元カレの写真を消すとき
タイトル通りのことをした。
ずっと消していなかった元カレの写真を消した。
昨年2021年の年末、大学時代の友人に会うのとプチ観光をするために東京を訪れた。そのついで(という位置づけで)、東京で働いている元カレに会うことになった(というより、私から会わない?と誘った)。
別れたのは、2021年の3月とかで大学を卒業する少し前、社会人としての新生活がスタートする少し前のタイミングだった。出会いは留学先。今となっては現地で日本人が少ないという環境もあってだろうとは思うけど、すぐに意気投合した。留学から戻ってからは関西と関東で遠距離となった。遠距離恋愛を1年くらいしたが(3ヶ月に一回くらいしか会えてなかった)、就職も関西と関東で離れることになり、そのまま別れることになった。電話で別れたい旨を伝えられて、TOEIC受験後の会場で泣きじゃくったのを思い出す。3日くらい毎日電話で協議をして、結局別れることを心に決めて、東京に私が会いに行って最後に遊んで別れたのは、遠い昔のように感じる。
別れたくないとごねたのは私の方だったが、正直なところ私は付き合ってから一度も好きと伝えたことがなかった。それは恥ずかしいとかではなくて本当に好きかどうか分からないというところからきていた。今考えればひどい彼女だったと思う。人間的に尊敬していて一緒にいて心地良いのには間違いがなかったが、恋愛的に好きかどうかと聞かれるとはっきり答えられない状態だったと思う。今考えれば、あのときに彼が別れを切り出してくれたことは総合的に見て真っ当で、そうすべきことだったと分かる。その当時、心のよりどころを失うとか、楽しかった思い出から抜け出せないとか、他に好きな人ができてから判断すれば良いというような、短期的な視点でしか判断ができなかった私からすればやっぱり客観的で論理的な彼をすごいと評価せざるを得ないのだった。そんなところも尊敬していた部分だった。
そんな彼に、別れるために会いに行った3月ぶりに会うことにした。ケンカ別れをしたわけでもなかったし、ほんとにごくたまに連絡をすることもあった(付き合っていたときに旅行した場所が舞台のドラマやってるよとか、ほんとに気軽なことで)。これからも応援したいと思ってるし、私の写真も消したりしないからと言ってくれるような優しい彼だったから、東京に行くならまた会いたいと思っていた。お互い社会人一年目だし、いろいろ話せることもあるかなと思った。
まず、彼の家の近くの古びたお店でランチを食べた。本当はおしゃれなお店でイタリアンでも食べたいという気持ちだったけど、時間帯が微妙でそれらしきところは見つけられなかった。こういうぐだぐだ具合も彼らしいと思いながら、話をした。
そこで気付いた。話が合わない。
なんと言ったら良いのだろうか・・・。
彼が話す内容が私からしたらなにか心地が悪い。なんでその話をチョイスするのだろうと疑問に感じるような内容ばかりなのだ。
私も彼も変わっていないはずだ。
そうか。お互いすりあわせていたものがなくなったんだな、と気付いた。
恋愛関係がなくなり、共通のコミュニティに属しているわけでもないし、つながりというつながりがなくなった。お互い別の(自分自身の)世界の中で生活をするようになり久しぶりに再会した今、この人は変わってるなというふうにしか感じられなくなってしまったようだ。当時は、自分と違う考えを持っている彼が面白くて、尊敬していた。一緒に話しているときは面白くて楽しくてたまらなかった。
私たちは(少なくとも私は)、「恋人」という特殊な関係の中で価値観が違うなりにその違いを楽しんでいたのだなと気付いた。
もともと、ランチを一緒に食べるだけの予定だったけど、電車の遅延の関係で時間が押してしまってあんまり時間が取れなかったので、次の日も会うことになった。あらかじめ、どこに行くのか連絡しているときに私が東京タワーに行きたいと言ったらいいよと言ってくれていたので、ランチで感じた違和感を抱えながらも次の日も約束の場所に向かった。
年末の夜の東京タワーはカップルばっかりだった。サービスで写真撮影をグループごとにしてもらえるエリアを通過しないといけなかった。
「3つある椅子の真ん中に2人で半分半分で座ってください」
と係のお姉さんに誘導される。気まずくて微妙な隙間が空いていた。
(付き合いたての初々しい微妙な距離ではなく、埋めることのできない結構な心の溝のように感じた)
男女でいるからといってカップルだと判断するのは危険である。今の時代同性だってカップルの可能性があるわけで、今後自分も下手に他人の関係性を詮索したらダメだなと思った。
景色を堪能して、帰路につく。彼の家は東京タワーのすぐ近くなので、私の今夜の宿に向かうための最寄り駅まで一緒に歩くことになった。彼からはちょっと家に来て欲しそうな雰囲気も感じたが、お互いそんなことは良くないと分かっているので駅に向かう。歩きながら最近の自分の身の回りの話をした。少しの時間だったけど、彼は昔のように私の悩みに対して彼しかできないアドバイスをくれる。ちょっと懐かしさを感じる。
「もう二度と会えないかもしれないと思うと、なんとも言えない感情になる。」と彼は言った。
たしかにそうか。私も彼氏ができたら、さすがに会おうとは誘わないだろうな、と。
「これから別々の道を行くんだね。お互い頑張ろうね。」と意味深な?ことを彼は言った。そしてそのあとは、案外すんなりとバイバイをした。
友達との東京観光も楽しんで、日常に戻ってきてから数日が経った。私は昔の写真を見返す。別に未練があって残していたわけではなかったはずだ。
でも、このときどうしてかは分からないけどもう消していいかなとふいに思った。東京での再会がなにか作用したのだろうか・・・。自分でも分からない。(たまにスマホに自動表示される昔の写真に彼が映し出されるのには少し抵抗があったのは確かだが・・・)
こうしてだんだん忘れていってしまうのだろうか・・・。いや、忘れないと思う。消したい思い出というわけでは決してない。たとえ写真に残っていなくても、彼との思い出は宝物でずっと心に残っていると思う。そしてこれからもたまに思い出したい。
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