン戦略や差別化戦略と似た話です。
ブルーオーシャン戦略というのは、ざくっとかいつまんで「血みどろの生存競争が繰り広げられている赤い海ではなくて、まだ誰もいない綺麗な青い海を探す方が良い」という非常に有名な経営戦略の理論です。
余談ですが、経営学と経済学は近いようでいて、正反対の発想を持っています。経済学が「市場を自由化して競争原理が働けば限界利益は0になる」と言えば、経営学は同じ理屈で「じゃあ競争原理が働かないようにして利益を得よう」と言い返すわけです。同じものの見方の違いです。私はどちらも好きです。
話をパプリカ理論に戻します。
私はブルーオーシャン戦略よりもパプリカ理論の話の方が聞きたくない?と思ってずっとパプリカ理論を主張しているのですが、まだあまり広まっていませんので布教を続けさせてください。
パプリカ理論はざくっとかいつまんで「緑ばかりのピーマンになるんじゃなくて、赤や黄色のパプリカになろう」という理論です。
コモディティ化したピーマン界の厳しい競争を避けて、パプリカ界で付加価値をつけて自分を売り出そうという考え方です。栄養価の高いお手頃野菜のクラスタから抜け出して、料理に彩りを加える貴重な存在に成上ろうという考え方です。
私だってピーマンは大好きです。玉ねぎやトマトと並んで、とりあえず家にあって邪魔になることはない優秀野菜ランキングのトップ3に入ってくる野菜です。
でも、新卒の就職活動をするかしないかという時期に(結果ほとんどしていない)、自分がピーマンサラリーマンになった時のことを想像すると、ピーマンサラリーマンとしておじいちゃんになるまで激しい競争をするなんて嫌だなぁと思ったものでした。
そんな時にスーパーの野菜売り場を歩いていると、パプリカという色鮮やかな野菜が目に入りました。そしてピーマンとの価格差に驚愕したのです。ピーマンが3つ、4つ入りの袋で120円くらいなのに、パプリカは1つで200円くらいで売られていました。
え、ピーマンじゃなくてパプリカになりたい。
え、どうやったらパプリカになれるかな。
そうやって考えられたのがパプリカ理論です。
おふざけはこのくらいにして真面目な話へと切り替えると、パプリカ理論の肝となる考え方、視点はたった1つです。
◼️競争レイヤーをメタ化する
これに尽きます。
◼️競争レイヤーをメタ化する
急に難しい雰囲気になりましたが、ピーマン界の激しい競争に巻き込まれると、山積みのピーマンの中でどのピーマンがいいかなと消費者に選ばれることになります。こちら艶があって形も綺麗、肉厚でお求めやすいお値段のピーマンオブピーマンですよと自分をアピールしなければ選んでもらえません(これが元の競争レイヤー)。
ある意味これは誰かが作ったルールや価値基準の中での競争であり、優劣が明確に決定されるという枠組みの中の話です。この競争レイヤーをメタ化するというのは、どのピーマンがいいピーマンかなと選ばれる前に、ピーマンとパプリカはどっちがいいかなと消費者に選んでもらうということです。
メタ化した競争レイヤーが「先に」来るということが非常に重要です。
競争レイヤーをメタ化した瞬間、世界は変わります。ピーマン内の競争は基本的に縦軸でランキング付けされる関係ですが、ピーマンとパプリカは横軸で比較される関係で、状況やニーズによって価値がいつでも逆転しうる、必ずしも優劣が明確ではない関係です。
お値段お手頃に栄養を摂取したければピーマンが勝ちますが、サラダボウルをカラフルにしたかったらパプリカが選ばれるということです。
少々違った視点の例をあげます。
中学生のころバスケットボールの試合で、私はそんなに体格がよくない(170cm, 55kgくらい)にも関わらずセンターをやっていたことがあります。ある時試合で私のマークする相手が明らかに20cm以上大きく20kg以上重そうな重量級の選手でした。
これだけ体格差があると、通常ゴール下の1対1では勝負になりません。私の負けです。
でも黙って負けるのは嫌だったので、考えました。
作戦は「ボールを触らせない」です。
身軽で動きが早いのはどうやら私のようだったので、ボールを触らせないしか勝ち目はないなと思ったのです。これが実は大成功しました。
最初に3回くらい連続でパスカットしたら、残りの時間はほぼパスが出されることさえなく、簡単に完封できたのです。
この時の経験を競争レイヤーをメタ化するという文脈で説明すると、元の競争レイヤーは「相手がボールを持ってからのゴール下での1対1」です。力関係は明白な関係です。私の負けです。
対して、私は競争レイヤーをメタ化して、「私の相手は目の前のでかい人ではなく、このでかい人にパスを出そうと周りから狙っている人だ」と考えたのです。ボールを持ったゴール下での1対1の勝負よりも、ボールを受けるまでの方が必ず先に来ます。いくら体格が良くても、ボールを触れない人にシュートをするチャンスはありません。
私は1対1で勝とうとせず、むしろ2対1、3対1で考えることで結果として相手を封じることができたのでした。
R for Dも実はパプリカ理論を意識してデザインされています。
R for Dは他のセレクトショップと売り方を争うのではなく、通常であればセレクトショップでは諸々の制約で置きにくい、置けないけれど素敵な洋服を提案するお店です。諸々の制約を克服するのためにビジネスモデルから設計されています。
売り方で勝負する競争レイヤーではなく、いい服いいブランドを見つけていかにデザイナーを巻き込めるか、お客さまに伝えるか、というメタ化された競争レイヤーで勝負しているのです。
以上がパプリカ理論です。いかがだったでしょうか。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
株式会社TO YOUでは、それぞれの「たった一人を熱狂させる」を実現したいビジネスパートナーを募集しています。
ファッション業界でも、そうでなくても、どちらでも大丈夫です。
私たちはより多くの人が熱狂を形にできる社会がいい社会であると考えています。
あなたの熱狂を私たちに教えてください。そして一緒に実行しましょう。
反対の場合もあるかもしれません。
ビジネスのバックグラウンドがあるあなたであれば、そこでどんな熱狂を起こせるのか、私たちにも一緒に考えさせてください。
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Twitter: @Iwashitayusuke
Mail: iwashita@deedfashion.com
第1回:たった一人を熱狂させる
第2回:たった一人を熱狂させる/R for Dの場合
第3回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(前編)
第4回:たった一人を熱狂させる/R for Dの仕組み(後編)
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