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【超実践】本20冊を試して思い知った「仕事に役立つ勉強法」

本20冊を読んでみて、実際に試してみて効果のあった勉強法を実体験ベースでまとめてみました。
2万字をゆうに超えてしまいましたが、体系的かつ筋肉質にまとめております。

2024/12/16追記:なんと先週もっとも多く読まれた記事の1つになったそうです。


はじめに

まずは本題に入る前に
・この記事を書こうと思ったきっかけ
・どんなアプローチで書いたか
・この記事では何を扱って、何を扱わないか
を整理しておきます。

「本題はよ」と思った方は、飛ばしていただいても大丈夫です。
・・・が、飛ばさないほうが、この記事の理解は深まりやすいはず。

この記事を書こうと思ったきっかけ

何十冊も「学び方」「勉強法」の本を読んでは試し、読んでは試し、を繰り返して、実験結果が溜まってきたためです。

私自身、

  • 年300冊くらい本を読んで、『投資としての読書』という本を出すくらいビジネス書オタクである

  • 勉強法の本を読んで試した結果、MBAを全科目成績Aで修了したり、初挑戦のUI/UXデザインの領域で副業をやったり(いろんな要素が絡み合って運よくグッドデザイン賞の受賞に貢献できたり)、Xでフォロワー4万人を突破したり

・・・と「いい本を選ぶ目利き力」「読んだ本を活かす力」に関しては、それなりに自信がございます。

だからこそ
・どの勉強法は役に立ったのか
・どの勉強法は全然効果が無かったのか
を実体験を持って語りつつ、
勉強法の本を何冊も読んでみてわかった、本当に効果のある勉強法」をまとめてみました。

どんなアプローチで書いたか

この記事は、次の3段階を経て書いています。

第一に、良書の基準に当てはまった勉強法本だけを材料にしています。
私にとっての良書とは、わかりやすくて深い本のこと。

わかりやすさを確かめるためには、

  • 本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?・・・目次を読んでチェック

  • 中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?・・・3ページくらい読んでみて、言い回しをチェック

深さを確かめるためには、コンサルティングファームでの学びを応用して、本に対して「So what?」「Why so?」「How?」と突っ込みを入れるようにしています。

  • 他の本にない「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)

  • 主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?理論やデータに支えられているか?(Why so?)

  • 明日からすぐ実践できるレベルで具体的に記されているか?(How?)

こうやって、実際に本屋に出向いて、上記のチェックリストに沿って本を選んでいます。
そんな良書の学びのみを実践しました。

第二に、実際に試した結果のみを記載しています。
本に書いてあった勉強法を試してみて、上手くいったもの、効果がなかったもの、すべて赤裸々に実体験をもとに書き綴っています。
ときには容赦のない内容が書き綴られるかもしれませんが、お許しください。だって、試してみて実際にそう感じたわけなので。

もちろん、私も本気で試しましたよ。
身銭を切ってMBAに通ったり、副業で未経験の分野に挑戦したり。
そして「本の内容をちゃんと実践できてないだけじゃね?」と突っ込まれるのはイヤだったので、ちゃんとMBAは全科目を最高成績で修了しました。これで「試し方がおかしいんだ」という文句は言いづらくなったことでしょう。
冷やかしで書いていない、という気迫が伝わりましたでしょうか?

第三に、なるべく体系的に記しています。
勉強法の本を読んでみて抱いた1つの不満が「体系的にまとめた本が少ないこと」だったんですよ。
いいこと書いてある本はたくさんあるのですが
「この内容で勉強法は網羅できているのか?」
「インプットの話ばかり書いてあるけど、アウトプットの話はどこいった?」
「おいおい、振り返りの仕方しか書いてないのかよ」
・・・と、不満に感じるシーンも多々ありました。

ただ、批判ばかりしていてもしょうがないので「誰も体系的にまとめないなら、おれがやる」ということで、体系的に整理してみました。

この記事で扱うこと

この記事では「仕事に活かせる勉強法」を扱います。
例えば、未経験分野の仕事を手っ取り早く理解するとか、資料作成の本を読んで仕事でサクッと試すとか、そのための勉強法について書いています。

