1人で暮らした部屋が怖すぎて徹底的に気づかないふりをしていたら全て忘れていた話

(Twitterで書いていたものをそのまま転載してます)

深夜だから話すんだけどさ。あとで漫画にしたくなったらツイ消ししちゃうかもしれないので、そこんところは気にしないで欲しい。
昨日、天井を眺めてたらパッと記憶がつながった事柄があってね。私、昔ある地方に住んでたことがあって、その時の知り合いと数年前に東京でご飯食べたことがあったんだよね。

楽しく近況報告なんかを一通りして、話すスピードが通常モードくらいに戻ったあたりで友達が「当時は言えなかったんだけど…」と少し話しにくそうに話を切り出しはじめた。
「飲み会の後、アヤネさんの家に泊まりに行ったことあったじゃないですか?」
え?なんでいまその話?覚えてるけどさ。

飲み会の後、はじめて私の家に来たんだよね。結構一緒に遊びに行ってるのに家に来るのはじめてだよねーなんて笑ってたよね。結局、泊まらずに明け方に解散したよねー!と呑気に話していたら、
「本当は朝までいるつもりだったんですよ」
「もうあれ以上はいられなかったんですよ、怖くて」

は?

待って待って?怖い?飲み会後といえど、あのときはもうノンアルに切り替えてたしさー
「いや、飲めないですよ。アヤネさん、よくあんな怖い部屋で生活できてましたね。なんですか?あの圧迫感…」

やー、単身用1Kだったから狭いのはねぇ
「違いますよ。私、少しそういうのわかるタチなんですけど…」

「あの部屋はマジやばいですよ。音もすごく反響するし、途中からラップ音みたいの聞こえてきたでしょ?」

「本当はもっと遊びに行きたかったんですけど、あの夜のことが怖くて行けなかったんですよ。引っ越すまで無事でよかったです。住んでる時にはとても言えなくて…」

言えよ…!といえるわけもなく、まだまだ話すことはたくさんあったので、その話はそこで終わったのだが、平静は保っていたものの私は少なからずショックを受けていた。

私にとって、あの時住んでいた部屋は初めて一人暮らしをした思い出の部屋だ。良い思い出の方が圧倒的に多い。

あそこが…そんな…

友達との会合は恙無く終了し、帰路についた。同伴していた夫に、前住んでた部屋の話どう思った?ときいてみた。
「んー、壁が薄かったんじゃない?でも、俺が行った時も足音がうるさかったんだよな。パタパタ…なんだか、キッチンとリビングの間にある中扉に吸い込まれていくような…」

え…?

「あの部屋で寝ると何度も同じ夢を見たんだよねー。誰かが玄関から入ってくる夢。たしかにラップ音もたまにしてたけど、なんか部屋の構造的(?)に音が反響しやすかったせいじゃない?知らんけどw」

言えよ!!
うん、何度も同じ夢見るのは普通じゃないよね。友達が言ってる内容とかぶってるし!!!

その後、なんとなく気になって、前の家に泊まりに来たことのある家族や友達にそれとなく聞いてみたけれど、特に何かあったという話はなかった。そもそも、気にしたところでもう何年も前に引き払った部屋の話なわけだし。ダメ押しで大島てるで事故物件ではないということを確認して、この話は終わり…とした。

中高生の時、重度の厨二病を患い、霊感があるだの魔法陣を描いて呪いをするなど一通りの黒歴史を潜ってきた身としては、今回の出来事は私に全く霊感がないということを示しており、少しガッカリしたような気持ちになった。普通に暮らしてたからねぇ。


そして、それからまた数年経った。

その間に子供が産まれたこともあり、霊よりも睡眠が足りない方が怖い生活が続き、前の家の話なんかはたまの笑い話にするくらいでどんどんと記憶の片隅に追いやられていった。一人暮らし、楽しかったなー、いつかその頃のこと漫画に描こうって考えるくらい。

でも、突然やってくるんですよ。それは。

一昨日、子供の寝かしつけが終わって、暗闇の中、天井を眺めてぼーっとしてたんですよ。そういえば一人暮らししてたころは天井の空気がめちゃめちゃ重かったよなぁ…って、突然心にふっと浮かんだんですよね。ってか重いってなんやねん、意味不明の違和感…

その瞬間、全部の記憶が繋がったんです。

それまでは記憶の中に小さな違和感がポツポツ落ちてるなーって感じで、1つ1つ見ればたいしたことないんです。でも、それらが1つに繋がると…あれ?ってなるんです。
別に体調崩したりなんかあったわけじゃないんですよ。だから、今まで気にせずすんだんです。気にしてはいけないんですよ。

ここからはあくまで私が当時感じていたものはこうだったのでは?というセルフ答え合わせみたいなものなので、悪霊が出たみたいな派手な話は本当に出てきません。ただ本当に私が感じた違和感の話を思い出して羅列していくだけです。引っ越したのは会社を退職したからだし。(借り上げ社宅)

