【短編小説】真田丸 ~未来への願い~
プロローグ
時は1615年1月、大坂冬の陣。豊臣家と江戸幕府との間で緊張が高まり、大阪城の出城「真田丸」において、戦が始まろうとしていた。これは時代に翻弄された、2人の真田兵の物語。
本編
1章:陣
/ 大阪城 真田丸 陣内 /
佐吉:「なぁ、八兵衛」
八兵衛:「なんや佐吉」
佐吉:「聞こえるか、陣の外から聞こえるあの号令。あれ、徳川殿の軍勢やで」
八兵衛:「とうとうここまで来たんやな」
佐吉:「なんでこんなことになったんやろうなぁ」
八兵衛:「仕方ない、食うためには豊臣軍に雇われるしかなかった」
佐吉:「はぁ・・・始まるんやな」
八兵衛:「言わんでも分かっとる」
佐吉:「戦の前に、ワシは寒すぎて凍えそうやわ」
八兵衛:「せやな、今日は特に寒い」
佐吉:「腹も減ったしな」
八兵衛:「ここ数日、まともに飯も食えてへん」
佐吉:「一度くらい、飯に困らん暮らしがしてみたかったわ」
八兵衛:「せやなぁ」
佐吉:「ワシらのガキらには、戦のない暮らしをして欲しいな」
八兵衛:「あぁ、違いないわ」
佐吉:「戦は何も産み出さん」
八兵衛:「せやな、皆が揃って不幸になるだけや」
佐吉:「・・・なぁ、八兵衛」
八兵衛:「ん?」
佐吉:「来世でもな、友達でいてくれるか」
八兵衛:「なんや急に」
佐吉:「なんとなくな」
八兵衛:「ふん、縁起でもないけどな、当たり前やろ。ワシらはずっと友達や」
佐吉:「そいつはありがたい」
八兵衛:「・・・」
佐吉:「なんかな、さっきから急に足が震えてきてな」
八兵衛:「分かる、ワシも武者震いしとる」
佐吉:「怖いな」
八兵衛:「あぁ、ほんまに」
/ 敵兵の怒声と銃声が轟く /
門兵「敵襲!鉄砲隊!正門を守れぃ!」
2章:戦
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