この記事で扱わないこと

まず「試験勉強のための勉強法」は扱いません。
例えば、古文や英単語の暗記方法でしたり、問題集の選び方・解き方、みたいな話は、この記事の対象外です。
とはいえ、「効率よく物事をインプットする」など、試験勉強でも仕事でも共通して大事なことはカバーしていますので、ご安心ください。


また「学び自体を楽しむ勉強法」は扱いません。
よくこういう記事を書くと、
「学ぶこと自体が楽しいし、意味がある」
「仕事に役立つ学びだけをやっていると、つまらない」
「変に目的を定めすぎず、幅広く教養を学んだほうが人生が豊かになる」
・・・的なコメントをいただきます。
どのコメントにも賛同します。

ただ、私自身は、目的意識を持たずに教養書に挑戦しては、挫折する・・・を繰り返していました。
「学ぶこと自体が楽しいし、意味がある」という境地に達することができずにいました。
そんな中で、仕事に役立てることを目的に、実用的な学びに集中してみた結果、仕事に役立った手ごたえを得ることで、ようやく学びを楽しく感じるようになりました。
この成功体験を得て以降、教養や遊びといった
・仕事に直接的に役に立たない学び
・役立つまで時間がかかる学び
を楽しめるようになりました。

この記事は、私と同じように「勉強したことが何かの役に立った手ごたえを得たい」と思っている人に向けて書きました。
歴史や古典を読み漁っているリベラルアーツの猛者は対象としていませんので、その点ご容赦ください。

「仕事に役立つ勉強法」の全体像

この記事で扱う勉強法のテーマは6つ。
何十冊も読みましたが、それらの内容は以下の6テーマでカバー可能です。

  1. 学ぶ目的を設定する

  2. インプットする

  3. アウトプットする

  4. フィードバックをもらう

  5. 振り返る

  6. 心身のエネルギーを補給する

これらのテーマについて、20冊の本を読んで、試して、効果のあった勉強法のみを実体験ベースでまとめてみました。

第1章:学ぶ目的を設定する

「何となく英語を話せると役に立ちそうだから、英語を学ぼう」
「転職に有利らしいから、この資格を勉強しておこう」
こういったフワッとした動機で勉強を継続させるのは、難易度S級くらい難しいです。
例えば『Learn Better』という本では次のように記されています。

教え子たちにとって、統計学はつまらない、つまり、自分の生活には何の関連性も価値もない、苦痛で退屈なトピックに見えるのだ。

(中略)

フルマンと共同研究者たちは、学生たちにデータツールの価値を見いださせる狙いで、学生たちに次のようなお題を出した。自分の生活で統計学を使うシーンを想像できますか?看護師、営業マン、管理職という職業に就いて統計学を使う自分を想像できますか?学生たちはノート1~2ページほどの短いエッセイを書いた。

成果は歴然としていた。自分の生活と統計学の関わりを意識することで、学生たちの勉強へのモチベーションが大幅に上がった、成績がC平均からB平均へと一段階上がった学生もいた。要するに、統計学が自分の将来の職業、趣味、いつか築く家庭にとってなぜ大事かを説明する行為によって、学習のレベルが一足飛びに向上したのである。

『Learn Better』

私も「名刺に書いて箔をつけたいから」という理由だけで、中小企業診断士の勉強に手を出しました。
結果は、参考書を5冊買って、1冊目の問題を10問くらい解いて終了。
その1年後にブックオフに参考書を売って、100円にもならなかったのを覚えています。
なぜ、こんなことになってしまうのか?

その答えは、先ほどの『Learn Better』を読んでみたらよくわかります。

この本の中に「モチベーションの方程式」なるものが紹介されていまして。

その方程式とは、モチベーション=コスト(タスクを完了させるのに必要な努力の量)+期待感(自己効力感の概念、これについては次章で取り上げる)+価値あるいは意味の感覚。バロンによれば最後の変数が時として最も重要であり、それは「自分はこのタスクをやりたいのだろうか?」という問題だ。

『Learn Better』

ここまでの話を踏まえると、何かを学ぶときは「学ぶテーマと自分との関連性」をどれだけ具体的に言語化できているか、が重要になります。

自分に関係あると思えば思うだけ、勉強に身が入る。
MBA(経営学修士)というテーマも、大学時代は一切興味がありませんでした。
しかし社会人になって「うわ、経営のことを理解できていないと、こんなにも薄っぺらい提案になってしまうのか」と己の力不足を毛穴で感じた瞬間、MBAを学ぶことが自分事化されました。

