ジリからのエベレスト街道クラッシックルート Day 13 ナァガラサン往復
今日は高度順応日。前日同様のディンボチェの宿に2連泊する。
一般的に高度3,000mを超え、高山病を避ける為には、宿泊する場所の高度を1日あたり300mを超えて上げてはならない。さらに宿泊高度を600〜900m上げる毎に、同じ高度で2連泊しなければならないらしい。
そして、この規則を守っても、4,000mを超えるような場所では、50%の確率で、頭痛や眩暈、吐き気などの症状に見舞われると言う。
僕のガイドさんによると、先月の26歳日本人女性のトレッキングでは、ここディンボチェで頭痛と嘔吐が止まらず、クリニック受診後にロバに揺られて下山したらしい。
もはや不安を通り越して、恐怖でしかない。
今朝もいつも通り5時には目覚めた。
頭痛も何もなく、いつも通りの朝。
むしろ朝から腹ペコだ。
良かった、僕にはまだ高山病は来ないようだ。
高度順応日だからと言ってゴロゴロして過ごす訳ではない。
翌日以降、さらに登り続けるには、日帰りでの高高度トレッキングをする必要がある。
と言うことで、今日はナァガラサン山(Nangkar Tshang)5,080mへのトレッキングだ。
結論から言う。
地獄の苦しさだった。
ディンボチェ村(4,293m)から、山の斜面を這うように急坂を登っていく。
高山病ではないはずだが、足が異常に重い。
10歩進んで立ち止まり、8歩進んで立ち止まり、遂には5歩進んでは立ち止まる。
スマートウォッチを見ると心拍が上がっている訳でもない。
空気が薄いのだ。吸っても吸っても吸い足らない。身体に力が入らない。
次々に僕を抜き去っていく西洋人たち。悔しいが、どうにもならない。
動くべき身体が、動かないもどかしさ。
ふと障害を持つ人達の苦しみを見た気がした。
寒い。スマートウォッチを見ると−4℃。そして高度は5,000mを超えていた。
一歩進んでハアハア、また一歩進んでゼーゼー。頭が痛い、遂に高山病の兆候か。
転ばないよう、足元を見ながら進む。
僕は何でこんな辛いことをしてるんだろう。だいたい一円にもならないのに。
ふと見上げると、大きな岩山が続く山頂がすぐそこに見えた。
足元ばかり見ていて気付かなかった。
僕は、遂に岩山に転げ込むように山頂に到達した。もう一歩も動けなかった。
こんなに苦労して登ったが、あいにくの深い雲の中。
本来なら、ヒマラヤの山々の絶景を楽しめるはずだが仕方ない。
そもそも今日は、高度順応の為のトレッキングなのだ。
3時間かけて必死の思いで登ったが、下りは早い。1時間もかからずにディンボチェの村に着いた。
疲れ切った身体を引きずってロッジに戻った時には、いつの間にか頭痛も消えていた。
この高度順応トレッキングで、明日以降の更なる高地への準備はできたんだろうか。
不安は絶えない。
ふと外を見ると、いつのまにか雪が降り始めていた。
明日も大変なトレッキングになりそうだ。
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