最初に感じた違和感は「匂い」でしたね。当時、その部屋があるマンションは築2年の築浅で、1Kでちょい手狭ではあるんですけど、一人暮らしだし、キッチンとリビングの中扉がステンドガラスっぽいデザインの擦りガラスでおっしゃれー!と思ってそこに決めた記憶がある。他もかなり綺麗だったしね。

入居した時に感じたのは、よくある人の家に入った時に感じる違う家の匂いだー!ってやつ。洗いが入ってるはずなのに、なんか匂うんですよね。甘ったるい柔軟剤みたいな香水みたいな匂いが。まあ、前の住人は最長でも2年弱住んでたわけですし、染み付いててもおかしくはないってことで特に気にせず。

社会人生活がスタートして、匂いなんか気にしてる場合じゃなかったので、普段は全く気にならなくなりました。でも、帰省とかで2日くらい留守にして帰ると、まためっちゃ匂うんです。甘ったるい匂いが。特にキッチンで。これが最初の1年続いたとかならわかるんですけど、退去するまで続きました。

これ、伝わるかどうかよく分からないんですけど、自分と明らかに違う生活臭がいきなり割り込んでくるのってめちゃくちゃ違和感があるんですよ。だって、一人暮らしの部屋ですよ?いきなり、他人の匂いがしだしたら怖くないですか?発生源どこよ?みたいな。

そう、ヒルって漫画知ってます?
ヒルって呼ばれる家無し人が勝手に他人の家の合鍵作って、家主不在の家を間借りしながら渡り歩くっていう闇堕ち版借りぐらしのアリエッティみたいな話なんですけど、マジで私が不在の間にヒル的な誰か来てるんじゃないか?って疑って日用品とかチェックしたこともありました。

その日の朝に食べたパンの枚数も覚えていないような雑な性格の私に何かの違いを発見できるわけもなく、まあ、これ、建物に匂い染みついちゃってんだなと勝手に納得して、気にしないことにした。まあ、悪臭でもないし?私、実家以外の建物に住んだことないから、これが初体験ってやつ?ガハハみたいな。

2つ目の違和感は「管理会社からの騒音に対する注意の手紙」です。
これ、いままで本気で忘れてました。ある日、家に帰るとポストじゃなくて、家のドアについてる郵便受けみたいなところに灰色の封筒がつきささってたんです。一応、オートロック物件だったので私はそれだけでビビりました。

ドキドキしながら郵便受けから取り出した封筒に管理会社の名前が書いてあったのでほっとしました。なんやろと思いつつ開封すると、中からは「騒音に対する注意」と書いたペラ紙1枚が出てきました。内容は「夜中に酒を飲んでいるのか意味不明な大声や奇声を発している者がいるのでやめろ」というもの。

いやー、震え上がりましたね。だって、こういうのって皆さま的な書き方しつつ、当事者と思われてる人に届くやつじゃないですか?(と思っていた)私、夜中に奇声あげてるの?お酒飲んでないよ?両隣の家にも同じような手紙が届いてないか確認したい衝動に駆られましたが、さすがにできませんでした。

私はオタク特有の独り言も多いと思うし、電話の時の声が大きくてそんな風にまわりに聞こえたのかも…と反省して、なるべく静かに過ごすように気をつけました、特に夜。昼間は仕事行ってるから、そもそもいないし。

それから半年くらい経った頃、また灰色の封筒が郵便受けにつきささってました。

恐る恐る開封してみると、以前とほぼ同様の内容の手紙が入ってました。

「夜中に意味不明の大声と奇声をあげる人がいるようです。やめてください。」

えー!!私、あれからかなり気をつけて生活してるよ!?これ以上どうしろと??そんなにヤバイなら、手紙じゃなくて、もう直接電話して注意してほしい!

もはや出来る事はないので、私じゃないのかも?入居者全員に通知してるのかも?と思いつつも、普段のゴミ出しへの注意などの通知はエントランスホールにあるポストに入るのに、この通知だけ個人の部屋の郵便受けに直挿しなのがひっかかる。

数ヶ月後、また灰色の封筒が扉につきささっていた。頻度ェ…

確認するとやはり前回とほぼ同様の内容の手紙だったけど、今回は封筒が隣の部屋の郵便ポストにもささっているのを目撃!私だけじゃない!全員かどうかはわからないけど、多分、私個人への通知じゃない!
ってことで過剰に気にするのはやめました。

私だけじゃないから!!(知らんけど)

その通知は頻度はバラつくものの、定期的に郵便受けに投函される定期便みたいになり、頻繁に通知されるわりに最後まで夜中の奇声も意味不明な大声も聞いた事はないままで終わった。ラップ音も鳴りやすく、音も変な風に反響しやすい建物だったので、そもそも人じゃなかったのかもしれないと今は思う。

そして、三つ目の違和感は「頻発する金縛り」です。
夫が見たと言っていた玄関から誰か入ってくるって夢の少し違うバージョンのやつ、私も何回も見てたんですよ。金縛りつきで。何回も同じ夢?みたいなものを見るって今だと変だなと思うんですけど、当時はそんなもんかな?って気にしてませんでした。

