出会いの話

目の前にはドリンクバーから選出したジュースと山盛りのポテト。
戦いの準備は整った。
窓の外は午前中の雨で不気味な程に冷え込んでいる。
重々しい空気の中、ホラガイの音が鳴り響く。

「出会いないよなあ。」


破局ボーイの悩みごと。ぼくも同感だ。
ぼくたちは知識に富んだ理系大学生。
しかしながら、我々の扱う専門書に女の子と出会うための公式は記載されていない。
なぜなら、21世紀になっても最適解が導き出されていないのである。
そのため、過去の成功体験を振り返る。
今までの学校というものが、いかに出会いの場としての機能を果たしていたか。
自ら行動を起こすことの重要性をなんとなく認識した。


話は変わり、お互いの元カノ紹介の時間が始まる。
グラスの中身とポテトはちょっとずつ減っていく。

目の前の毛深ゴリラはポテトを食べながら画面をスワイプしている。
どうやらフラれた反動でTinderを始めたらしい。
「出会いないかなあ。」

ぼくはゴリラの手元が空いた隙に、画面下部の青い星マークを押してあげた。


ゴリラと解散後、彼が傘を持って帰ったか気になったのでLINEで聞いてみた。
その返信に気づいたのは家に帰ってから。
「持ち帰ったよ」


今度は、かわいい傘で聞きたいね。


20200308 出会いの話 Yusei Komori

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