スサノオを祀る熊野大社
出雲の熊野大社
出雲国一宮は、出雲大社と熊野大社の二社です。熊野大社と聞くと、和歌山の熊野本宮大社を思い浮かべますが、こちらは島根県八雲市に鎮座しています。
一説によると、出雲から紀伊へ移り住んだ人々が、この熊野大社から熊野大神を勧請したとも伝わります。
延喜式の神名帳には、出雲国意宇郡に名神大社「熊野坐神社」、出雲国風土記には「熊野の大社」と記されています。
スサノオを祀る
熊野大社の御祭神は、伊邪那伎日真名子 加夫呂伎熊野大神 櫛御気野命です。
櫛御気野命は、伊邪那伎日真名子＝イザナギが大切にする、加夫呂伎＝神聖な祖神、熊野大神＝熊野の大神、という意味になり、出雲国風土記にも記されています。
伊弉奈枳の麻奈子に坐す熊野加武呂の命
櫛御気野命の櫛は「奇」、御気は「御食」を表し、食物神ともされます（クシナダヒメを日本書紀では奇稲田姫と書き、「霊的な稲田の神」の意とするのと同じです）。
先代旧事本紀や神代本紀には、「出雲国熊野に坐す建速素盞嗚尊」と書かれている事から、その頃には櫛御気野命はスサノオと同一神とされていたようです。
また熊野大社は、元々は熊野山に鎮座していましたが、中世の頃に「上の宮」と「下の宮」に別れたようです。
熊野山。郡家の正南一十八里。檜・檀有り。所謂熊野大神の社、坐す。
明治の神社整理で村内の多くの神社は、稲田神社と伊邪那美神社に合祀され、元々は上の宮にあった伊邪那美神社も現在の場所に移されたようです。
熊野大社の鑽火祭
熊野大社は、火の発祥の神社として「日本火出初之社」とも呼ばれており、10月には神事「鑽火祭」が行なわれます。
神事では、出雲大社の宮司が、「古伝新嘗祭」に使用する燧臼と燧杵と呼ばれる火を起こす道具を受け取りに熊野大社に訪れ、引き換えに大きな餅を持参します。この授け渡す儀は「亀太夫神事」と呼ばれ、出雲大社が納める餅の出来について、亀太夫という神職があれこれ言い、その後出雲大社の宮司の「百番の舞」が舞われます。