【丸ごと文字起こし】美術鑑賞プログラム【ラ・ジャポネーズ】
今年の春から、プライベートレッスン的なオンライン鑑賞会を行っています。
高校生1人と、小学生の親子の、2組3人というメンバーで、月1回、一つの作品を見ながらいろんな鑑賞のワークを行っています。
時間は1回約90分。対話型の鑑賞で互いに感想を聞き合ってもらったり、絵を見ながら絵を描いたり、鑑賞の途中に散歩に出てもらったり、瞑想やマインドフルネス的な時間を挟んだりと、毎回ちょっと変わった作品へのアプローチをいろいろと体験してもらってきました。
特に最近は作品の捉え方やイメージの広げ方の中に、それぞれらしさがのびやかに伝わってくるようになったと感じています。
先月も会を行ったのですが、もうこちらのファシリテーションは必要なく、3人だけで豊かな鑑賞ができていてとても面白かったので、こちらで紹介したいと思います。
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鑑賞作品:モネ「ラ・ジャポネーズ」
◆A3用紙に出力した作品画像を部屋の壁に貼り、それぞれで5分鑑賞して感想をメモします。その後、3人で感想を以下のように共有してもらいました。
参加者:1(小学生)・2(高校生)・3(1の保護者)
3:これを見て何か感じたこととか、発見したことがあったら教えてもらってもいいですか?
1:この人は日本をイメージして描いてるんだろうけど、顔が日本人の顔っぽくないなって思って。それで普通の日本の人だったら黒髪のはずなのに、この人は金髪で描いてて、私には着物もちょっとドレスみたいに見えて・・
だからそこがそうやって西洋の人みたいな人が描いてて、金髪とかそういうヨーロッパの人みたいな顔になってるんじゃないかって・・描き慣れてるからそうなったんじゃないかなって思いました。
3:今聞いて思ったのが、1さんは「ヨーロッパの人の絵を描いてる」って言っていて、このヨーロッパの人は「ヨーロッパにいるヨーロッパの人を描いた」のか、「日本にいるヨーロッパの人を描いたのか」どっちかなって思ったんですけど、どういう風に思いますか?
1:う〜ん。頭ではわかってるんだけど言葉でうまく言えないみたいな感じです。
3:なるほど(笑)。2さんは何か質問とかありますか?
2:着物のどの辺りからそう思いますか?私も着物は確かに日本の物っていうよりは、ちょっとドレスっぽいなって感じがしたんですけど、どのあたりからそう感じましたか?
1:普通の着物って、下の裾みたいなところは何て言うんだろう…この絵の服は下の方が一気に開いていく形になっているから、それがちょっとドレスの下の部分もそんな形だから、そこがドレスっぽいなって思いました。
2:確かに私も、下の引きずっているところが着物と違うなって思いました。あと、さっきこの外国の人が、ヨーロッパにいるヨーロッパの人か、日本にいるヨーロッパの人かっていう話があったと思うんですけど、何となく私はこれを見た感じ、たぶんそういうのはないとは思うんですけど、浅草とかで外国の人が多いじゃないですか、その着物のコスプレみたいな写真を撮っているような、そんな浅草のイメージが浮かびました。
3:私もちょっと浅草っていうキーワードが出てきました(笑)。1さんは、今話ししてた中で何か見えてきたことありますか?
1:私も何か浅草のコスプレみたいなそういうのが・・・多分コスプレっていう言葉は、(この絵が描かれた時代や国には)無いんだろうけど、もしかしたらこの時代でもコスプレに似た何かがあるんじゃないかって思って、ちょっと面白いなって思いました。
3:私も浅草ってのは、やっぱなんかそこはなんかちょっと嘘っぽいじゃないけど、そういうのがあるのかもしれないなって・・次は2さんお願いします。
2:やっぱり外国の人、金髪の人が和服を着てるっていうのが、そもそも最初に見た時違和感を感じたっていうのと、あと、着物の人みたいな柄の部分の、持っている腕が単純に布の柄じゃなくて、少し立体的に見えるなって思いました。
いつだろう江戸時代ぐらいの「見返り美人図」と、すごい格好が似てるなって思って・・でもあれと違うところが、あれは単純に真顔って感じですけど、この絵は微笑んでるなって思いました。
あと、うちわがいっぱいあるんですけど、それの柄がちゃんと和風で、そこが日本っぽいなって思ったんですけど、なんかやっぱりコスプレと言うか、外国人が日本好きでやってるんだろうなって思ったのが、日本人はそんなうちわを壁に飾ってる人はそういない感じがするので(笑)、なんとなくそこが日本大好きな感じでやってるみたいな・・イメージを感じました。
3:1さんは今の話を聞いて、何か質問とか聞いてみたいことありますか?
