Bリーグの数字の話⑤どこよりもはやい⁉Bクラブ2019-20シーズン決算分析

ようやく本日、待ちに待ったBクラブの経営情報、発表されましたね。

Bリーグでは毎シーズン、各クラブの財務情報を開示してくれています。
こちらに他の開示情報をプラスして、2019-20シーズンの各クラブの経営的な傾向を分析してみようと思います。

前提としまして、以下の点にご留意ください。
①数字はあくまで"傾向値"です。点で見ても判断は難しく、他者との比較で判断する必要があります(普通の企業と一緒です)。
②Bリーグで開示されている財務情報は2019-20シーズンのものになりますので、現在進行しているシーズン(2020-21シーズン)のクラブの状況とは異なります。
③全Bクラブ(36)の情報が開示されていますが、B1クラブ(18)に絞って分析しています。

開示されている数字と分析データ

まずは先ほどご紹介した各クラブの経営情報を活用します。
データはPDFでしか開示されていませんのでエクセルに転記しています。

また入場者数およびSNSファン数(Twitter、Facebook、Instagramのフォロワー数合計)も例年分析するため、例年だとBリーグからマンスリーレポートとして毎月開示されている数字を基礎値として活用していたのですが、何とそれぞれの開示がある時期から停止していて、2019-20シーズン終了時のクラブ別の入場者数およびSNSファン数を取得することができませんでした。

ちょっと残念な状態で、毎年楽しみにしているデトロイトトーマツさん作成のマネジメントカップも発行されるのかちょっと心配です。。。

とはいうものの、ないものを探してもしょうがないので、2019-20シーズンについては開示されいてるもので最新のデータ(入場者数については2020年2月、SNSファン数については2019年12月)を活用することにしました。
※今後、どうデータを取得するかは検討中です…。

またシーズンが途中で中断してしまった、ということで各クラブが何試合ホームゲームを消化したか、を調査することがかなり大変な作業だということがわかりました。(例年は一律30試合)
そこで終了時点の消化試合数が約40試合だったので、その半分の20試合がホームゲームだった、と仮定して計算を行ないました。
本来はもっと精緻な数字を使いたいところでしたが、今シーズンのみの事象に対してあまり労力を使うのも…という考えです。

そんなこんなでできあがったデータが以下になります。

画像1

視認性を向上させるため、数値上位3クラブを青セルに、下位3クラブを赤セルにしています。青っぽいクラブは経営的に優秀、と捉えてください。
下のほうの独自の経営指標については、別途、各項目について説明してありますので、そちらを参照してください。

売上と利益、債務超過

ここからは各項目について分析結果に触れていきますが、全項目、全クラブについてコメントするともの凄いことになってしまうため、特に気になるポイントに絞って触れていこうと思います。
まずは全体感として、財務データから読み解けるところを。

【売上高】
最高値はA東京の15.8億円、平均は9.3億円。2018-19シーズンは最高値の千葉の17億円で平均が9.2億円なので、特に売上上位クラブがコロナ禍の影響を受けたという印象です。

またBクラブが将来構想として目指している12億円を超えているクラブは5クラブ(宇都宮、千葉、A東京、三河、大阪)です。
宇都宮と千葉はバランスよく、A東京と三河はスポンサー収入(11億を見たとき、はぁってなりました…)、大阪(あと三河も)はその他収入と、それぞれの稼ぎかたが違うのが面白いですね。

【当期純利益・資本(純資産)の部 合計】
赤字と債務超過は別物です。当期純利益がマイナスなら赤字、資本(純資産)の部 合計がマイナスなら債務超過です。

赤字クラブは9クラブ(宇都宮、千葉、川崎、横浜、新潟、富山、三遠、大阪、琉球)です。
特に宇都宮、千葉、琉球の3クラブ。入場者数を増加させ、そこからの好循環を目指す、スポーツクラブとして真正直な経営をしてきた3クラブが大打撃を受けている印象です。
(別項目の売上高成長率が顕著にその状況を示しています)

債務超過クラブは3クラブ(宇都宮、横浜、新潟)です。赤字なのに債務超過を回避できているクラブは、もともと資産超過の"貯金"がかなりあったか、増資により回避したか(川崎、富山)、のどちらかのようです。

売上高に占めるスポンサー収入の割合

本項目の今シーズンの平均は54.3%。2018-19シーズン平均が50.8%で3.5%アップしています。要因としましては、入場料収入が減ったため相対的に数値を押し上げた、ということになります。
ただ、コロナ禍で強いはずのスポンサー収入を柱とした経営をしていても赤字になっているクラブもあります。

売上高・チーム人件費率(チーム人件費÷売上高 %)

最高値は島根の60.2%、平均は44%。2018-19シーズン平均が39.5%で4.5%アップしています。こちらも売上高が減ったため相対的に数値を押し上げた、と捉えられます。おそらく各クラブ35~40%を狙っていたんじゃないかな、と思っています。
以前にまとめましたが、チーム人件費はシーズン前にほぼ確定してしまいます。

目標の売上には届かないけど、選手報酬は変えられない。このあたりがスポーツクラブの経営の難しさかなと思います。実際に8クラブが50%前後となっています。

また金額と順位の相関に目を向けるとチーム人件費が4億円超のクラブは三河を除いて上位8チームにランキングされていますので、選手に投資することが勝利に直結しているのは数値的には明らかです。(ちなみに例外は滋賀です)

余談ですがA東京のチーム人件費9.2億円を見たとき、また、はぁってなりました…。

経営トップ3に変動あり!?

過去記事で"バランス型"経営と表現した、入場料収入を軸に上昇スパイラルを形成する経営で、Bリーグ発足当初より経営的な面でトップをけん引してきたのが千葉、宇都宮、琉球、の"トップ3"なんですが、今シーズンはその状況に変化が起きているようです。

トップ3に食い込んできているのは川崎。入場者数・収入と物販収入でトップ3に名を連ねています。また1勝あたりのチーム人件費など、経営効率(コスパ)がめちゃくちゃ良いです。
2期連続で赤字計上でしたが、増資により債務超過も回避しています。

また前"トップ3"と比較して弱いな、と感じるのがSNSファン数なんですが、ご存じのとおり今シーズンの川崎はSNS、特にYouTube配信にかなり力を入れていて、SNSファン数を伸ばすことが予想されます。
明確なストーリーを持って経営しているように感じます。

今後は千葉、宇都宮、川崎のトップ3、または琉球を加えたトップ4、という捉え方が正しいかもしれません。

最後に

今シーズンはかなり特殊なシーズンになってしまいましたが、それでも様々なデータを収集することができました。
今度、もう少し違う角度、例えば、昨シーズンからの成長度合いなんかを分析してみたいなぁ、と思っています。

もし、こういう角度で数字を見たい!などありましたら、是非コメントください。

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