No.7 GTO Wizard Blogの解釈記事【What is Expected Value in Poker?】
本記事はGTO Wizard Blogを私なりに解釈し、友人に説明するならどのように書くかな?と再まとめしたものとなります。
今回の記事は「What is Expected Value in Poker?」になります。
今回の記事はポーカーの基礎中の基礎である「EV」についてである。ポーカーの座学を進めていく上ではEVの概念は切っても切れない部分なため、本記事だけでなく、書籍・他ブログ・動画等を見て、血肉化をしてみてほしい。
期待値(EV)はポーカーで最も基本的な指標である。君が取る全てのアクションは、1つの共通の目標を目指している。それは「収益を最大化すること」である。そのためには、君が取る全てのアクションについて、「長期的な収益性」を考慮する必要がある。
(筆:「長期的な収益性」については、本当に大事な部分です。ガットを引かれてしまって拗ねてはいけません。それは短期的な収益に惑わされています。ポーカーは長期的な目線で考える必要があります。ガットだって、同じシチュエーションだったら、圧倒的に引かれずに終わることのが多いのです。まぁそんなこと分かってはいても、机をぶん殴る私は弱い。)
EVは、特定のプレイで(くどいですが重要なので)長期的にどれだけ勝つか、負けるかを指標する値である。
■ EVはどこから来ますか?コウノトリさんが運んできますか?
君はこのような卓に座っていると想像してみてほしい。この卓では全てのプレイヤーが毎回チェックダウンする。この卓では、誰も有利にならないことがわかるだろう。なぜなら、エクイティが均等に分散されるからである。もし利益を得るためには、公平なシェアよりも多く勝つ必要があるのである。
(筆:普通はカジノ側にレーキが取られるので、全員が負けますけどね。)
では、EVはどこから来るのだろうか?コウノトリさんが運んでくるのだろうか?
EVを得る方法はいくつかあるが、一番一般的な形は君が保有するエクイティを効率的に利用することから生まれる。どういうことかというと、適切なハンドをベットし、またはチェックし、正しいベットサイジングを行い、コールすべきハンド/降りるべきハンドを正しく判断する。当たり前のことを書いているようだが、このようなことをするだけ。が難しい。結論、正しいプレーをするだけで、EVが生まれるのである。
実際にEVが生まれるスポット、チップを獲得する方法は2つのみである。それはショーダウンでポットを取るか、他のプレイヤーをフォールドさせるかである。
そのため、EVには以下の2種類がある。
ショーダウンEV:ショーダウンで勝った/負けたチップ
フォールドEV:フォールドまたは相手をフォールドさせることによって勝った/負けたチップ
(筆:より簡単なのはショーダウンEVを取ることです。だって、強いハンドを「作る」だけで得られるEVですから。反対にフォールドEVを取ることは一定の難しさがありますよね。ブラフしないといけないですし、ショーダウンバリューがあると思ってチェックしていても、実はブラフしないといけない場面が多々あります。フォールドEVを取る。を達成しようとすると座学をしていないとNGな気がします。)
■ フォールドEVについて
フォールドEVについて、当たり前に思えると思うが、改めて以下を記載をしてみよう。
君は勝ち目のないハンドをフォールドすることからは利益を得ることはできない。
君はショーダウンで負ける可能性のあるハンドをフォールドさせることから利益を得る。
もし、君がリバーでナッツハンドを持っている場合、より弱いハンドから、ポットにチップを投入してもらうことでしか、EVを得ることはできない。これは「ショーダウンEV」を得る最も単純な例となる。逆に言えば、より弱いハンドをフォールドさせることからは何も得られない。
言い替えると、君の「ショーダウンEV」が「フォールドEV」にシフトしているだけだ。
現状、君の方が勝っている状態で相手をフォールドさせて得をするのは、相手のハンドがドロー等で将来君のハンドを捲ってしまう可能性を持っている場合にフォールドをさせることができた時!!等が挙げられる(筆:他には相手のブラフの機会を奪えている。等の利得もありますね)。
例えば、君はターンでトップツーペアでベットし、相手がフラッシュドローをフォールドしたとする。これは君をアウトドロー(捲ること)できる弱いハンドを相手がフォールドすることからフォールドEVを得た。逆にコールされた場合は、相手は君よりも、弱いハンドでコールしているため、そこからEVを得ることもできたのである。相手が君をアウトドローできる弱いハンドからエクイティを奪うことは、一種のフォールドエクイティの形と考えることができる。
通常、よりバリューを取りたいだろうから、より弱いハンドにコールされることを望む。しかし、それらの弱いハンドが君のハンドに対して高いインプライドオッズを持つ場合、相手にフォールドされる方が実際には好ましいかもしれない。これは、エクイティをオーバーリアライズするというコンセプトと関連している。
(筆:「捲られる前に降ろしてしまえ。」と書かれているように見えるかもしれませんが、そういうことではないことに注意してください。何事もバランスが大事なため、そのような場合もある。ということに注意です。ちなみにエクイティのオーバーリアライズは後の記事で書くので、今はカッコいいこと言ってんな。で大丈夫です。)
■ ブロックベットについて
OOPでセカンドペアを持っていて、リバーでブロックベットをするとしよう。このベットにより、時々より強いハンドにコールされ、弱いハンドにコールされ、レイズされる。そして君が勝っているハンドをフォールドさせることがある。君より弱いハンドをフォールドさせるベットで、何かをメリットを得たのだろうか?
