ジリからのエベレスト街道クラッシックルート Day 14 ロブチェ
朝起きると、昨晩からの雪でディンボチェの街は薄っすらと雪化粧。
天気予報は外れ、澄み切った青空が広がっていた。
今日もハードなトレッキングになる。
朝食には、エネルギー補給と高山病予防の水分補給を兼ねてシェルパシチューをいただく。身体も暖まるしコレが一番だ。
7時、ロッジを出発すると、隣の売店ではロバがお使いをしていた。
Dingboche(4,304m)〜Dughla/Thukla(4,629m)〜Lobuche(4,914m)
計9.23km
緩い登りが続く道を進む。
雪化粧された山々は、暖かな太陽に照らされてキラキラと光る。吸い込まれそうな美しさだ。
雪道を前へ前へと進む。
巨大な荷物を背負ったポーター達が足早に僕を追い抜いていく。彼らは一体どんな身体をしてるんだろう。
ひたすら歩くこと2時間半、トゥクラ(4,620m)の村に着いた。
ここで早めのランチをいただき一息入れる。
さて、問題はこの先なのだ。
緩やかな登り坂は、やがて地獄の急登となった。先を見上げるとゾッとする。
大きく肩で息をしながら一歩、また一歩と進む。
高度は4,600mを超え、頭がクラクラする。もう泣きたい位の辛さだ。
終わりの来ない日はない。
終わりの来ない坂道もない。
急登を登り切った先に見えたのは、エベレスト登頂にチャレンジし、還らぬ人となった人達の慰霊碑が立ち並ぶ場所だった。
中には日本の方の慰霊碑もある。
雪を頭に被った慰霊碑は、太陽の光を浴びて光り輝いていた。
ここから先は、また緩い登り坂が続く。夢遊病者の様にふらふらと歩くうちに、ようやく目的の村ロブチェ着いた。
また雪がちらつき始めていた。
13時、倒れ込むようにロッジに入り、温かい紅茶をいただくうちに、気分も落ち着いてきた。
頭痛はない。吐き気もない。
高山病の気配なし。ありがたい。
しかし、ロッジの中は寒い。なにせ高度4,910mなのだ。
これまでのロッジもそうだが、そもそもネパールのロッジには暖房設備なるものはない。
唯一食堂に暖炉があるのみで、これも夕方にならないと火を入れてくれない。
建物も隙間風だらけ。ハウスメーカーの宣伝のような、高断熱高気密住宅なんて夢のまた夢。
ひたすら着込むしかないのだ。
ガイドのライさんに、住宅事情を訊いた。
彼の本業は中学校の先生。今回は秋の長期休暇を利用してガイドのアルバイトをしている。
有名なシェルパ族とは違い、少し高度が低い地域のライ族出身で、エベレスト街道メインルートのルクラの近くに住む。
裕福ではないだろうが、生活に困るような生活ではないはずだ。
でも彼の家にも暖房設備はなく、暖炉のみ、調理は薪を焚いて釜戸で行う。
洗濯は?
もちろんランドリーマシンなど無い。近くの湧水を引き入れて手で洗う。
風呂は、シャワーは?
週に一二度かな、特にこれからの季節は寒いから水浴びは辛いよ、と言う。
そう言えば僕が子供の頃、かれこれ50年以上も前だが、家に風呂なんて無かった。二、三日に一度、家族揃って銭湯に行っていた。
今となっては想像もできない生活だが、
やればできるもんだ。
僕はもう6日もシャワーを浴びてない。
この寒さじゃ濡れタオルで体を拭くのも億劫なのだ。
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