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大曽根商店街リノベーション大作戦。

私が名古屋に赴任して、応援したくなった商店街がある。
大曽根商店街。名古屋の皆さんには、あまり知られていない商店街。

大曽根商店街は、大曽根駅を出てすぐ西側にある。
三菱電機名古屋製作所の反対側に位置する。
商店街の入り口まで、県道216号を横断歩道で渡る必要があるが、地下鉄の出口からは直接行くことができる。

商店街には珍しく、アーケードがない。10年ほど前に行った土地区画整備事業に合わせてアーケードを取り払った。
土地区画整備事業が終わったのが、平成18年。
そのこともあって、商店街の通りは、幅が広く、綺麗で歩きやすい。道が蛇行していることや所々にある「オズの魔法使い」をモチーフとしたモニュメントが特徴的だ。

しかし、この大曽根商店街は空き店舗が目立つ。
商店街のすぐ近くにマンションが建っており、見上げればマンションの高層階が目に入る。
大曽根駅は、名古屋市内においても交通拠点の一つだ。JR中央本線・名鉄瀬戸線・地下鉄名城線が通っている。また、バンテリンドーム(元:ナゴヤドーム)も近くにある。
そんな駅の最寄りにある、大曽根商店街は賑やかではない。

私が関わるきっかけとなったのは、「ナゴヤ商店街オープン」という企画にボランティアとして応募したことがきっかけだ。
この企画のお題は、「大曽根商店街にある、3階建ての空き店舗のリノベーション案を作成し、その事業者を募集すること」。
建築士・大学生・料理研究家などの多種多様な10名のプロジェクトメンバーで半年間ほど試行錯誤。
事例研究のため静岡県焼津市へ視察に行った。仕事終わりから夜遅くまで議論した。
時にプロジェクトメンバー間で議論が白熱することもあった。お互いの思いが強かったためだ。
プロジェクトメンバーのほとんどは、当初、大曽根商店街に特段の思い入れはない。だが、このプロジェクトに参加する中で、大曽根商店街が好きになり、そのポテンシャルの高さやその可能性を信じるようになった。
また、このプロジェクトの場を用意した、商店街の振興組合の方々も前向きで前のめりな方ばかりだ。
皆、「大曽根商店街はこのままでは終われない」と思っている。
今はみんな大曽根商店街が大好きだ。

この10名のプロジェクトメンバーで作ったリノベーション案の名前は、「オズの交差店」
様々な人々が交流できるような場となるように思いを込めた。
1階はカフェスペースとシェアキッチン、2階はフリースペースとオフィス、3階はレンタルスペースとテラス。
これらをつなぐ階段沿いには、一箱本棚。縦横30~40cmの一箱本棚をスペースとして貸出、そのスペースを自由に使ってもらうものだ。渋谷のヒカリエにある「渋谷○○書店」は同様の形態である。
様々な事業主体の方が入った複合施設にリノベーションするという提案だ。

2022年3月に、公開プレゼンテーションを行った。
延べ100名程度と非常に多くの方が集まった。注目度はそれなりにあった。
このプロジェクトの事業者としてやってみたいという方も何人かいた。新聞記者も来て、記事にもなった。
公開プレゼンは成功したと思った。

しかし、公開プレゼンが終わって1年以上が過ぎた今、このリノベーション案は形になっていない。
公開プレゼンの後、3組ほどの事業実施希望者と会い、調整が行われた。しかし、なかなか決まらない。
これはいけそうだと思っても、結局ダメになってしまう。
正直、私は奥歯にものが挟まったような、もどかしい気持ちでいながらも、時間が経つにつれ、このプロジェクトを何とか進めようというモチベーションは無くなってしまった。

そんなある日、商店街の振興組会の方からLINEがきた。
「やっとビル活用が動き出しそうです! 事業内容は変わりますが、シェアキッチンやカフェスペースなどで構成される複合施設となりそうです。」
とても嬉しかった半面、私はこの商店街に対して十分な貢献ができなかったと後ろめたい気持ちもあった。正直、複雑な心境だった。
ただ、素晴らしい。事業を行うメンバーは、大曽根商店街の関係者が中心。
一部の方は知っているが、メンバーは、大曽根商店街を何とかしたいと考えている熱い思いを持った方。

私は香川県高松市出身。地元にも商店街があったが、大曽根商店街と同じようにシャッター商店街だ。商店街に何があるかというと表現しがたいが、無くなると寂しい。
今回の大曽根商店街のプロジェクトを動かす方は、そんな気持ちがあるだろう。
確かに、経済的な合理性のみでは成り立たないかもしれない。しかし、商店街は一つのコミュニティーだ。
このプロジェクトは、大曽根商店街という一つのコミュニティーが持続的になるような第一歩となってほしい。

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