もともと私、金縛りになりやすい体質みたいで。
どういう夢?を見てたかって軽く説明すると、部屋を真っ暗にして寝ようと横になるとまず軽くヒィィンっていう耳鳴りがするんですよ。そんで、玄関の方に向かって天井からトントントントントンって足音みたいな音が鳴り始めるんです。

すぐに金縛りが始まって、体が強張ってくるのはまあ金縛りやし別にーって感じなんですけど、なんか不思議なことに豆球が点灯しはじめるんですよ。私、真っ暗にして眠る方が好きなのでいつも消してから就寝してるんですけど。
なので部屋の中が灯りに照らされて、ぼやーっと見えるんですよね。

玄関開けるとすぐにキッチンがあって、その先にあるステンドグラス風磨りガラスの中扉を開けるとリビングの1Kってのがその部屋の構造だったのですが、灯りが点灯することで、すりガラスの中扉が見えるようになるんですよね。正確にいうと磨りガラスの向こうになんかチラチラ動いてる影が見えるんです。

なんというか直感的に「あ、いるな」って感じなんですよね。中扉の先のキッチンあたりに。
天井トントン、豆球チカチカ、磨りガラスの向こうで影がユラユラ。
中扉がバーンと開いて、磨りガラスの先にいる何かが今にも中に入ってきそうな圧がすごくって、体動かないんですよ。まあ、金縛りなんですが。

やー、めっちゃ怖いです。ほんまに。
でも、引き際はわりとあっさりしてて、こっちが何も反応しないのわかると(いや、だから金縛りなんやって)、ぷつっと終わるんですよね。圧に疲れてそのまますぐに寝ちゃって目覚めたら朝なので、夢なのか現実なのかよくわからなくなりましたね。

この金縛りとセットの夢だかなんだかわからないものが毎日起こる!とかならまだあれなんですけど、本当に時々って感じで、最初の方は怖くて眠るのも躊躇して、職場の先輩にも「眠れてる?悩みでもあるの?」って心配されてたんですけど、こんなこと話せるわけないじゃないですか。

住み始めたばかりで会社の借り上げ社宅から引っ越すという選択肢もさすがになかったです。夢だし、睡眠不足以外の実害ないし、働き始めだったからお金もないし。あと仕事と新生活に慣れようと必死で、疲れて普通に眠いんですよ。そっちにエフォート割く余裕なんてないんですよ。

漫画なんかでは「家に帰りたくないの…」って朝まで外で飲み歩いたり、友達の家に居座る描写がありますが、車がなければ生きていけないど田舎工場勤務、会社以外に知り合いが全くいない土地での生活+陰キャ20代女性の組み合わせでは難しすぎて、無理でした。

こういう話って、祈祷師呼んで霊を払ったりするオチがつくもの多いんですけど、この状況でそういうの呼べる人ってあまりいないと思います。そりゃあ、命を脅かす!みたいな事案があればなりふり構ってられないんでしょうけど。こちらは所詮、圧をかけてくるだけの匂わせ案件でしかないですし。

てか、私的には除霊なんて思いつきもしませんでした。だって、それってむこうの何かに「私はあなたの存在に気づいていますよ」ってサイン送ってるのと同じですよ。除霊失敗してたらもう終わりですよ。多分、そのサインをむこうが受け取ったら「じゃあ、行くね」って摺りガラスの中扉がこちらへ開いていたと思います。

ということで、私は徹底的に「気づかない」という選択しかとれませんでした。「え?なんだって?」みたいなリアクションも一切とらない、誰にも言わない。キッチンから甘ったるい匂い?前の住人のが染みついてるんだね!管理会社からの手紙?誰だようるせえクソ野郎は!私も音や声には気を付けて生活しよう!

ラップ音やキッチンに吸い込まれていく足音は?建物の構造の問題!壁が薄くて反響しやすいの!何度も同じ夢を見る?気のせいだよ!磨りガラスの向こう側に見える影って??

…摺りガラスの中扉の向こうってなにがあるんだっけ?

私は何も気づかないまま、そこで5年楽しく暮らしました。

これで数日間にわたって呟いてきた夜話は終わりです。きれいなオチがなくてごめんなさい。私は今も元気で、特に問題なく生活しています。そう、もう怖すぎて本当に誰にもいえないくらい、何もなかったので。

なぜ今さらこんなことをTwitterで呟いたかというと、もう今書かなければ、二度とこの話を形にすることはできないと思ったのと、文章で吐き出して不特定多数に読んでもらうことでもう完全に他人事にしたかったんです。

書けば書くほど、当時気づかないふりをしていた分、どんどん鮮明に思い出せるんです。いくらでも書けます。信じてもらえないと思いますが、これ書いてる間、息切れと冷や汗がとまらないんですよ。自分で書いてて、自分が1番怖いんですよ。

信じられないことに、私、書きながら、まだ気にしてるんですよ。摺りガラスの向こうにいる何かにこれを「気づかれる」ことを。もう住んでもいないのに…

うーん、やっぱこの話、めっちゃ怖くないですか?


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