では、どうすれば、学ぶテーマと自分との関連性を言語化できるか、ひいては「学ぶ目的」を設定できるのか。
大きくは次の2つの視点があると考えます。

  • 短期視点:できないことを、できるようにする

  • 中長期視点:自分の将来のキャリアに必要な物事を得る

学ぶ目的の設定①:できないことを、できるようにする

「新プロジェクトの稟議が通らなかった。次は経営会議の稟議を通せるようになりたい」
「1on1のミーティングで上手く部下の話を引き出せなかった。次こそは打ち解けて何でも話せる場になるようにしたい」
・・・といったように、今できていないことを、できるようになる。
短期的な困りごとを解決する。
これが、学ぶ目的の1つ目です。

短期的な困りごとを解決するために学ぶ。
そのために考えるべきことは
・困っていることは何か?
・何がクリアになれば困りごとは解決するか?
この2点です。

例えば「社内である企画を進めるときに、経営層や部長の承認は得られたものの、A課長への根回しを怠ったため、企画が滞ってしまった」という困りごとがあったとします。
この困りごとを解決するヒントを与えてくれる本を探したい。そういうときに、いきなり本を手にとるのもいいのですが、もうひと手間かけたいところです。本を探す前に「何がクリアになれば、困りごとが解決するのか?」を書き出してみましょう。
先ほど、根回しを怠って失敗した例を紹介しました。では、何がクリアになれば、この失敗を解消できるのか。次のように書き出していきます。

  • そもそも、根回しはなぜ必要なのか?個人的には、面倒くさいから必要ないと思っている。しかし、実際のところどうなんだろうか?

  • 失敗例のように「上位層が賛成し、現場が反対しているケース」では、どう根回ししておけば正解だったのだろうか?

  • 自分の会社ならではの「合意を得るための根回し最短ルート」はなんだろうか?

これらの論点が全てクリアになれば、先ほどの困りごとは解決しそうなイメージが湧きますよね。

「困っていることは何か」「何がクリアになれば解決するか」を、頭のなかで動画レベルのイメージが湧くくらい具体的に書き出しておくと、自分の悩みにフィットした本なり動画なりを選びやすくなります。

ちなみにこの話は拙著でもしているので、参考文献として載せておきます。

学ぶ目的の設定②:自分の将来のキャリアに必要な物事を得る

「将来はこんな状態になっていたい」
「その状態になるために、必要な経験と能力はAとBとC」
「Aを学ぶためにX、Bを学ぶためにY、Cを学ぶためにZをやります」
・・・というロジックで学ぶ目的を語れるとキレイですよね。
ただ、どうやって考えんの、それ?って話だと思うんで、僕が実際にやってみたことを書いてみます。

■やりたいこと・なりたい状態を定義する

シンプルに「やりたいこと 見つけ方」でAmazon検索して、一番上に出てくる本を読んでみました。ちなみに、私が読んだ当時も、2024年12月現在もこの本が一番上に出てきますね。

本書で語られているメソッドを私なりに図示すると次のとおりです。

テキストでも簡単に要点を整理しておくと、

  • 重要な公式その1:好きなこと(情熱)×得意なこと(才能)=やりたいこと
    「やりたいこと」とは、「好きなことを得意なやり方でやること」を意味する。

  • 重要な公式その2:好きなこと(情熱)×得意なこと(才能)×大事なこと(価値観)=本当にやりたいこと
    働き方を決めるうえで最も大事な要素が、この「大事なこと(価値観)」。「やりたいこと」をしているときに「大事なこと」も満たすことができると、「これが本当にやりたいことだ!」と思えて熱中できるようになる。

  • この公式を解くためには、第1段階として「大事なこと(価値観)」を特定する必要がある。具体的には次の5つのステップを踏むとよい。

    • ①質問に答えて価値観キーワードをリストアップする

    • ②価値観をマインドマップにまとめる

    • ③他人軸な価値観を、自分軸に転換する

    • ④価値観ランキングを作る

    • ⑤仕事の目的を決める

  • 次に、第2段階として「得意なこと(才能)」を抽出する。具体的には、本書で述べられている5つの質問に答えてみるとよい。2つだけ紹介すると、下記2点である。

    • ①これまでの人生で充実していた体験は?

