Bリーグの数字の話③クラブ経営戦略の違い

Bリーグクラブ、と言っても生い立ちや目指すものはさまざま。
当然『勝利』を追い求めるものの、そのアプローチもさまざま、です。

今回は、Bリーグ各クラブがどのようなアプローチでクラブをチームとして、また会社として強くしようとしているのか、その戦略の違いを開示されている数字から読み解こうと思います。

前提条件

Bリーグで開示されている財務情報は2018-19シーズンのものになりますので、現在(2020-21シーズン)のクラブの状況とは異なります。
ちなみに通常、2019-20シーズン(2020年6月期)の決算情報は2020年11月頃の発表となります。

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経営戦略にかかわる傾向値

私は経営戦略をかかわる傾向値として、以下に着目しています。

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①売上高に占める入場料収入の割合
クラブの収入のうち、どれくらいの割合を入場料収入で稼いだか?の指標です。

②売上高に占めるスポンサー収入の割合
クラブの収入のうち、どれくらいの割合をスポンサー収入で稼いだか?の指標です。

③売上高・チーム人件費率(チーム人件費÷売上高 %)
クラブの収入のうち、どれくらいの割合をチーム人件費に割いたのか?の指標です。

④物販単価(物販収入 ÷ 総入場者数(単位:千円))
入場者一人あたり、どのぐらい物販(グッズ)を購入していただいているか?の指標です。

⑤SNSファン数
Twitter、Facebook、Instagramのフォロワー数の合計値となります。
『③売上高・チーム人件費率』以外の項目については、クラブが各セクションにどれだけ力を入れているか、の指標とも言えます。

注目すべきは"バランス"。どこに注力しているのか?

以前も言いましたが、数字はあくまで"傾向値"です。特に本項目については、数字が大きいから良い、ということはまったくありません。
まんべんなく力を注ぐクラブもあれば、一点集中!というクラブもあるかと思います。それこそ"戦略"です。

優良クラブは"バランス型"

視認性を向上させるため、数値上位3クラブを青セルに、下位3クラブを赤セルにしているのですが、千葉ジェッツふなばし・宇都宮ブレックス・琉球ゴールデンキングスに青セルが多いと思いませんか?
Bリーグ初年度からの数字を見ても、この傾向は変わらず続いています。
私の中でこの3クラブは特別であり、目標のクラブです。

この3クラブの数字に着目してみると、
・入場料収入の割合は30%前後
・スポンサー収入の割合は35~40%前後
※千葉ジェッツさんについては急激なスポンサー収入増で少しバランスが崩れたのかな、と見ています。
・物販単価、SNSファン数も圧倒的なトップ3
ということで、非常にバランスが良いです。

通常の会社だと『経営の多角化』という表現をされるかもしれませんが、プロスポーツクラブの場合は、『入場料収入を軸とした上昇スパイラル形成』という見方が正しいかなと思っています。
入場者数が増えることで、スポンサーが増え、グッズが売れ、全体を押し上げていく。満員のアリーナが生み出す経営的シナジー。
プロスポーツクラブのお手本となる経営だと私は思っています。

一方、入場料収入を軸に置いているため、今回の新型コロナウイルスの影響を受けやすい経営構造とも言えるかなと思います。

スポンサー収入傾注型は、不況に強い?

『売上高に占めるスポンサー収入の割合』が50%以上のクラブは8クラブ、と約半数を占めます。どちらかというといわゆる"実業団系"クラブが多く、大口スポンサーが占めるウェイトが大きいのかな、と推測されます。

もし大口スポンサーが撤退したら、という大きなリスクがあるものの、撤退しなければそのリスクはありません。これはプロスポーツクラブがどう、ということよりスポンサーの本業がどの程度影響を受けたかによるため、ある意味、多角経営的な考え方ができると思われます。

バランスと傾注。正解はない。

新型コロナウイルスが拡大するまでは、バランス型がプロスポーツクラブの理想、と疑いませんでしたが、今はそうとも言い切れないな、と感じています。

理想を言えば『入場料収入と大口スポンサーの2軸経営』なのかなと思います。Jリーグの鹿島アントラーズのようなイメージでしょうか。

大事な事は数字を読み解きながら、今の立ち位置と次に進むべき方向を見定めることだと思っています。

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