past.2

どうやら双子たちがお話しているようです。

アルベルト:ねぇねぇ、今日はどうやら僕たちのお話らしいよ。
カミュ:そうみたいだね。
アルベルト:上手くしゃべれるかな。
カミュ:大丈夫だよ。
アルベルト:そうかなぁ。
カミュ:そうだよ、意外と心配性なんだね。君は。
アルベルト:うん。不安になっちゃうんだ。最近、風があまり吹いてないだ                         ろ?そういう時はなんだか、うまくしゃべれない氣がするん                        だ。
カミュ:うん。わかるよ。だって僕たちは双子だからね。
アルベルト:…。そうだね。

カミュ:多分うまく話そうとすることがダメなんじゃないかな。思い込みっ               て厄介だからね。
アルベルト:僕は思い込んでいるのかな?
カミュ:そうさ、みんなみんな自分が間違ってはいないんだと思い込みたい                 から生きているのさ。本当に厄介だ。生きている意味なんかありや                 しない。全部幻想なんだ。
アルベルト:じゃあ、人間は愚かだといいたいの?
カミュ:そこまでは言わないよ。僕は優しいからね。ただ、ときどき可愛ら                 しくなってくるよ!どうしてあそこまで非合理的な選択ができるの                 か。
アルベルト:そうだね。彼らは神じゃないからね。
カミュ:でも、彼らは神を信じている。ここは地球だからね。

アルベルト:そうだね。今日はゼウス様のお使いだからね。でも楽しいな!
カミュ:そうだね。マーキュリーにはない制約がワクワクするね。
アルベルト:新しい世界を知ることは、僕たちの役目だからね。
カミュ:うん!僕たちが走り回って世界をキラキラさせてるんだもの。もっ                 と感謝してほしいよね。
アルベルト:君は、感謝されたいの?
カミュ:いや、感謝するふりをしてほしいだけさ。どうせ出来っこないよ。
アルベルト:幻想だから?
カミュ:そう、幻想だから。
アルベルト:ふーん。そういうものなの?
カミュ:君だって本気でここが面白いなんて感じてはいないだろ?
アルベルト:…。面白いふりをするのも大事かなって。
カミュ:わお!人間みたいなことを言うんだね!
アルベルト:だってもう5分も地球にいるんだよ?僕、なんだか疲れちゃっ                          たよ。
カミュ:ごめんごめん。そうだね。分からなくもないよ。
アルベルト:君って優しいんだね。
カミュ:うん。優しさって大切さ。より良い世界のために。

アルベルト:さっき小さな女の子が僕に優しくしてくれた。お花をくれた                         んだよ!僕、感動しちゃった!とっても嬉しかったんだ!なん                        だかまだ大丈夫、って思えてくるよ。一つのドラマみたいだっ                        た。
カミュ:…。それはよかったね。でもそれは優しさなんかじゃない。
アルベルト:え?じゃあ何なのさ。
カミュ:イメージ。優しさのイメージ。実態じゃないんだ。
アルベルト:そうかぁ…。君の話はいつだって難しい。哲学的なんだね。
カミュ:そうかもね。宇宙を内包しているからね。

アルベルト:誰かに理解されたくないの?
カミュ:されたいさ!もちろん!
アルベルト:じゃあ、もっと物事をシンプルに—————

カミュ:究極にシンプルだから誰にも理解されないんだ。そう、本当に誰も                 僕のことなんて理解してはくれない。いつだって変わり者扱い。僕                 は僕なりに考えているだけなんだ。ちゃんと理屈だって説明してい                 るのに、まるでみんな言葉がわからないみたいに、疑いで濁ったネ                 イビーの瞳を僕に向けるんだ!それがうんざりなんだ!だから誰に                 も話したくなんてないんだ。もう傷つかない!と誓ったばかりなん                 だ。

アルベルト:… 泣かないで。涙がもったいないから。
カミュ:… 君って優しいんだね。
アルベルト:ははは!そうだね。君のいうところの抽象的にはね。
カミュ:はは…。
アルベルト:じゃあ、いつも虚しいんだね。何をしても満たされなくて、幸                        せになれないわけだ。そして君はその理由を知っている。ちゃ                        んと向き合って来たんだね。
カミュ:うん…。いっぱい頑張ったんだ。本だって沢山読んだんだ。
アルベルト:うん。
カミュ:僕の心が間違っているの?それとも、僕の存在が正しくなかった                     の?本当に色々なことが分からないんだ。僕が君だったら分かった                 りするのかな。
アルベルト:僕たちは双子だから、少ししか分からないさ。要は、溶けてし                        まいたい気持ちなわけか。
カミュ:そうなんだ。何もかもを溶かしてしまいたいんだ。
アルベルト:チョコレートのように?
カミュ:チョコレートのように。
アルベルト:そっか…。じゃあ、もうマーキュリーに帰ろう。きっと何もか                        も元通りになるはずだよ。二人でゼウス様に新しい翼をもらい                        に行こう!そうしたら ——————


これは、自分たちが双子だと思っている子たちのお話。




*次回の更新は9/1になります。
8月、お付き合いいただいてありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします!


憂鬱な月曜日が始まる前に、私の記事を読んで「あ、水曜日くらいまでなら、なんとか息出来る気がしてきた」と思っていただけたら満足です。サポートしていただいたら、大満足です。(笑)