阿木譲とVanity Records
またまたニッチな音楽記事を書いてみようと思う。
今回は阿木譲とVanity Recordsだ。
名前くらいは聞いたことがある人もいるかもしれない。
東に生悦住英夫のP.S.F. Recordsあれば
西に阿木譲のVanity Recordsあり
ロック・マガジン創設者
阿木譲といえば、ロック・マガジンという図式が成り立つ。
私はヘヴィ・メタル畑で20年近く音楽を聴いてきたが、雑誌が大きく影響力を持ち始めたのは1980年代以降だという認識がある。
ヘヴィ・メタルでいえばBURRN!誌があるが創刊は1984年10月で、前身はミュージック・ライフである。
rockin'onの創刊は1972年であり、ロック・マガジンの創刊は1976年である。
ネット全盛期である現代と比べ物にならないくらい情報の少なかった時代である。
ロック・マガジンと銘打ってはいるが、実際は今カテゴライズされるロックという垣根をはるかに超えたものであり、有名無名玉石混交の雑誌であったそうだ(残念ながら私は読んだことがない)。
今でいうファンジンに近いものではなかろうか。
そんな中立ち上げられたのがVanity Recordsである。
名前を知っている人の中でも実際に当時、Vanity Recordsの音源を聴いたことがある人はごくわずかではないかと私は推測する。
なぜならば、音源そのものがレア中のレアだったのだ。
そういうわけで、伝説のレーベルとしてVanity Recordsはその名だけが何十年も宙に浮いた状態でいたのである。
Boxセット発売の機運
その時は突如としてやってきた。
きょうRecordsのホームページに紹介されたのが2019年7月22日で、発売日は約3ヶ月後の10月21日となっていた。
情報が解禁されてから、どこで入手できるのか?
中々その情報が得られないものだからずっとやきもきしていた。
そうしているうちに、Forever Recordsを主宰している東瀬戸氏のツイッター(だったと思う)に突然、「これから2~3時間の間だけBoxセット予約を受け付ける」と投稿があった。
このタイミングしかない!と感じた私はすぐさまメールし、予約することに成功した。
その後京都のMeditationsからも極少数販売されたが、限定500部でどのくらいの数国内で出回ったのかは定かではない。
手に入れられた時の嬉しさは、言葉に表すことのできないものだったことをよく記憶している。
オリジナル盤は入手不可能なくらいのレア中のレアが一堂に会している様は、壮観と言っていいだろう。
中でもお目当てはVanity Records第一弾のDADA「浄」と第二弾のSAB「Crystallization」だった。
この2枚は特にVanity Recordsというものを良く表していると私自身は思っているが、それはまた機会があれば語りたい。
その後
VANITY BOX発売以降、単発での再発や幻のテープ音源再発など発掘が進んだ。
あれからもうすぐ6年経とうかというところで、今だから言えることだが、こんなに簡単に聴けるようになっていいのだろうか?ということだ。
当然ながら素晴らしい音楽であり、是非とも世間に広く聴かれるようにしていくというのはものすごく大事なことだと私自身は認識している。
今や音楽はサブスクで聴くのが主流であり、フィジカルは本当に好きなものだけ入手するというようになってきている。
だが若い世代以外はそうではない。
自分の好きな音楽に出会おうにも出会えない時代が長かった。
聴くことすらも難しい時代があった。
その時代の音を是非感じてほしいと思う。