    • ②最近イラっとした、もしくは心がザワザワしたのは?

  • そして第3段階として「好きなこと(情熱)」を明らかにする。具体的には本書で述べられている5つの質問に答えてみるとよい。2つだけ紹介すると、下記2点である。

    • ①今お金を払ってでも勉強したいことはありますか?

    • ②本棚にはどんなジャンルほ本が眠っていますか?

  • 以上の3段階を経て浮き彫りになった「好きなこと」「得意なこと」「大事なこと」を整理することで、「本当にやりたいこと」を抽出することができる。

ちなみに、この本の通りに「好きなこと」「得意なこと」「大事なこと」を整理して、「本当にやりたいこと」を抽出してみました。

僕の場合「好きなこと≒得意なこと」になる傾向があるため、得意なこと・大事なことを整理することに。

まずは、得意なこと・大事なことの要素を出してみました。

それで、大事なことと得意なことを掛け合わせてみて、「志高き人の”理不尽”を紐解き、解消しきること」がやりたいことかなと、言語化してみました。

では、どんな状態になっていると「志高き人の”理不尽”を紐解き、解消しきること」が実現できていると言えるのか?
こんなメカニズムが回っていると嬉しいな、と思い、図示してみました。

あとは、これらのメカニズムが回る状態になるために、どんな経験や学びを得ればよいかを考えていきます。その際に便利なフレームを教えてくれるのが『キャリアをつくる技術と戦略』という本です。

本書を読んでみると、次のようなフレームが紹介されています。

『キャリアをつくる技術と戦略』を一部加工

先ほど言語化したやりたいことを実現させるために

  1. どんな会社・部門のどんなポジション?

  2. 獲得すべき能力は?

  3. どんな経験をして、どんな実績を出すべき?

この3つを考えておくと、やりたいことの実現可能性が増します。
ちなみに私の場合、第1段階としては次のように考えていました。

  1. どんな会社・部門のどんなポジション?

    1. 事業会社のIT部門

    2. 個人事業(いったんブログ・SNS)

  2. 獲得すべき能力は?

    1. 1-1実現のためには

      1. 10人規模のプロジェクトをマネジメントする力

      2. CRMやBIツールの知識

    2. 1-2実現のためには

      1. ライティング能力

      2. ブログやSNSの基礎知識(立ち上げ方やアルゴリズムなど)

  3. どんな経験をして、どんな実績を出すべき?

    1. 1-1においては

      1. 社内の業務効率を〇%UPさせる

      2. webに何かしら事例記事で掲載される

    2. 1-2においては

      1. ブログは月間5万PV以上

      2. X(Twitter)はフォロワー1万人以上

      3. ブログやX経由で声をかけてもらって何かしら案件をもらえている

そして、第2段階、第3段階についてもnotionに言語化をしております。今回は「あ、こうやって考えれば学ぶ目的が設定できるのね」とイメージをもってもらうことが目的なので、これ以上私のキャリアについては触れませんが、もしニーズがありそうであれば別の記事でまとめたいなと。

以上のように、「獲得すべき能力」をクリアにしておけると、

  • プロジェクトマネジメント力を学ぶために、この本を読もう

  • ライティング能力を高めるために、この本を読んで、ブログでアウトプットしてみよう

・・・こんな感じで目的と紐づく形で学ぶテーマを決めることができます。

第2章:インプットする

インプットに集中できる仕組み・環境を作る

いくら勉強にやる気になったとしても、人間の意志力とは脆いもの。
意志力なんてクソの役にも立たない。そう断言するのが『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』という本でして。

本書によると「強制機能」なるものを構築できるかが重要になってきます。

自分の環境を効果的に最適化するには、「強制機能」を使って構築することだ。
強制機能とは、自分が意図したとおりに行動を起こして物事を実現できるように、文字どおり「強制的に何らかの状況を自分に課すこと」だ。
たとえば、仕事から帰宅した際、携帯電話を意図的に車の中に置いてくると、休息とリカバリーに向けて「強化された環境」ができあがる。
(中略)
強制機能は、利便性と簡潔さの両方を備えている。自分がしたい行動を、「しなければいけない行動」へと変化させるのだ。

