#20 エベレスト旧ルート213kmの旅 カトマンズ帰還
朝起きると、今朝もハッキリしない天気に見える。
祈る気持ちで空港に向かう。
といっても僅かに徒歩5分だが。
定時より遅れること1時間、僅かな晴れ間を狙って飛行機が飛んで来た。
どうやら刻々と変わる微妙な天候の変化を読みながら運行しているようだ。
そら来たとばかりに、詰めかけた搭乗客でごった返すカウンターで、慌てて登場手続きをする。
全てが出たとこ勝負なのだ。
長い旅を一緒に過ごしたガイドとはここでお別れ。彼はここから二日間歩いて自分の村へ帰ると言う。
来週からは、本業の中学校の先生としての仕事が彼を待っている。
挨拶もそこそこに、ドタバタの中で、搭乗口から押し出されるように小さなプロペラ機に搭乗した。
座席は座った者順。
何が何だかよくわからない内に飛行機は動き出した。
ジェットコースターのように大きく機体を揺らしながら飛び立った飛行機は、ヒマラヤの山々を掠めるようにしてラメチョップ空港へと向かった。
飛行時間は僅かに20分ほど、無事ラメチョップ空港に着陸した。
暑い。気温は30℃近いのではないか。山から降りるとこんなに暑いとは驚いた。
ここからオンボロワゴンに揺られて5時間でカトマンズだ。
5時間かかると言っても、おそらく距離は100km程度。あまりに酷い凸凹道でまともに走れないのだ。
ただでさえ舗装路など望むべくもなく、砂埃が舞う酷い道。
川沿いに走るそんな道を9月末の集中豪雨が襲い、地滑りや亀裂で幹線道路を壊滅状態に追い込んでいた。
日本なら、当然の如くに通行止めになる道だろうが、ネパール人は逞しい。
崩れた堤防は新たな川への道となり、水量が少ない川は道路になっていた。まるで車での沢下りだ。
車窓から見上げると、今にも崩れ落ちそうな堤防際の家々が見える。
二次被害がいつ起きても不思議で無いような状況で、当たり前のように多くのクルマ、バイク、人がゆく。
発展途上国のどうにもならない悲しさ無念さと、それでも懸命に生きる人々の逞しさを感じた。
クルマに激しく揺られること5時間半。徐々に車窓風景が賑やかになってきた。
四方八方からのクラクション、スモッグで霞む街並み、頻繁に手を伸ばす物売り。
二十日ぶりのカトマンズの街は相変わらずのカオスだった。
帰ってきた。無事に帰ってきた。
胸にグッと込み上げてくるものがある。
多くの皆さんに感謝の旅だった。
ダンネバート(ありがとう)!