ラマダンが教えてくれたもの
Yusiです。久々に書きます。
モロッコのカサブランカに移住して半年経ちました。そのうち2ヶ月がロックダウンというなかなかない経験をしています。
そして、世界の2割の人口を占めるイスラム教コミュニティーは4/24ぐらいからラマダンのスタートしました。
ラマダンとは何かはウィキペディアが教えてくれるので、ここで書きません。「異邦人」として感じた価値観の衝突や気づきを書きたいと思います。
先日、家から一番近いスーパー「Marjane」に夫と買い出しに行きました。レジで並んでいると、後ろの方で鉄の玉が床に落ちるような鈍い音が聞こえて、振り返る。
年配の男性の方が倒れて意識がない。周りには人だかり。
私は、恐らく断食で倒れちゃったんだろうなと頭の中でゆっくり眼の前の状況を理解し始めた。
男性は少しずつ意識を取り戻し、お店の職員だと思われる若い女性が、年配の男性の頭の後ろに正座して、男性の頭を自分のももの上で休ませながら誰かが持ってきた氷の袋でぶつけてしまった顔の左側を冷やしている。
お店の人やお客さんが周りに集まってきて、いろんな飲み物を差し出して「飲みなさい」と言っている。ペットボトルの蓋を開けて、男性の口のそばまで持ってきて、「飲みなさい」と言っている。飲むヨーグルトやミネラルウォーターやコーラーなどいろんなペットポトルが男性の周りに置かれていく。
年配の男性は頑なに水を口に入れることを拒む。誰もそれ以上水を強制することはなく、ミネラルウォーターを顔や手にかけてあげて、男性の話相手になってあげている。30分後、男性は一緒に買い物に来ていた息子と一緒に帰宅。
色々モヤモヤと考えていたことを整理したい。
・人に迷惑をかけることで生まれるもの
日本だと何かしたいことが会った時に、必ず「人様に迷惑かけないか」と自問自答するだろうが、ここではそんなことを常に自問自答して行動基準を決めている人はほぼいないんではと思う。
「迷惑をかけられた」側も、善行のチャンスだと思って寄ってたかって困っている人を助ける。助けられた方は申し訳ないと思わずにそれをありがたく感謝する。女性店員が年配の男性を膝枕介抱してる時に、気まずい・ピリピリした空気を全く感じないのです。男性も女性も楽しそうだから。周りのお客さんは我関せずでも、野次馬でもなく、携帯で動画取ることもなく、挨拶したり一緒に笑ったりしてる。
このシチュエーションを東京の通勤ラッシュ時に置き換えてみたい。地下鉄の駅のホームで気分が悪くなる。駅の構内で最高に気持ちいい寝ポーズで横たわり、少し回復してきたら見知らない人が自分の用事を放り出して世間話に付き合ってくれるようなイメージである。私の経験上まずありえない。
何がそんなに違うんだろう?
・命を落とすことよりもっと最悪なことがある
生まれた時から自動的にムスリムになった旦那から言われれば、男性が水を飲むのを拒む行為はそこまで保守的なムスリムじゃなくても理解できるとのこと。理由は死ぬんだったら、天国に行きたいから。だそう。
「死ぬんだったら、天国に行きたいから。」をもうちょっと咀嚼したい。
年配の男性は、成人してる息子もいて、家族を養うという義務はすでに果たしているという前提。ムスリムは、死んだら最後の審判まで眠り続けて、最後の審判で天国に行くか地獄に行くかが決まるということを信じている。ラマダンをちゃんと実行できたかは最後の審判で天国に行く判断材料の一つとしてかなり比重が高いから、ここできちんとポイント稼ぎをしておきたいという心理だと勝手ながら解釈した。
欧米や日本のような先進国ではこの状態だと、命を落とすことが最悪のシナリオでそれを阻止することが絶対的な正義だと考えられるのでは?そして、医療従事者の判断で水分補給の判断が降れば無理にでも水を飲ませるのではないかと思う。
こっちでは先進国に比べると人が結構簡単に死ぬ。交通事故や病気で。こっちの世界にきて、トラックに引かれた屍体を人生で初めて見たし、義理の姉の旦那さんも若くして亡くなっている。でも自殺は非常に非常に少ない。
何がそんなに違うんだろう?
・意志の強さが働くポイントが違う
モロッコにいると、現地の人に対してだらしない、自分に甘いという感情を抱くことが今まで何回もあった。お釣りをこっちの表情を見て渡す額を変えてこようとする店員、強気な物乞い、賄賂を求めてくる役所の職員。
それなのに、どんな社会ステイタスの人でもみんな断食という大変な苦行とやり遂げる。
私も断食やってみたけど、全く続かない。他人に迷惑かけてないしちょっと食べるか。って簡単に思っちゃう。(やっぱり「迷惑かけてる」かが判断基準になってる・・・)でも、どんなにお金が欲しくてもおそらくお釣りをちょっと多めにもらおうとは思わない。
何がそんなに違うんだろう?
まとめ
価値観が本当にまじで違いすぎるので、モロッコにいることを思い存分楽しみたいなら、一旦まず今までの価値観を捨てるしかないと思う。
今までの価値観にしがみついてると、どうしても上から目線で色々見ちゃうから、悪いところばっかり目について結果文句ばっかりで楽しくない。
ロックダウンが終わったら、色眼鏡を外して現地にもっとディープダイブしたいと思う。