読書日記(6冊目)『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』梯 久美子(KADOKAWA)
今日で8月も終わり、遠出もせず自宅に籠もって読書三昧な日々でした。こういう時は辺境もの?に限ると思い、こちらを読了です。
いくつかの書評で取り上げられていて、「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」2020年にノミネートをされているようです。
ちなみにこの「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」ですが、どういった性質のものなのか少し分かりにくいと感じるのは僕だけでしょうか。。本屋大賞のノンフィクション版という位置付けなのだろうか。ちなみに2020年は石井妙子さんの『女帝 小池百合子』もノミネートされています。こちらはまごうことなき傑作ですので、未読の方は是非(少なくとも都民のみなさんは都知事がどんな人か知っておいた方がいい・・・)。
さて前置きが長くなりましたが、梯 久美子さんの新刊です。この本は少し変わった構成になっていて、第一部は著者が編集者と一緒に樺太を夜行電車で旅した記録。第二部は1923年の7月から8月まで(関東大震災の直前!)宮沢賢治が旅した樺太を辿るというもの。読後の感想としては結構読む前のイメージと違っていました。
樺太の南半分、北緯50度以南は日露戦争の勝利により日本に割譲されたというのは日本史で習います。20世紀前半、ここは日本の領土だったのですね。かつて日本だった場所を尋ねて、残された日本を発見、、、的なものを想定していたものの第一部は4泊程の夜行電車の旅をまとめているのですが、うち2泊は車中泊。そんなにあちこち行くわけではなくて電車に乗っているだけといえばだけ。なのでエピソードが膨らまない。これは最初に著者も「電車に乗るのが第一の目的」(P13)と書いてあるので、まあそうかなと。
でいよいよ第二部に入って、これからと思った矢先に、宗谷海峡のフェリーが運休で結局成田から飛行機で一瞬でついてしまう(そう沖縄より近いのです)。そして衝撃的なのがP143に記述がある通り電車が全島で運休になったという事件。そう、これで結局賢治の足跡は車で辿ることになってしまう。故に、賢治の詩からの引用がかなり多くて普段詩自体を読む習慣がない僕には割と辛かったです。
「今回の旅には出発前から暗雲が垂れこめていた。だがこれは私が不運なのではなく、サハリンとは、多くの不確定要素がはらんだ土地なのだと考えることにした」(P144)と吐露している通り、作品が途中で転調したということだと納得。
これは考えてみると作品のせいではなくて、僕自身がもう少し「動き」がある作品を求めていたのだけど(どこにもいけなかった8月にせめて本で旅しようと)、題名や装丁とは違って意外と「静かな」内容によるものだと思ったりしました。
いつでも自分の求めている本と出会える訳ではないし、万人受けする作品とかそもそも存在しないと、内容とは全然関係ないところで色々学びになる読書でした。
いずれにしても、大宅壮一ノンフィクション賞を受章したこちらの作品は超絶傑作ですので、是非。