元気ないけど「はい元気です」
コピペでしか話せないのがもどかしい。ビジネスマナーという大枠に存在する言葉をコピペしてメールを送る。言葉と感情が乖離して気持ち悪い。
小学生のころ、担任の先生が毎朝出欠確認をしていた。それは先生が名前を呼び、生徒が返事をしたあと自分の体調について報告するというものだった。
大体の人は「はい元気です」と答えた。私は常に体調が悪かったので「はい頭が痛いです」「はい喉が痛いです」とその日のコンディションを的確に伝えていた。
「はい元気です」「はい元気です」「はい元気です」「はい元気です」「はい頭が痛いです」
小気味良いリズムを打ち切って伝えることは、私の頭をより一層強めた。
「えー、また?」
教室のどこかで声がする。大縄跳びに引っかかったときのようでバツが悪かった。
小学2年生のある日、担任の先生が欠席した。隣のクラスの先生が代わりに出席を取ることになった。ベテランでテキパキしているその先生は、いつもの1.5倍くらいの速さで名前を呼んだ。なんて答えたらいいのか。体調が悪いと言ったら過剰に心配されるかもしれない。めんどくさがられるかもしれない。逡巡している間も、点呼は進んでいく。
「はい元気です」「はい元気です」「はい元気です」「はい元気です」「はい元気です」
バクバクする心臓と裏腹に、私は「はい元気です」のデビューを迎えた。私が発したあとも脈々と刻まれるリズムを聴きながら、いつもこれで良かったんだなと思った。
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