3年目を迎えたロシアによるウクライナ侵攻についてわれわれは何を考えるべきか
今日、2022年2月24日(木)にロシアがウクライナへの侵攻を開始してから3年が経ちました。
現在のウクライナをめぐる情勢は、米国のトランプ大統領がロシアのプーチン大統領との直接停戦に向けた交渉を進めようとし、ウクライナはもとより欧州のウクライナを支援する各国の反発を招く状態となっています。
ウクライナとロシアの戦いの長期化が支援を継続する意欲の低下をもたらすことが懸念されてきたものの、これまで米国はウクライナの最大の支援国であり、ロシアに対峙する姿勢は崩してきませんでした。
そのため、ウクライナを支持する各国の結束も維持されてきました。
何より、開戦の直後に岸田文雄首相が日本はウクライナを支援することを表明し、在任中は最後までウクライナへの支持の姿勢を替えなかったのも、第一に力による国際秩序の維持に反対するという原則に基づき、第二にロシアの侵攻が成功することが中国や北朝鮮の対外政策の転換や過激化へとつながることを防ぐ目的を持ち、そして第三に日本にとって唯一の同盟国である米国との連携を深めるという側面を持っていたためです。
しかし、大統領選挙期間中からロシアとの早期の停戦交渉の実施を主張してきたトランプ氏が大統領に再選されたことで、ウクライナや、ウクライナを積極的に支援してきた欧州連合(EU)をはじめとする各国を排除した形での協議の実施が現実のものとなりました。
これは、一面において多国間の協議を排し二国間の交渉を重視するトランプ大統領の政治的な方針が外交にも反映されたことを意味するとともに、他面では交渉を早期に集結させるためにはロシアへの徹底した抗戦を掲げるウクライナやロシアの勢力の拡張を懸念するEUなどの存在が、トランプ氏にとって妨げになっていることを推察させます。
こうした状況はロシアが自国の天然資源を取引の材料として対立する諸国を懐柔してその連携に綻びを生じさせる前に、ウクライナ問題における反ロシアの盟主であった米国の離脱により、包囲網そのものが危機に直面していることを意味します。
もとより、ウクライナに対するロシアの侵攻を終結させ、事態を収拾することは重要です。
ただ、現に侵攻され、交戦している当事者を関与させない形での停戦の合意が、最終的な和平に繋がるかは不明であるばかりでなく、支援を行っていた国に対する道徳的な責任を果たしていないという点で、米国の国際社会における信頼を毀損することになります。
それだけに、今後具体的な交渉が行われる段階を迎えるまでにどこまで米ロ間での協議ではなく、包括的な議論の枠組みを作り上げられるか、トランプ大統領の説得を含む関係各国の外交上の手腕が試されることになります。
<Executive Summary>
What Is the Important Effort to Realise More Inclusive Discussion of the Ukraine War? (Yusuke Suzumura)
The 24th February, 2025 is the 3rd Anniversary of the Russian Invasion to Ukraine. On this occasion, we examine the important viewpoint to understand the effort to realise more inclusive discussion among the countries concerned.