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韓国領事館からまた電話がかかってきました


1月某日。


地元の友人と散歩をしていると知らない番号から電話がかかってきた。

こわかったが気になったのでおそるおそる受けると、


「もしもし、パクユソンさんですよね?」


(誰やろ?なんで俺の電話番号知ってるんやろ?)


こわいので一旦黙り込んだ。


すると、


「20〇〇年に朝鮮籍から韓国籍に変えたパクユソンさんですよね?韓国領事館の者です。パスポート切れてますけど大丈夫ですか?」




(パスポート切れただけで韓国領事館から電話くるかな?)

朝鮮籍から韓国籍に変えた年は合っていたが、知らない番号だったので本当に韓国領事館の方かはまだ分からない。

とりあえずこちらから個人情報は一切提供しないように受け答えしようと思った。

なぜここまで用心深く対応したかと言うと、韓国領事館から電話がかかってくる数日前にドラマの「VIVANT」を観たばかりだったからだ。

普段から人を安易に信用しないが、「VIVANT」を観たばかりだったのでより一層用心深くなっていた。



「はい、問題ないです。」


「そうですか。よかったら今度面談したいのですが」



(面談?韓国領事館が面談の電話とかかけてくるかな?)


私の家族や親戚、友人に韓国籍の在日コリアンは大勢いるが、そんな話を聞いたことがない。

面談の電話はおろか、韓国領事館から電話がかかってきたという話を一度も耳にしたことがない。


「すいません、最近忙しいので。」


忙しいという理由でお断りした。

すると、

「インタビューしたいです。」


(インタビュー?)



「すいません、忙しいので。」

「よかったらティータイムでも。」



かなりしつこかったので、



「え?面談って強制ですか?」

「いえ、強制ではありません。」

「強制ではないのでしたら最近忙しいので申し訳ございません。」

「そうですか、色々活動されてますもんね。」




(活動?)

(活動って言うかな?)

当時私は26歳。

26歳成人男性の「忙しい」の相場は「仕事」だ。

普通「活動」の2文字は出ないはずだ。




(俺のYouTube知ってるな)



「最近忙しいので。」

「今も〇〇〇在住ですか?」



矢継ぎ早に質問をしてくる。

「今日何食べた?好きな本は?」

YOASOBIさんの「アイドル」の歌詞の冒頭くらい質問攻めされた。



「ちょっと忙しいので一旦切っても良いですか?」

「はい。」

電話を切った。



とにかくこわかった。

「活動」の2文字を口にするということはおそらく私のYouTubeを知っている。

そして理由も述べず面談と称し会いたがる。

最後の

「今も〇〇〇在住ですか?」

の一言で私の居場所を特定されそうになった。




するとすぐにショートメッセージが入っていた。



「〇〇総領事館です。また電話します。」

身の毛がよだった。

すぐ韓国領事館の電話番号を調べた。


すると先ほどかかってきた番号は全くの別物だった。



(もしかして朝鮮総連側が韓国領事館になりすまして俺に近付いてきてる?)



私は普段朝鮮学校での思い出話をYouTubeに投稿している。

去年の夏頃、朝鮮総連が私が通っていた朝鮮学校の高校の校長に

「パクユソンのYouTubeをどうにかしろ。」

朝鮮学校の高校の校長は

「今はどうにも出来ないからとりあえずほっといてる。」

と言っていたという噂を耳にした。

自己防衛のためにYouTubeでこのお話を投稿したが、私がその噂を耳にするもっと前から周りの朝鮮学校出身者達はその噂を知っていたらしい。

というのも朝鮮学校出身者の在日コリアンコミュニティは狭い小さい村のような場所なのですぐに噂が広まる。

もし面談に応じていたとして、待ち合わせ場所に1人で行くとする。

そこに朝鮮総連側の人間が4〜5人待ち伏せていたとして、私を車に強引に乗せて出発するといったことがもしあれば私の人生が終わる。

「VIVANT」を観たばかりだったので私が主人公の世界線の妄想だけが膨らんでいった。

そんな時ふと思った。




(もし韓国領事館の方じゃなかったとしたらショートメッセージ送ってくるかな?)


「〇〇総領事館です。また電話します。」


足がつくようなことを韓国領事館以外の方がするとは思えない。

少しだけ安心したがまだ正体は分からない。

とりあえず面談に応じなくてよかった。



韓国領事館に

「もしもし、先ほど〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇という電話番号からお電話をいただきまして、韓国領事館の者と名乗っていたのですが、そちらにいらっしゃいますでしょうか?」

という電話をかけようとした。

ホームページをチェックすると17時で営業が終わっていると記載されていた。

しかし、韓国領事館と名乗る方から電話がかかってきたのは17:30だった。



どんどん怖くなってきた。



韓国領事館の方じゃない可能性が浮上してきた。

営業終了後の17時以降も電話対応していると記載されていたが、事件事故など緊急状況発生時の非常連絡先だったので次の日の朝一でかけることにした。

友人との散歩を終え帰路についた。

まだ韓国領事館の方かどうか分からない。

もしかすると朝鮮総連の方や北朝鮮サイドの人間が韓国領事館の方になりすまして私に近付いてきてるのかもしれない。

「VIVANT」を観たばかりだったので妄想はどんどん膨らんでいった。

絶対に騙されてはいけない。

私が一人で全て明かす。

四方八方確認しながら普段と違うルートで家に帰った。

気分は堺雅人さんだった。

家族にも電話で事情を説明した。

「一応気をつけて帰って。」

無事に家に着くことが出来た。

その日の夜は不安で眠れなかった。

もしかすると韓国領事館の方ではないかもしれない。

来るところまで来たかもしれない。

絶対に私が一人で全て解決する。

就寝時も私の身体に堺雅人さんが憑依していた。




朝を迎えた。



9時から韓国領事館に電話をかけられるらしいので9時に電話をかけた。

肉声の証拠が必要だと思いiPadで録音しながら iPhoneで電話をかけた。

「もしもし、昨日の夕方に韓国領事館と名乗る方からお電話をいただいたパクユソンと申します。〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇という電話番号からお電話をいただいたのですが、韓国領事館の方の電話番号でしょうか?」



「いえ、知りませんよ。」



「本当ですか?」

「はい。どのような要件で電話がかかってきましたか?」

「パスポートがきれてますけど大丈夫ですか?という内容でした。」

「〇〇〇さんですか?」

「違います。」

「〇〇〇さんですか?」



「違います。あと、何度も面談をしたいとおっしゃってました。」



「あ〜。お電話かわりますね。」


「もしもし、パクさんですか?〇〇です。」

昨日電話をかけてきた方が韓国領事館の方であることを確認出来た。




なぜ前日にかかってきた電話の番号が韓国領事館の番号ではなかったのか聞くと、仕事用の電話でかけたかららしい。


韓国領事館の番号でかけてほしかった。


韓国領事館の番号からかかってきていたとすれば、こんなにこわい思いをしなかった。


韓国領事館の方であることは分かったが、パスポートがきれただけでわざわざ電話がかかってきたこと、何度も断っているのにも関わらず面談の誘いをしてきたことがどう考えてもこわかった。


(自己防衛のためにYouTubeで話そう!)


すぐ動画を撮ってYouTubeに投稿した。



「韓国領事館から電話がかかってきました。」



タイトルのインパクトもありかなり再生回数が伸びた。

それから約3週間後の2月某日。

友人と京都観光をしていると、韓国領事館の番号から電話がかかってきた。



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