身体と心を考えるー聖地熊野の漢方薬屋①男の更年期
たいそうなタイトルで恐縮ですが、思いつくまま健康・身体・食事、そしてアタクシ的「熊野」、熊野しんぐうフィルムコミッションで映画やロケについて感じたことなどについてツラツラと記して参ります。
さて第一回目は「男の更年期」。
わかりにくい男の更年期
昔から女性には閉経前後を更年期と名付けていますが、近年男性にも更年期があり、かつその障害も起こることが解ってきました。私自身も時々更年期かなと思うこともあるお年頃となりました。
男性には女性のように、閉経時のようなはっきりとした身体の変化が現れず、また個人差が大きいことから、男性更年期障害をわかりにくくしています。
女性の場合は、閉経前後の卵巣の急激な機能低下(女性ホルモンの一種エストロゲンの分泌低下など)によって起こると考えられていますが、男性の場合、加齢によって血中のホルモン(テストステロン=男性ホルモンの一種)値の低下が原因とされています。
ホルモン低下の原因は、仕事上のストレスや肥満、運動不足なども間接的な理由とされています。発症時期は、40代の中頃から50代の前半にかけてが最も多いのですが、中には30代でもこの男性ホルモンが不足すると、同様に発症するそうです。
男の更年期、その特徴
男性ホルモンの減少は、集中力・意欲が低下し、筋肉もよわくなり、さらに排尿機能や男性機能も衰えてきます。加えて理由なく気分が落ち込む、やる気が出ない、何となく身体がだるいなど心の病気とも言える不定愁訴も起こります。生理的には、精力減退があらわれます。
1992年頃、テレビにもさいさい登場していた有名漫画家が発症し、その事実を公表、男性にも更年期があると広く知られるようになりました。
男性更年期の場合は、テストステロンなど男性ホルモンの減少が拘わっていること、症状は不定愁訴(倦怠感、理由なくやる気が出ない、気分が落ち込む、耳鳴り、めまい、不眠など)や精力減退であると先述しました。
テストステロンですが、この働きは、筋力・骨格を保ち男性特有の体つきを作り、精神活動の活性化や男らしさを生み出すもの。加えて、動脈硬化や細胞の老化などを低下させる作用もあると言われています。分泌のピークは20歳代で、その後加齢とともに減少し、50代では12%、60代、70代では28%に減少が見られるそうです。困ったことに、男性更年期の9割を超える人ED(勃起不全)あるそうです。
その治療法
近代医学ではホルモン補充療法や抗不安薬などが使われます。ホルモン補充療法では発がん率が高まるとも言われています。
漢方の治療では、動物生薬を用いることが多く、鹿茸(若い鹿の袋角)や地黄、人参、ビャクジュツなど配合した「天好」、あるいは古来からの処方でサンヤク、ブクリョウ、ブシなどを配合した漢方を使います。併せて用い、不定愁訴を伴う精力減退に高い効果を上げたこともあります。
ストレスが男性更年期の発症に大きく関わっているので、生活を変えると治療にも大きな効果が現れることがあります。趣味を持つ、定期的に運動をすることなども必要でしょう。また肥満や高血糖なども、精力減退とかかわりますので、その治療も同時に行うことが望ましいです。
食事療法では、「セックスミネラル」とも言われる亜鉛を多く含む牡蠣、新陳代謝を活発にするスコルジンを含むニンニク、魚類ではイワシ、他には蓮根、黒ごまなどが、東洋医学的な意味で、精力減退に用います。ただし、一品だけを摂るのではなく、バランスを考えながらとる必要があります。
著者略歴:1956年新宮市生まれ。漢方の森本薬店経営。漢方相談薬局薬店の組織「全国連合清心会」副会長兼学術講師。元熊野大学事務局長(作家中上健次さんが設立した市民講座)を25年担当、熊野しんぐうフィルムコミッション代表、現在新宮市観光協会専務理事。
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