その答えは「イエス!」である。フォールドするような弱いハンドは、君がチェックした場合にはブラフでベットをしてくるかもしれない。そして、君はセカンドペアを降りる可能性もある。
このブロックベットはショーダウンEVがマイナスであっても、最善のプレイであることがある。これがソルバーが時折、コールされた場合のエクイティが50%未満のバリューハンドでも、OOPでブロックベットをする理由となる。
(筆:相手に好き勝手されないようにするベットですね。基本的にこのようなベットにはGTOよりも弱いハンドレンジになっていること、言うなればトラップのレンジがないことが多いのでドデカレイズを返してしまいます。好き勝手してやります。)
■ EVの関係性
(筆:この章は直接的に大きくポーカーに関係はないかもしれないですが、考え方として、いろんな視野を持っておくことは重要です。それを踏まえて、読んでみてください。)
EVに関する誤解の1つは「フォールドのEVは常に0 」という考え方である。しかし、これはフォールドを0と定義する場合にのみ当てはまる。ハンドの開始時とのスタック差を EV として測定することもでき、この視点も有効になる。
例えば、11bbで3betし、25bbの4betを打たれているとする。アクションとしてフォールドを選択すると、11bbを失うことはわかるだろう。これを100回行うと、1,100bbを失うことになるのである。では、誤解の一つである「フォールドのEVが常に0」であるなら、なぜ1,100bbもなくなってしまうのだろうか?コウノトリさんが奪っていったのだろうか?
4betに対する意思決定側の観点からすると、最初の11bbのレイズはサンクコスト(←既に投入した費用)であり、フォールドは0EVと見なすことができる。一方、開始スタックの観点からすると、フォールドは11bbを失ったことになる。両方の観点は妥当であり、最終的に異なる前提における選択肢のEVを比較しているだけである。
重要なことは、EVは常に他の何かに対して測定されるということである。フォールドを0EVと定義する場合、コールのEVはフォールドのEVに関連しているのである。
(例)BB AQsで3betし、BTNから25bbの4betに直面したとしよう。フォールド、コール、またはオールインの3つの選択肢がある。GTO Wizardでこれらの選択肢のEVを見ると、次のようなものが表示される。
4betに直面した時点でのEV測定はフォールドは0bb、コールは4.02bb、そしてオールインは2.58bbとなっている。
しかし、これらの数値は誤解を招く恐れがあるだろう。それはコールとオールインの両方が「利益を上げる」かのように見えることである。
では、開始時のスタックに対してEVを測定した場合を見てみよう。
フォールドは-11bb、コールは-6.98bb(フォールドに比べて4.02bb Good)、そしてオールインは-8.42bb(フォールドに比べて2.58bb Good)である。
これらから、どの視点で見たとしても、コールがベストなアクションであることがわかる。そして、フォールドに比べて4.02bb良いアクションであることもわかるだろう。
重要なことは、ソルバーは3つのマイナスアクションから最も少ない損失になるアクションを見つけようとしていることを認識しよう。この概念を認識して、EVを理解することが重要である。ポーカーでは、このような「最小限の損失に抑えようとする」スポットが絶えず発生する。
■ EVの表し方について
EVを測るには様々な方法がある。最も一般的な方法は「bb」で測定することである。その他にも、EVをチップやポットシェアで測定することも可能である。例えば、ポットが5bbで3bbを得る場合、ポットシェアで測定すると60%のEVがあると言える。
(筆:この表し方は、100%以上になることもあります。これは単純に、長期的にはポットを獲得するし、この先のストリートでもよりEVを獲得できることを意味します。EVだけで確認しても、直感的にはよくわからないことが多いため、私はEV/potで確認するようにしています。Wizardも設定すれば、そのように表示をしてくれます)
EVを上記のように%表示で測定することは、俯瞰した視点で把握できるという利点がある。例えば、「2bbを得る。」となっていても、ポットが1,000bbの場合は利益が僅かであることがわかる。では、ポットが5bbの場合は、「2bbを得る」ことはかなり重要な利益であると言える。
(筆:私はその2bbも床を舐めてでも獲得したいですけどね)
トーナメントプレイヤーはより難しい概念を導入して、EVをトーナメントで利用できる価値に変換する必要がある(ICM、DCM、FGSなどを使用して、EVを変換する)。
(筆:WizardブログでチップEVをトーナメントEVに変換する記事がありますが、トーナメントの座学にあまり関心がなく、、、記事化をするのはまだまだ先になりそうです)
■ EVを定義しよう
最初の方にEVは「特定のプレイで長期的にどれだけ勝つか、負けるかを指標する値である。」とお伝えした。そのため、EVは全てのアクションを包括する加重平均である。
最も簡単な定義は次のようになる。
EV =(結果1の確率×結果1のペイオフ)+(結果2の確率×結果2のペイオフ)+(結果3の確率×結果3のペイオフ)...
