日本の建設企業は国際化が進んできたか?? Part 2

海外事業の収益率は低いのか?

これは、大きなポイントです。収益率の高い方へ、ビジネス展開するのは当然です。日本建設企業の国際化についての論文はいくつかあります。2000~2007の間ではありますが、ZhangとLondon(2011)は、日本建設企業(Japanese contractors)の海外での営業利益は、西洋企業と比べて非常に低いとし、理由として国内事業の利益率の高さや潤沢な事業量のため、海外進出する旨みが少ないのではないかと指摘しております。また、Construction Excellence(2010)には、日本の建設業界は、高い効率化と、業界としては珍しく高い収益率であるとされております。

以上より、海外事業の収益率は、国内事業と比較して低いのではないかと推測できます。(定量的に評価したいのですが、一事業の収益率の定量的な把握は難しいです。一企業のみならず、複数企業からの情報が必要になります。)


国際化に関する理論とは?

実際、国際化は、ビジネス戦略として地理的なリスクを減らすと主張している論文もいくつかあります(e.g., Rugman, 1976、Annavarjula and Beldona 2000)。一方で、Hennart(2007)によれば、国際化は非効果的なリスク低減であると、取引コストの観点から説明しております。

しかしながら、国際化と財政的なパフォーマンス(ROAやROE)は相関関係にあることも指摘されております(e.g., Chin-Chun and Boggs 2003; Horta et al. 2016)。ただ、ある程度の閾値はあるようです。財政的なパフォーマンスは、資産をどれだけ効率よく使い、利益を上げたかという指標ですので、会社の規模・能力に対し、国際化をすることで利益の最大化は図れる可能性はあります。

まあ、国際化によって建設業界が良くなるかどうかは不明ですが、ビジネス戦略としてはありとは思います。

海外進出は、どこの国が多いのか?

海外建設協会(OCAJI)のデータによりますと、日系建設企業は、やはりアジア圏が最も受注件数が多く、次に北米、大洋州、アフリカといった内訳になっております。2008年以降は、全体として増加傾向になっており、アジア圏より北米の伸び率が高いことが分かります。

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それでは、全体のマーケットはどうなのでしょうか?以下のグラフはENRのレポートより作成した世界の建設マーケットを表しております。アジア・オーストラリア、ヨーロッパ、中東の順です。日系建設企業は、上記のグラフと比較するとマーケットの大きさに応じて、日系建設企業が海外進出しているわけではないことが分かります。アジア圏は、地理的に近いところ、北米は、第二次世界大戦以降、アメリカとは非常に近い関係性にあったため、それらの地域にビジネス展開していることが分かります。

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海外事業の受注形態はどのようになっているのでしょうか。海外建設協会(OCAJI)のデータ(本邦法人と現地法人の内訳)によりますと、2008年までは、半分以上が本邦法人(Parent companies)が受注しておりましたが、2008年以降は現地法人(Overseas affiliated companies)の受注が過半数を占めるようになりました。建設業界においても、現地法人化が進んでいることが分かります。

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これは、経産省のアンケート結果によりますと、2007から現地法人を維持する(Answer 2)又は増やしたい(Answer 1)という意向が高まっていることが分かります。その結果として、現地法人による受注高が増えていることが推察されます。Abdul-Aziz(1994)によれば、日系建設会社は、反日感情に対応するため現地法人化を進めたと言われており、HasegawaとShimizu(1988)においても、1980年代から日系建設企業はマネジメント機能を本社から現地法人に移行する取り組みを行ってきたことが示されております。

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今回は、日系建設企業の国際化がどのように進み、どの地域に進出してきたかという点をまとめました。次回は、国際化が進む中でのスーパーゼネコンの財務状況がどのように変わってきたかという点を分析していきたいと思います。

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