東京オリンピック後の検証が必要な「メダル獲得の最大化」政策

7月23日(金、祝)に開会式が行われた東京オリンピックでは、現在日本の選手が活躍し、昨日時点で合計13個のメダルを獲得しており、フィナンシャル・タイムズの予想では最終的な日本のメダル数は過去最多の56個になるとされてます[1]。

これまでもオリンピックでは開催都市が属する国の選手が多くのメダルを獲得する傾向にありますから、今回の日本の選手のメダルの獲得状況は、これまでの動向に照らしても不思議ではありません。

各選手がこれまでの練習の成果を発揮した結果がメダルの獲得であるとすれば、本欄が指摘する「競技の成功」の一端が達成されていると言えるでしょう[2]。

もとよりメダルの獲得は選手一人ひとりの努力の結果です。

その一方で、国家の政策としてオリンピックにおけるメダルの獲得を推進し、そのために体制の強化や選手の強化にかかる資金の集中的な投下などが行われていることも事実です。

2016年に当時の鈴木大地スポーツ庁長官が公表した「競技力強化のための今後の支援方針」の中では、2017-2018年度を「活躍基盤確立期」とし、「全競技パフォーマンスの最大化」の考えの下に国内競技連盟の強化活動を積極的に支援するとともに、2019-2020年度は「ラストスパート期」として「メダル獲得の最大化」の考えの下で支援を柔軟かつ大胆に重点化することが提唱されています[3]。

メダルの獲得数が各国・地域の人口に比例せず、各競技の人口、さらには競技に投じられる資金の多寡に左右されやすいことは、世界第2の人口を擁するインドがオリンピックで獲得するメダルの数を確認するだけでも明らかです。

従って、もし最終的に日本のメダル獲得数が過去最多を更新することになればスポーツ庁などが牽引した政策が目的を達成したことになります。

「スポーツは金銭の力に左右されず、努力によって等しく栄冠を手にする機会がある」という考えは崇高であり、理想的な姿でしょう。

しかし、現実の様子を確認し、採用された施策の適切さ、妥当さを検証することも重要です。

その意味で、大会終了後にわれわれが精査すべき対象は大会の運営のあり方だけに限らず、「メダル獲得の最大化」政策でもあるのです。

[1]日本のメダル最多56個も. 日本経済新聞, 2021年7月24日朝刊3面.
[2]鈴村裕輔, 「東京オリンピックの成功」を考える際に必要な「運営の成功」と「競技の成功」の観点. 2021年7月23日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/805efb29d8ae27a4d133f662609113ff?frame_id=435622 (2021年7月27日閲覧).
[3]競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン). スポーツ庁, 2016年10月3日, https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop07/list/detail/1377938.htm (2021年7月27日閲覧).

<Executive Summary>
The Japan Sports Agency's Maximising Strategy for the Generation of Medals Shall Be Examined after the Tokyo Olympics (Yusuke Suzumura)

The Japan Sports Agency advocates a strategy called "Maximising Strategy for the Generation of Medals" in 2016 focusing on the Tokyo Olympics. We have to examine the results of the strategy after the end of the Tokyo Olympics.

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