『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』

強制機能=インプットに集中せざるを得ない環境」を作ること。
例えば、MBAに通っているときに、私は次の強制機能を作っていました。

  1. スマホを昼間は寝室、夜は仕事部屋に置く
    物理的に遠い場所にスマホを置いておくと、触る頻度がかなり下がります。

  2. 「全科目を成績Aで修了すること」を公言する
    上司との目標面談や、周囲の人との会話時に「オールAで修了してみせます」と公言していました。公言すると、自分が言ったことを守らなければならないという社会的プレッシャーを感じます。おかげで大学院を修了するまでの2年間、やる気を切らさずに学び続けることができました。

  3. アプリの使用時間制限を設定する
    私の場合、時間を浪費した二大アプリが「Twitter(X)」と「Youtube」でした。この2つに対しては、「10分操作したらロックがかかる設定」を施しました。また、20:00以降になると、すべてのアプリにロックがかかる設定も加えました。詳しい設定方法を解説したページを以下に貼っておきますね。

    1. iPhoneの設定方法はこちら

    2. Androidの設定方法はこちら

※ちなみに、『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』の学びを1枚にまとめたものも貼っておきます。

「腰が重くて着手できない」の壁を乗り越える

環境=外部を整えたとしても、やる気=内部が整っているとは限りません。
では、やる気になるには、どうすればよいか?

よく「やる気が出る→着手する」と考えがちですが、これは間違い。
正しくは「着手する→やる気が出る」なのです。

どういうことか?
「着手すること」の重要性をどの本よりも納得感をもって教えてくれるのが『独学大全』です。1064ページある鈍器本なのでKindleで読むのをオススメします。

本書を読んでいくと、次のように記されています。

事を成し遂げるために絶対に必要で、決定的に影響を与えるのは、手をつけること、着手することである。
(中略)
着手することは、我々が思う以上に様々な力を持っている。
まず一つは、着手することには、事柄についての評価を校正する効果がある。物事に着手する前の我々の評価は、過大になるか、それとも過小になるか、のいずれかになりやすい。
過大な評価は、過大を過度に深刻なものとして扱うことに繋がる。ヒトは解決可能と感じるからこそ、課題に取り組もうという気持ちになる。

『独学大全』より

例えば、夏休みの宿題なんかがまさに「着手から遠ざかるほど、どんどんやる気が下がるもの」の代表例でしょう。
一方で、夏休みの初日に1問でも着手しちゃえば「お、案外1週間くらいで終われそうだな。よし、ちゃっちゃと片づけるか」とやる気になれて、スタートダッシュが切れます。

着手しないと、やる気は下がり、
着手すれば、やる気は上がるのです。

では、重い腰を上げて、さっさと着手するには、どんな仕組みを導入すればよいのか?
私は『独学大全』の「2ミニッツ・スターター」を使用しています。

①タイマーを2分にセット

②タイマーをスタートさせ、すかさず作業を開始する

③タイマーが鳴ったと同時に途中でも作業をストップする
ストップしたら、次のいずれかを2秒で決めて行う。
・そのまま制限時間なしで同じ作業を続けるか
・それともまた2分間で違う作業にとりかかるか
・それとも作業をやめて休憩に入るか

『独学大全』

ほとんどの場合、途中で作業を終える気持ち悪さから「そもまま制限時間なしで同じ作業を続ける」を選ぶことになります。
最初の2分間さえ乗り切れば、あとは勝手にお尻に火がついて、勉強が前に進み始めます。

本を再読するのは非効率なのか?確実に本の内容を理解しきる方法

さて、環境もやる気も整って、いざ学習をスタート。
本を読み始めました。

本の内容を効率よく理解する。
その際によく論争になるのが「再読は効率がいいのか、悪いのか」です。

本を再読する(繰り返し読む)ことについては、諸説ありまして。
例えば、個人的に重宝している本の一つ『科学的根拠に基づく最高の勉強法』では、次のように述べられています。

コロラド大学の大学生たちを対象とした研究では、約1500~1700語の文章を再読するグループと、再読しないグループに分け、内容をできるだけ思い出してもらう試験や短答形式の試験を2日後に受けてもらいました。文章を続けて2回読んだ学生と、1回読んだ学生では、2日後の試験の成績に有意な差(統計学的な分析に基づいて評価された差)はありませんでした。