では、EVを実際に例を用いて計算していこう。
例1
ポットサイズのオールインに対して、君のハンドは25%のエクイティドローがあるとしよう。コールすると、引き分けを除いた勝つか/負けるかの2つの結果となる。もちろん、勝つとポットを獲得し、相手のポットベット分を獲得することができる。負けると、ポットサイズ分のコールした額を失うのである。
勝つ:25%(+2pot)
負ける:75%(-1pot)
EV = (勝利確率)×(ペイオフ)+(負ける確率)×(ペイオフ)
EV = (25% × 2) + (75% × -1) = -0.25 pot
平均して、0.25potを失うコールなため、良いコールではないことがわかるだろう。
例2
相手がハーフポットのオールインをし、君はエクイティが35%あるとしよう。君はハーフポットを賭けて、1.5ポット(相手のハーフポットベット+ポット)を獲得するためのリスクを負っているのである。
EV = (35% × 1.5) – (65% × 0.5) = +0.2 pot
平均してポットの20%を獲得することになるため、これは良いコールになることがわかる。
例3
この例は少し複雑な例だが、一つずつ考えていくとわかるので頑張ろう!!
君はトップペアを持っていて、リバーでポット(10bb)にベットする選択肢があるが、相手がオールインして、君はフォールドせざるを得ない場合もある。
諸条件
チェックバックした場合のEQ:70%
コールされた場合のEQ:55%
相手は君のベットにオールイン(君はフォールド):20%
相手は君のベットにフォールド:50%
相手は君のベットにコール:30%
バリューベットをするにはどうだろうか?
ベットしてコールされた場合のペイオフ =(55%×20bb)+(45%×-10bb)= +6.5bb
フォールドされた場合のペイオフ = +10bb
レイズされた場合のペイオフ = -10bb
EV bet = (fold% x 10bb) + (call% x 6.5bb) + (raise% x -10bb)
EV bet = (50% x 10bb) + (30% x 6.5bb) + (20% x -10bb) =+4.95bb
ベットアクションが+EVであることは、わかった。だが、そのままベットするべき!!という考えは良くない。その他の選択肢もじっくり検討しよう。
チェックバックする場合、70%のEQがあるため、ポットの70%(7bb)を獲得することとなる。
EV(ベット)= +4.95bb
EV(チェック)= +7.00bb
ベットすると、君はEQをブラフで失い/より弱いハンドをフォールドさせ/より強いハンドにコールされる等をして、2.05bbのEVを失ってしまうのである。ここでは明らかに、チェックが最良のアクションである。落ち着いて、全体を俯瞰して確認し、アクションを決定しよう。
これらを図でまとめると、以下のようになる。
■ EVから、他の指標を導いてみよう
ポーカーの各種指標は、EVの方程式から導出することができる。
まず、ポットオッズから導出をしてみよう。
ポットオッズは、ベットをコールするために必要なEQのことである。例えば、OOPがリバーでハーフポットをベットしたとしよう。IPはこのコールをするためにどれだけのEQが必要だろうか?