1:ほぼ感想なんですけど、「見返り美人図」は真顔だけど、こっちはちゃんと表情があるってところが、{あ、そこもなんか違いじゃん!」って思って・・
3:うん。確かに・・
1:着物の柄とかも似てて、ポーズも結構一緒なので、もしかしたら真似したのかなみたいな・・そこはちょっと気になったところです。
3:私も何か「見返り美人図」に似てるねっていうの聞いて、確かにそうだなって思ったんだけど、表情まであまり意識が入ってなくて、ああ確かにあの人あんまり笑ってないよなって、この人はすごく笑ってるけどって、そういう見方があるんだなって思いました。
で、さっき1さんが、着物がドレスに見えるって言った時に、2さんもドレスっぽいって言ってたけど、私は着物にしか見えなくて・・2さんはどういう風に、どういうところがドレスに見えたのかなって、私は知りたいなって思ったんですけど。
2:なんだろう昔の十二単みたいなのは、確かに(絵と同じで)裾を床に引きずってる感じがするんですけど、やっぱり一般人が着るような着物って、そんな引きずるようなものでもないし・・
あと着物って、浴衣よりはちょっと分厚いけれど、そんなにモコモコしてる感じじゃないなって思って、この絵を見るとこの下の引きずってるのが「もこっ」としてるし、そもそも後ろに引きずってる感じが、なんとなく西洋っぽい感じがして、それでなんとなくドレスっぽいなって思いました。
3:分かりました。ありがとうございます。
私が気づいたことは、私はこれが着物って言うか、打掛?・・結婚式の時に花嫁さんが最後に着る、打掛・・ちょっと布団みたいな、着物みたいなのに見えて、そういうのってどっちかって言うと、結婚式の時とかにきちんと髪の毛を結ったりするんですけど、この人は金髪で、くせっ毛で・・
日本の人は、こういうの着るときは、どっちかって言うと可愛いっていうより、美しいっていうのを意識する気がするけど・・でもこの絵では可愛らしいっていう感じが出ていて・・私はこっちの方が、なんとなく見ていて気持ちがいいなって思いました。
で、このたくさんのうちわは、多分これは本当に日本にあったものじゃないかなって。で、床はゴザを敷いているんじゃないかな。で、これも本当に日本のものじゃないかなって思いました。
でも、この日本の着物のとか、うちわとかゴザっていうのは、どうやってこの人は手に入れたのかなって思って・・もし日本に住んでいたら、さっき2さんも言ったけど、こういう飾り方はしないと思うし、なんか日本の飾り付けって、足し算より引き算の飾り付けってイメージがあったから、私はこの人はヨーロッパかどこかわからないけれど、外国に住んでいる人が、日本を盛り込んだ絵を描いたんじゃないかなって思いました。
で、ポーズが日本舞踊を意識しているポーズなのか、それともこの格好が日本ぽいかなって思って作ったポーズなのかはわからないけど、なんとなく日本を意識しているポーズかなって思いました。
あと、着物が打掛に見えたんだけど、結婚式に着るようなイメージがあって、でも柄はあんまりおめでたいとか、女性を綺麗に見せるような柄とかじゃなくて、なんか強そうな男の人が写っていて、何でこの着物を着てるのかなって、何のための着物なのかなっていう風に思いました。
外国の人が、日本の文化を好きになってくれるのは嬉しいけど、この人自身は日本についてどう思ってるのかなって言うのと、さっきも出てたんですけど、浅草とか空港で売ってるペラペラ・テカテカの生地の着物もどきじゃなくて、ちゃんとした日本の物・・たぶん日本のものであろって言うものを着てくれているのが、よかったなって思いました。
1さんは、なにか聞きたいことありますか?
1:これも感想なんですけど、やっぱり2さんも言ってた(日本の人は)壁にうちわを飾らないみたいな、そこが何て言うんだろう・・ガチガチに調べて描いてるとかじゃなくて、「にわかファン」みたいな感じだなって思いました。
2:(笑)
3:私もなんとなくそんな気はします(笑)。
2:私も多分中2ぐらいの時に、美術の教科書にちっちゃくいろんな絵が載っていて、美術史を勉強した時に、この絵も出てきたんですけど、何となくその時も日本の人に憧れて、ちょっとやってみた!みたいな感じのイメージがあって・・今日よーく見てもやっぱりそんな感じがします(笑)。
3:そのなんか詰め込んでる感がすごい(笑)。
1:なんかもう、一か所の紙に全てを盛り込みましたみたいな・・
2:なんかさっき、もこもこの着物がないっていう話をしたと思うんですけど、確かに結婚式の打掛は、確かにもこっとしてるって思ったので、言われてみると確かに日本の着物かもしれないって思い始めました。
3:でも、私もそう思ったけど、でもなんで着物じゃなくて、普通着ないような打ち掛けをこの人は持ってるのかなっていうのも、ちょっと謎だなって思いました。
以上
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対話を聞いていると、相手の話をよく聞くことや、それをふと自分に取り入れてみること、自分の解釈を持ちつつ、それが変わってゆくのを楽しんでいるなと感じます。
また、お互いに質問し合いながら、相手から何が返ってくるか、どんなものが出てくるのかを面白がっているところも伝わってきます。
絵の解説や、ジャポニスムの話などもこの対話の後でしましたが、こちらの資料にあるような、この絵について語られている多くの部分は、すでに対話の中でいろいろ考察が始まっていました。
3人のそれぞれの解釈が対話の段階で立ち上がっていれば、多様な解説や資料をみても、またイメージが広がったり、資料などとは異なる解釈も生まれてくるのでは無いかなと思います。
ワーク的にはこの後でもう少しいろいろ行ったのですが、その紹介はまた次の機会に。