【FF12】3つのシーンでストーリーの醍醐味を知ろう part2【解説】
(※ネタバレ注意)
シーン2の解説. 過去を断ち切れば自由?
前回に続いて, シーン2: フォーン海岸でのバルフレアとアーシェの会話イベントを見ていこう.
このシーンは, バルフレアが自分の過去を語ると共に, 神授の破魔石(持ち運べる原爆のようなもの)の力に固執するアーシェに忠告を与えるシーンである.
既にシーン1の解説で書いたように, この2人は本編後半の主人公だ. このシーン2で, バルフレアの過去(=解決されるべき問題)が明かされ, アーシェの過去に対する考え方が変わり始める. 次回でより明確にさせるが, 「過去とどう向き合うか」はFF12のストーリー全体のテーマである. ともあれ, シーン2は新たな主人公たちの物語が本格的に動き出す重要なシーンである.
このシーンの立ち位置を理解した所で, 台詞を詳細に見ていこう.
まずバルフレアが, アーシェの真意を問い正し, アーシェが破魔石の強大な力に魅入られているのではと指摘する.
バルフレア: なんで帝都に行く。
アーシェ: それは――破魔石を封じに。
バルフレア: 奪い返しに、じゃないのか。
(うつむくアーシェ)
バルフレア: 石の力でダルマスカ再興――そうなんだろ。気持ちはわかるが、どいつもこいつも。
バルフレアがこのように感じたのには明確な理由がある. というのも, ミリアム遺跡で破魔石を封じる"覇王の剣"を手に入れた時, アーシェは既に力を失った破魔石"暁の断片"すら砕く事が出来なかったからだ. この事は, アーシェも自覚している. 図星を突かれたアーシェはこれに対し, 問いかける.
アーシェ: 私が力に飢えている、破魔石にとりつかれている、そんなふうに見えますか。
バルフレアはこの問いかけに答える代わりに, ある男の話をする. 破魔石に夢中になってそれ以外何も見えなくなり, 全てを破魔石の踏み台にした男の話を. その男は, 彼の父親だった.
バルフレア: ドラクロア研究所、ドクター・シド。破魔石に心奪われて、あいつはあいつじゃなくなった――オレの父親でもなくなった。お前は、あんなふうになるな。
これは, バルフレアなりの忠告だ. 彼は, アーシェが自分の父親のように破魔石に魅入られて狂ってしまう事を危惧している. この時点で既に, バルフレアにとってのアーシェは, ただ目的が一致しているだけの同行者ではなく, 気に掛けるべき存在へと変化している事が見て取れる. 彼は思い出したくない過去を明かしてまで, 石に魅かれる彼女を思いとどまらせようとしているのである.
続いてバルフレアは, 父親からずっと逃げてきた事を告白する.
バルフレア: オレは逃げちまった。石にとらわれたあいつを見てられなくて――逃げて、自由になったと思い込んでた。
父親から逃げて空賊になる事は, 彼にとっての自由と結びついていた. 逃げるために始めた旅というのは, シーン1のヴァンの話と対応している.
しかし, そんな過去からの逃避は永遠ではなかった. 何の因果か, 彼はアーシェと出会う事で, 結果として自分の過去と否応なしに向き合う事となる.
バルフレア: ――なのに破魔石と知らず「黄昏の破片」に手を出して、あんたに会って、ここにいる。結局、逃げられやしなかったんだ。
過去から逃げきれなかったバルフレアは, 自分もまた過去に縛られた不自由な人間であると悟る. そして, 彼もまたヴァンと同じように, 逃げる事をやめ, 過去と向き合う事を決意する. ここからは, 自分にとっての自由を手にするための旅となる.
バルフレア: ――だから終わらせる。過去に縛られるのはもういい。
こうして, 父親との因縁は, バルフレアにとって解決されるべき問題となった.
一方で, 過去と向き合う事を決めたバルフレアを見てアーシェは呟く.
アーシェ: 過去を断ち切れば自由――。
この呟きは, バルフレアが話した事と対応しているとともに, このシーンの少し前に明かされたフランの過去とも対応している. フランは, 故郷を捨てた代わりに自由を得たが, それと同時に本来のヴィエラとしての生き方も家族も捨てる事となってしまった.
自分と同じ道を進もうとする妹に現実を突きつけるフラン.
過去を断ち切る事で得られる自由は, それなりの代償を伴う. またバルフレアのように, 過去から逃げようとしても逃れられない人間もいる. 「過去を断ち切る」というのは, 安易な解決に過ぎないのである. アーシェもまた, 過去を断ち切るのではなく, 過去と向き合う方法を見出す必要がある.
バルフレアの話を聞いたアーシェは, ラスラとの過去を回想する. 思い出の中の彼は, アーシェが破魔石の力をもって帝国に対抗する事を望むだろうか.
結果としてバルフレアとの会話は, アーシェの過去に対する考え方を見直すきっかけとなる.
バルフレア: あんたの心、石なんかにくれてやるなよ。王女様はお強いんだ。
アーシェ: ――そうありたいと願うわ。
破魔石の強大な力に頼るのは, 自らの心の弱さの表れである. バルフレアとの会話は, アーシェにとって冷静に過去を振り返るきっかけとなった. この事は, 今後アーシェが「帝国への復讐が自分の務めである」という考えを見直す契機となる.
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