ジリからのエベレスト街道クラッシックルート Day 16 ソマレ
昨晩は嵐のような夜だった。
物凄い暴風音。宿ごと吹き飛ばされるのではないかと心配になる。
持っている服を全部着込んでスリーピングバックに入り、更に掛け布団を掛ける。
足元には、ナルゲンボトルにお湯を入れて貰って湯たんぽ代わりに。
相変わらず咳、鼻水が止まらず頭が痛い。息苦しく寝付けないままに朝を迎えた。
でも心なしか気分は軽い。
今日からはひたすら下山の旅が始まる。多少のアップダウンはあっても降りは圧倒的に早く、楽なのだ。
Gorakshep(5,170m)〜Lobuche(4,930m)〜Pheriche〜Shomare(4,095m)
計16.85km
朝7時、いつものように出発した。
あんなにきつかった道のりだが、駆けるように降りていく。
すれ違い様にハアハアゼーゼーのトレッカーが羨ましげに僕を見る。
あっという間に前々日に宿泊したロブチェを越え、トゥクラを越えた。
気付けば、すっかり頭痛は無くなった。
快調に歩みを進めていると、ふと脇で休憩していた年輩の女性から梅干しがどうのこうのと言う声が聞こえてきた。
思わず振り向くと、「あら日本の方」と声をかけられた。
ガイドと二人で登っていたが、遂にロブチェで力尽きたらしい。
頭痛と酷い下痢で、休み休み下山しているらしい。
残念ながら僕にはどうする事もできない。幸い、日本語が上手な面倒見の良さそうなガイドも一緒だ。
頑張ってくださいと言い残して、僕は先を急いだ。
やがてペリチェを越え、ソマレの街に辿り着いた。今日はここまでにしよう。
宿でお茶を飲み、のんびりした時間を過ごしていると、件の女性が弱々しげな足取りで降りてきた。
今夜はここに泊まると言う。
夜、お話を伺うと、彼女はドイツはボンから来たらしい。
もう30年以上も前、夫のドイツ赴任に伴い渡独した。帰国辞令が出たが、日本に戻る気が失せて、退職しドイツで起業したらしい。
今や起業した会社は息子さんが跡継ぎとなり、悠々自適の生活らしい。
年に一度、夫も息子も会社も忘れて、海外の山をトレッキングするのが楽しみだそうだ。
うーん、素晴らしい人生ではないか。
思わず羨ましく思う僕がいた。
ところで彼女、酷い下痢でどうにもならないらしい。ガイドからネパールの下痢止めを貰ったが、効いてるのか効いてないのか怪しい限りと言う。
僕も腹は弱い方である。日本からその名もピタリットと言う下痢止めを持参していたので差し上げた。
翌朝、彼女は幾分元気な様子で言った。
まさにピタリットでした。
さすが、メードインジャパン。
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