これを解くための方法は、次の単純な方程式を使用しよう。
必要なEQ =(コール)/(コール後のポット)
ハーフポットベットの場合は0.5 / 2 = 25%となる。IPはこのベットをコールするために少なくとも25%のEQが必要である。
(筆:当たり前のことですが、コールをするためにはコールをする理由が必要です。その理由はわかりますでしょうか?それはシンプルに「コールにより、プラスになること」です。当たり前ですよね?「長期的に」負けるとわかっているコールをする意味はないですよね。コールをするために投資した額を100%で回収できないとコールはしてはいけません。)
(筆2nd:もう一歩踏み込みます。コールするためには回収できないと意味がない。と言いました。単純に原則的にコールで勝つということは、相手のブラフに勝った。ということですよね。一部、相手のバリューに勝つこともあるかとは思いますが、原理原則は相手のブラフキャッチをすることでコールは利益を生みます。ということは我々が長期的に勝つためには、相手のレンジにブラフがポットオッズ以上含まれていないといけません。これはわかりますでしょうか?ブラフをキャッチして勝つのだから、そのブレイクイーブンであるポットオッズ以上に相手のレンジにブラフハンドが含まれていないと、利益が出ないコールになります。また後の記事で詳しく書くと思いますが、「ポットオッズ」は「相手レンジに含まれているべきブラフ」と一緒になります。)
(筆3rd:すみません。超重要なのでもう一回砕いて、説明します。レンジというのは自分/相手が持ちうるハンドの集合体ですね。そのため、100万回戦えば、相手の保有するブラフレンジの割合=自分がコールして勝つ確率ですよね。じゃあポットオッズが25%なのであれば、25%は勝たないとダメってことですよね。ということは、、、相手のレンジに25%のブラフが含まれていないと「長期的には」勝てないということですね?じゃあ、「相手のブラフレンジの割合」=「ポットオッズ」になるわけです。なのでポットオッズを計算して、その値と相手が持ちうるブラフレンジの割合が下回っていたら(バリューに寄っていると思うのであれば)、コールしてはいけない。ということです。結構、しっかりスポットを考えてみると相手の保有するブラフレンジ割合がポットオッズを下回っていることは多いです。リバーでポットを打たれた時のポットオッズを計算してみて、その割合で相手にブラフレンジがあるか?を考えてみてください。)
ただし、これはEVを使用しても計算が可能である。この方法の利点は、単なる損益分岐点だけでなく、特定のベットサイズと一定のEQ量に基づいて、どれだけ得したり、損したりするかを正確に計算できることである。
EV = (Win% x $Won) – (Lose% x $Lost)
$Won = 1.5
$Lost = 0.5
Win% = EQ
Lose% = 1-EQ
EV = (EQ x 1.5) – ((1-EQ) x 0.5)
EQ = 1/4
つまり、損益分岐点を達成するには25%のEQが必要であることがわかる。
次にアルファ(Alpha:α)を求めてみよう。
αは君のベットが利益を生むために、相手がフォールドする必要がある頻度で、「EQ 0%のブラフ」で損益分岐点を求めることができる。
(筆:実際、EQ 0%のブラフは殆ど発生しないため、理論的な計算となります。)
方程式:α = risk/(risk+reward)
ここで、リスクはブラフの額で、リワードは彼らがフォールドした場合に得られるポットである。ハーフポットのブラフの場合、リスクは0.5、リワードは1である。
0.5 /(0.5 + 1)= 33.3%
これは3回に1回、フォールドしてくれれば、そのブラフは利益的になる。ということである。しかし、彼らがより多くまたは少なくフォールドする場合はどうなるだろう?その場合、ブラフはどれほど収益性があるのだろうか?
それを知るために、EVの方程式を使用しよう。
EV = (pot x fold%) – (bet x call%)
次に、EVを使用してアルファを導出しよう。損益分岐点を見つけるためにEVを0に設定することとする。
0 = (1 x fold%) – (0.5 x call%)
0 = fold% – (0.5 (1 – fold%))
fold% = (1 – fold%) / 2
2 fold% = 1 – fold%
3 fold% = 1
fold% = ⅓ = 33%
MDFについても説明しておこう。
これは、EQ 0%のハンドでブラフをされていると仮定した際にブラフで利益を得られないようにするために必要なコール頻度である。これは上記で計算した1-αに等しいため、正確な導出は省略する。
MDF = pot/(pot+call)
MDF = 1 / (1 + 0.5) = 66.6%
or 1- alpha.
■ 結論
ハンドの価値を正しく評価することはかなり難しい。これをマスターするには生涯を捧げないといけないかもしれない。しかし、EVはポーカーの意志決定にとって重要な指標である。
トッププロはテーブルで複雑な計算を頭でしているのだろうか?
それは「No」である。実際、ポーカーは直感的なゲームである側面があるが、正しい決定を考え、ソルバーを理解し、適切なテーブル外での座学を行うために、EVがどのように機能するかを理解する必要がある。テーブル外で様々なシナリオを検討することで、何が良い戦略であるか、そうでないかをより良く理解することができる。
(筆:座学大事)
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