たった一枚の何気ない写真。
「写真でも撮りましょう!」
記念日でもない何気ない日に、
そう提案しました。
その時は、その写真がご夫婦にとっての
最初で最後のツーショット写真になるとは思いませんでした。
2人とも身長は低めで、
認知症のご主人と奥さんの掛け合いがなんとも微笑ましい温かいご家庭でした。
僕が出会ってからわずか数ヶ月のある日、
病状は急激に悪くなり、
病院に運ばれた次の日にご主人はお亡くなりに。
ぼくたち看護師は
本人さんが亡くなってしまったら支援は終了してしまいます。
しかし、奥さんの人生はこれからも続きます。
急にご主人を亡くし、気持ちも整理できない中で
1人で生きていくことを迫られます。
亡くなってから1ヶ月経った時に、
奥さんの様子を伺いに久しぶりに訪問しました。
その時にあの日撮ったツーショット写真を写真立てにいれて奥さんに渡しました。
「これでこれからも生きていけるわ。撮ったことなんてさっぱり忘れてた、本当にありがとう。」
そう言ってご主人さんの遺影の隣にそっと置いてくださいました。
なぜあの時何気ない日に写真を撮ろうと
提案したのかは自分でもわかりません。
看護師やフォトグラファーとしての感なのか。
何気ない日のたった一枚のiPhoneで撮った写真が奥さんにとってこれからの生きる希望になるんだと
肌で感じ、心の底から熱いものが込み上げてきました。
あー、写真っていいな。
写真やっててよかったな。
そう思えた出来事でした。
Yusuke / 佐々木悠介
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