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Jリーグ 観戦記|美しき進化|2021年J1第3節 川崎F vs 徳島

 世界と日差しが重なる。春の訪れを感じた。バックスタンドから眺める等々力。刻々と色を変える夕空はこの星が鳴らす鼓動のようだ。

 川崎のサッカーに魅了された。この日も。変幻自在の戦法で相手に穴を開けていく。田中が下がる。家長が張る。絞る。それは一つの風景でしかない。ボールを中心に周囲の選手たちが近づき、同時に離れていく。必然的に生まれる穴。そこにスポットライトが当たり、選手たちが一手を投じ、ゴールへの道筋は作られる。

 ボールを奪われても、川崎は守備で相手を圧迫する。レアンドロ・ダミアンのプレスは攻撃的だ。相手から時間を削り取っていく。徳島がボールを下げると、ジェジエウの咆哮によってディフェンスラインが上がる。横一線。徐々に、徐々に。ボールを搾り取るようなディフェンス。この場所と角度から、その息遣いを感じた。

 徳島の組み立てに、リカルド・ロドリゲスの片鱗を見た。選手が立ち位置を変え、ボールを前へと運んでいく。その過程の中で、藤原は左を中心に最も過酷な空間でボールを保持し、時間を作った。しかし、ゴールとの間には距離が横たわる。そこに川崎の質が差す。

 そして、この試合は旗手の試合と言える。どんな試合か。適応力を示した試合だ。ボールを左サイドラインで受け取り、ボールを前進させる。奪われない。内へと入り込み、右へと流れながら不規則な気流を作り出す。守備でも徳島を密閉した。チームの求めに自らの才能を昇華させる。それは誰しもが成し得ない。美しき進化がここにある。

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川崎F 2-0 徳島

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