短編小説:サンタが……来た?
「わーい! ホントにサンタさんがゲーム持ってきてくれたぁー! すげー! やったぁー!」
子供が飛び跳ねて喜んでいるのを私は呆然と眺めていた。妻が近付いてきて「あなた、やるじゃない! ヘソクリでもあったのぉ?」すごく嬉しそうで何も言えない。
その問いには「お、おぅ」と答えるしかなかった。なぜこんな反応をしているのかは俺の記憶を見てもらうしかない。
私は精神疾患を患っており、給料が他の人より少ない。生活をするのがやっとだ。もちろん。プレゼントを買う余裕はない。今日も仕事終わりに泣け無しの金で袋菓子をプレゼント用に買って帰った。
いつも息子はサンタさんに欲しいものを手紙に書いて置いている。毎年だ。それに逆らって私が袋菓子をプレゼントに置くのが恒例になっていた。もう息子も四年生。夢を壊したくないが、どうすることもできない。
この日も息子が寝るのを待って、ツリーの下へ袋菓子を置き、ワンカップをあける。大事にチビチビと飲んでいた。胸から込み上げるのはトゲトゲとした鬱憤だ。私は好きで病気になったのではない。なんで私が……。目から溢れてくるものを我慢できず嗚咽を上げる。気づくとそのまま寝てしまっていたのだ。
物音に少し瞼を開けると白い髭を生やして赤い帽子と服を着た何者かが包みをツリーの下に置いている。「ん?」私が声を上げるとこちらを向き、人差し指を口に当ててウインクした。そのまままた瞼を閉じた。
気がつくと冒頭のように子供がはしゃいで喜んでいたのだ。私には何が何だか分からない。一体なにが……。
あれは……サンタクロースだったのか?
私は何を見たんだろうか。