国からの回答は何を意味するのか

日本の文化芸術の復興・継続ために集まっている映画・音楽・演劇・美術の四者による共同体、”WeNeedCulture”にて、政府機関として責任を担う6名に送った公開質問状の回答が届きました。

質問状の内容に関しては前回のnoteにて詳しく書いてますのでご参照ください。


回答が届いた、と書きましたが、
すみません、間違いです。

『回答』は、届いていません。

質問状を送ったのは6名、
菅義偉内閣総理大臣
麻生太郎財務大臣
萩生田光一文部科学大臣
梶山弘志経済産業大臣
宮田亮平文化庁長官
山口那津男公明党代表
です。

届いた文章は2通。
山口公明党代表からの文章。
そして、文化庁からの文章です。

文化庁からの文章には、

「本質問状については、内閣総理大臣、財務大臣、経済産業大臣、文部科学大 臣及び文化庁長官宛に頂いていますが、関係省庁にも確認した上で、文化庁より以下のとおりまとめて回答いたします。」

と書いてありました。

昨年3月27日に宮田亮平文化庁長官は、
新型コロナウイルスの影響が深刻化し、音楽や演劇公演の中止が相次ぐ中で、
「明けない夜はありません! 今こそ私たちの文化の力を信じ、共に前に進みましょう」
といったメッセージを残しました。
そこには、補償についての言葉はありませんでした。
公演イベント等の自粛要請が発せられた昨年2月26日から丸一年、再度の緊急事態宣言発出され、文化芸術分野も益々厳しい状況に立たされています。

私たちは、宮田長官本人からあらためてメッセージを受け取りたかったのです、
菅総理、麻生大臣、萩生田大臣、梶山大臣本人からのメッセージを。

届けられたのは、関係省庁の職員を代表した文化庁職員からの回答であり、質問状が本人たちに届いていたのかすら疑問です。


私たちは活動の中で、各省庁の官僚と幾度となく意見交換を行い、SaveOurSpaceにいたっては発足した日に、菅内閣官房長官(当時)と面談をしています。

WeNeedCultureに参加しているそれぞれの団体の署名数を合わせたら50万筆以上にのぼります。

アート・カルチャー・エンターテインメントを愛する50万人の意志と直接対峙しようとせず、なぜ「今後も、関係者の現場の声を十分に聴く」と言えるのでしょうか。

唯一、連立与党である、山口公明党代表からは文章が届きました。


冒頭、
「数多くの文化芸術関連イベントが中止・延期されたことによって、これまで文化芸術が多くの人々の心を潤し、勇気や希望を与えてくれる、かけがえのないものであると痛感いたしました。公明党としては、昨年6月より党文化芸術振興会議を計14回開催し、文化芸術関係者の方々から現場の声を直接伺い、その声を政府に届け、予算の確保や利用しやすい支援制度になるよう取り組んできました。」

と書かれていました。

文化芸術関係者への労いの言葉、そして党として文化芸術を支えてきたという意思を感じました。

たしかに、文化芸術振興議員連盟事務局次長である浮島とも子議員を筆頭に、公明党は文化芸術のために尽力してくれています。これは恐らく一般にはあまり知られていない事実だと思うので記しておきます。

文化庁の文章では、公明党の見解、党としてやってきたことが不足していると考え、個別に文章を出したのだと思います。


ここまで、

届いた回答を、『文章』と書いているのには理由があります。

文化庁からの文章、山口代表からの文章、
いずれも、『回答』ではないからです。

質問状には、4つの独立した質問への回答を求めました。

一つ目は、なぜ被害に対しての補償ができないのか。

二つ目は、なぜ感染拡大防止協力金の対象にならないのか。

三つ目は、なぜ諸外国のような緊急支援ができないのか。

四つ目は、文化芸術関係者へのメッセージを。


文化庁から届いた文章は、
質問の項目を一切無視したもので、現状行っている支援策を書き並べたものでした。

質問には答えない。
という明確なメッセージだけがありました。

山口代表の文章は、文化庁よりは寄り添う姿勢が見える言葉でしたが、質問の項目を無視した文章であることに変わりはありません。

これは質問に対する『回答』ではありません。

質問に答えない、本人が答えない。

立派なゼロ回答です。

言えないこと、言わないこと、言ってはいけないこと、お役所仕事のかたまりのような文章。

市民と行政は繋がっていません。
手を取り合っていません。

見えないところで進められ、
私たちにとっては必要のない、行政間のルールのなかで、大切なことが歪められて、
本当に困っているひとたちを救えていません。

このコロナ禍で、各省庁の職員は本当に頑張っています。
ただ、高い壁に守られ、市民との壁を壊すことができないでいます。

補償はしないという政府の大方針、
それを守る財務省の壁。

この根本を変えないと、行政と私たち市民は、ずっとすれ違ったままでしょう。

WeNeedCulutreでは、文化庁と山口代表からの文章についての受け止めを発表しました。



「私たちは昨年の春以降に様々な要請活動を行ない、現場の声を伝える努力を行って来ました。そしてそれは何人もの議員の方々のご助力を得て、国会審議にも反映され、それが政府の予算確保にも寄与したと考えてきました。しかしこの回答文には、現場の苦しさに対する配慮や芸術家に対する激励が全くありません。」

これまで何度も顔を合わせて、意見交換を行ってきた文化庁にすら、質問に対しての『回答』を得られなかったこと、現場に対しての配慮がなかったことが残念でなりません。

黙らないし、諦めない。
繋がることを、変えることを。

個人的に社会運動はフルオープンにすることが大切だと感じています。

問題を可視化して、皆で社会に接続していく。
全員参加型じゃないと、本当の意味で変わらないし、変えられないです。
自分たちでよい未来をどう作っていくか、政治はそれを支えるものです。

「私たちはこの回答をそのままにすることなく、政府、各政党、関係団体への働きかけをさらに繰り広げていく所存です。また、私たちはあらためて、社会における「文化芸術」の必要性、民間の文化芸術団体が果たしてきた「公共」的な役割、そして文化の担い手の育成と保護の重要性を、歴史を踏まえて言語化していくことを目指します。ひいては文化芸術基本法をはじめとする法律・制度の側面から、この国の文化芸術のあり様を変えていきたいと考えています。今後はさらに多くの方と連携して、今を文化芸術の大きな転換点とすべく活動してまいります。それは何より、コロナ禍の中でこの国の多様多彩な文化芸術がどれだけの貢献をしてきたかを再認識したからです。だからこそ、その芸術文化の花と、それを支えてきたすそ野を失くすわけにはいかないと考えます。」


“文化芸術基本法をはじめとする法律・制度の側面から、この国の文化芸術のあり様を変えていきたい”

WeNeedCultureは、諦めません。

ひとりひとりの心の拠り所を、
文化という、たよりないものを、
失くすわにはいかないんだよ。


SUPER DOMMUNE 2021/02/18「#WeNeedCulture​ at #DOMMUNE​」
#失くすわけにはいかない​
https://youtu.be/_gpwrkG8nuY

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