『科学的根拠に基づく最高の勉強法』

本書の第1章は「科学的に効果が高くない勉強法」なのですが、1つ目の勉強法として「再読」が取り上げられています。
本書によると、再読は非効率な側面があるとのこと。

「再読の効果はとんでもなく高い」と信じてやまなかった私からすると、衝撃的すぎる内容でした。
にわかには信じがたい。
以下の記事に書かれているように、「一読しただけでは何が書いてあるのmかサッパリ理解できない」分野は、とてもじゃないですが、再読しないと理解が進みません。

本当に再読に意味はないのだろうか?
そんな疑問を持ちながら、『科学的根拠に基づく最高の勉強法』を読み進めると、次のような注意点に触れていました。

普通の再読に、学習効果があまりないと考えられる1つの理由としては、同じ文章を2回目に読む時のほうが文章に慣れすらすら読め「わかった気になってしまう」ため、さらに理解を深めたり、覚えたりするといった深い情報処理が新しく行われにくいことが考えられます。
このような、表面的に情報が処理しやすくなったことで、実際には内容を記憶し深く理解していないにもかかわらず、覚えた気になってしまう、理解した気になってしまう心理的な現象は、「流暢性の錯覚」と呼ばれています。

『科学的根拠に基づく最高の勉強法』

なるほど。
再読は「わかった気になってしまう」から、学習効果が期待できないと。
裏を返せば、「わかった気にならないよう」に再読すれば、効果は期待できるのではないだろうか。
実際に、僕自身は再読の効果を痛感しているわけですし、再読のおかげでMBAのファイナンスの授業にもついていけた(というか、レポートはクラスで最高点だった)わけです。

そこで、私なりに「意味のある再読の仕方」をまとめてみました。
特に「一読じゃ理解が難しい、難解なテーマ(金融やITの分野、古典など)」において、これなしでは生きていけないくらい活用しています。

  1. 1~3周目は、理解しようとせずに「ただ眺めるだけ」の感覚で読む

  2. 4~7周目は、見出し・太字・各章の最初と最後だけを「理解するつもり」で読む

  3. 8~10周目は、興味があるけど理解できなかった箇所をじっくり読む

■最初の3周は「ただ眺めるだけ」で読んでいく

パラパラと本をめくるだけでも、繰り返し出てくる言葉や太字になっている箇所が目に入ってきます。
例えば、DXの本を読んでいると、「標準化」「AI」「ビジネスモデル変革」などの言葉が何度も登場します。キーワードだけでも断片的に頭に入れておけると、「もしかして、AIを活用するにしても、データが整理されていないといけない。データを整えておくためには、その前提となる業務も標準化されていないといけない?」と本の中身を想像できます。
ただ、これだと、先ほどの『科学的根拠に基づく最高の勉強法』でいう「流暢性の錯覚」、つまり理解した気になって終わってしまいます。


■4~7周目からは、本を理解するつもりで読んでいく

本の冒頭からじっくり読むのではなく、ざっくり要所だけを読み飛ばします。
まず、本の骨子を理解すべく、見出しに目を通します。気になる見出しがある場合は、周辺の「太字の文章」にも目を通します。よく理解できない箇所は8~10周目で回収すればOKです。興味を持てない見出しもスルーしましょう。
また、各章の最初と最後あたりを読むのもオススメです。なぜならば、各章の最初や最後には、その章の結論や問題意識が書いてあることが多いためです。


■8~10周目は、興味を抱いたものの理解できなかった箇所を中心に読む

8周目以降に差し掛かると、本の主張や骨子やおおむね頭に入った状態になっています。この状態であれば、最初は理解できなかった箇所も理解しやすくなっているはず。

また、私自身、8周目以降は、本に対して問いかけをしながら理解を深めていっています。
『独学の思考法』という本でも紹介されていますが、次のような問いかけです。

  • 具体化のための問い

    • 例えばどういうことか?

    • 何がきっかけで、このように考えるようになったのか?

  • 抽象化のための問い

    • そもそも、○○とは何か?定義は?

    • それは他の事例にも当てはまるか?

このような問いかけをしながら本を再読していくと、難解なテーマでも理解が深まりやすくなります。

一夜漬けしない。寝かせて定着させろ(…を誘惑に負けずにやりきる方法)

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「仕事がデキて、サクッと定時に帰れるようになる」 「副業なり転職なり、自由にキャリアを選択できるよう…

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