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yuka~告白からの大挫折~
yukaとの連絡が全く途絶えてしまった、冬休みの後半。
自分は「あの一件」から、安心しきっていました。
「yukaは、自分の傍にいる。もう何も恐れる事は無い。」
「あの二人の夜は神聖な夜だった。だから、二人は心配ない」と。
ただ、全く連絡が無くなったyukaを、バイトが忙しくて大変だなぁ。
何らかの形で、yukaをサポート出来れば。
三学期が始まる時に、何か出来ないかyukaに聞いてみようと思いました。
三学期の初日。
始業式の午後、yukaと教室で話が出来る事になり、二人だけが教室の窓際の
席に座って・・・。
ここまでは、今までと変わらない風景でした。
yukaは、いつもの感じじゃない。ただ黙っているけれど、オレに何かを
語ろうとしている。
オレは、それが何かを全く掴める事が出来ていない。
ただ、yukaのバイトが忙しい。そこで、オレが何か出来ないか?を聞こうと
していたんです。
yukaが、その沈黙を破って話しだしたのは、
「バイトの仲間といるのが、とても楽しい。」
「兄の勤めるバイト先の仲間に、大学生の人達がいる。」
「その中で、バイト以外でも色んな経験をさせてくれた。」
というものでした。
ただただ、オレが気掛かりになるのは、
「そのバイト先の仲間、大学生の人達というのは、男性なのか?」と
いう事以外にありませんでした。
オレは、
「それって男なんか?」と聞くと、
数秒うなだれた後に「うん」と小さな声で呟きました。
オレは「楽しいってどんな事していたんだ?」と聞くと、
バイト以外に、夜の街へ繰り出したり、休日には、その仲間達とテニスに
行ったり、ドライブに連れて行ってもらったり・・・。
そう。高校生のオレが出来ない=yukaにとっては大人の世界を見せられた
訳です。
オレは・・・そこに立ち打ちなんか出来る筈もない・・・。
落胆と共に、yukaに対しての怒りが込み上げてきました。
「どういうことなん!?それって、オレへの裏切りじゃないんか!?」
と・・・。
今にして思えば「裏切り」でも何でもない。
しかし、まだ経験浅き自分には、そういう言葉しか思いつかなかった。
そしてyukaも、その言葉にどう返していいか分からなかった。
いつものように。
緊張すると唇と下顎が震えるyuka。
手で口を押さえて、その手が小刻みに震えている。
その中でもオレは、
「なんとか言えや!!オレの気持ちはどうなるんや!!」
「オマエの事を、どれだけ心配してると思ってたんや!!」
矢継ぎ早に、オレはyukaを攻め立てたのです。
yukaは。
「今は・・・自分も・・・どう言って・・・いいか・・・分からない・・・。」と。
少しだけ目に涙を溜めているyuka。
それなのに、自分はyukaを口汚く罵っていた。
自分だけを正当化して、yukaがいかに汚いものかであるように。
オレは「もうええわ!!」と席を立ち、そのまま教室から去った。
今なら、ここまで言ったんだ。もう後には引く事は出来ない。離れるしか
無いという所まで、yukaを攻め立てた。
バンドの練習が終わり、深夜に自宅に帰るとオカンが、
「yukaさんから連絡来てたよ」と。
バンドの練習で、少し落ち着いた自分でしたが、
今思うと、女性に対しての慈愛など、全く持っていない、とても身勝手な
自分だったと思います。
yukaへ連絡すると、もう涙声どころでない。
泣き崩れたyukaが、ただひたすらに。
「ゆうき。ごめんな。ゆうき。ごめんな。」と、謝っている。
そこでも、オレはとても冷たい態度を取った。
「もうええよ。もうええから、連絡はしないでくれ。」と。
受話器を切って、オレは自分への挫折を味わったと思った。
高校生と大学生。この数年しか変わらぬ「年齢差」が、どれだけ自分に
辛い思いを持たせてしまったのか。
そして、自分の大事なyukaを、その環境の中に「盗られてしまった」という
初めて味わった「年齢の壁」という挫折でした。
今になれば。今だとすれば。
そう、この気持ちと感情から来る、yukaに対しての想いや感情が、全く
異なる事が分かる。本当に馬鹿な事をしたと思う。
その中で、ただ一つ。「オレとyukaを互いに弁護できる」とすれば。
互いに「失った幼少期を埋めるには、とても大きな経験」だったと。
オレはyukaであり、yukaは、その大学生の人達だったんだなと思います。
高校3年のエポックメイキングが「ズレ」てしまった二人。
その日、オレは答えの出ない暗雲のようなモヤの中に、唸りとともに落ちて
いきながら、眠れぬ夜を過ごしました。
ゆうさん