起業で提供する価値=これまでになかったものか、あるもののアップデート。
事業を始めるということは、顧客を創造すること、である。P.F.ドラッカーの有名な言葉だ。
では、どこに顧客が居るのか?となる。これまでに無かった新しいサービスを提供する産業を創る。これは、大変、骨が折れる。だが、新しいゆえに、ブルーオーシャンであり、ファーストペンギンは大きな富を手にできる可能性がある。プラットフォームを創る側のポジションが得られやすいからだ。私が起業した国内エビ陸上養殖事業はここに該当する。ならば、新しい産業が国内に根付くには、どんなデザインが最適か?を考えた。この結果、全国に42万ヘクタールある、といわれる耕作放棄地を使えば良いのではないか?と考えた。これが、最初の一歩だった。
知らぬ者の強み。第一原理(First Principle)から考えた結果だ。だが、よくよく知ったら、農地に手を出すのは、私が農政をよく知らなかったからだ。知っている者は手を出さない。なぜなら、農政ほど、戦後レジーム(Regime:体制・政治体制)の影響が色濃く残る産業は無い、といわれる。つい最近まで、農地は農業者しか、持てない、というルールがあった。つまり、親が農家でもなく、新規に農家になりたい者がなれない仕組みが講じられていた。さらに、法人が農地を持てるようになったのも最近である。現在では農地所有適格法人ならば、農地の所有者になれるが、この法人の出資者の過半は農業者である必要があり、取締役の過半も年間150日以上、農業に従事している農業者であることが求められるため、一般法人は農地を持てない構造となっている。
知らぬ者の強み、といえば聞こえはいいが、私は不動産事業者などが手を出さない農地を、陸上養殖事業のために確保・取得する、という荒波に漕ぎ出した、ということになる。だが、私には「私がやってダメなものは、誰がやってもダメ」という根拠のない自信がある。山があるなら、登るまで、という精神で突撃した。
結果として、足掛け6年かけ、2024年10月、農地関連法規(農地法(1952年制定)、農振法(1969年))を突破し、農地を取得するに至った。
2021年からは、一時転用(いずれは農地に戻すことを前提に、農業以外の目的に使用する許可)で、バナメイエビ陸上養殖を行わせてもらっていたが、これが正式に恒久転用、となった訳だ。このあたりは、多くの方が知らない、ディープな領域となる。おいおい、このブログに書き留めることとする。
表題に戻るが、後者の「あるもののアップデート」には、着想と技術が求められる。あるものとは、大手によるサービスの提供がすでにされているものである。大手とは、24時間稼働の生産ラインを持ち、100個作るならば、1個あたり単価が10,000円のものを、100円(1/100)で創れるような生産力を持った存在のことで、スタートアップが簡単に太刀打ちできる相手ではない。ただし、生産ラインを持ってしまっている、ということは、より良いサービスがあっても、方向転換が難しい、という弱点もある。巨象に立ち向かうには、ズバリ、技術である。この点も、おいおい述べることとする。