Bayesian Persuasion (Information Design) に入門するための文献リスト
(2023.08.16 追記)
この記事は2019年4月時点の情報に基づきます。当該分野の最新の研究動向が十分に反映されていない事をご留意の上、ご参考ください。
分野の布教(?)と自分用の整理のための基礎文献リスト。私もまだ一部しか読んでいません。私の主観に基づき、カテゴリごとに重要度の高い順で並べています。拡張と応用研究はまた今度。
①サーベイ
Bergemann, Dirk, and Stephen, Morris (2019), "Information Design: A Unified Perspective." Journal of Economic Literature, 57 (1): 44-95.
非常に丁寧で読みやすく、わかりやすい。カバー範囲が広く、章立てもクリア。好みにもよるが、まずはこれを読んでみるのが良いかも。
Taneva, Ina (2018) "Information Design." Forthcoming.
後述の Bayes Correlated Equilibrium アプローチから情報設計問題を解説している。まだunpublishedなので著者のWebページから最新版がダウンロードできる。
Bergemann, Dirk, and Stephen, Morris (2016), "Information Design, Bayesian Persuasion, and Bayes Correlated Equilibrium." American Economic Review: Papers and Proceedings, 106 (5): 586-591.
情報優越を持つSenderと複数のReceiverがいるケースの解説ノート。Bayesian PesuasionとInformation Designの橋渡しになっている。
②基礎理論
Kamenica, Emir, and Matthew, Gentzkow. (2011), "Bayesian Persuasion." American Economic Review, 101 (6): 2590-2615.
Bayesian Persuasion (ベイズ説得) のパイオニアワーク。Information Design (情報設計) はこれの拡張モデル。シグナルのSenderとReceiverの二人がおり、シグナルに沿ってReceiverがbeliefを変える。Concavification (凹化) というアプローチを用いて、どんな時にSenderがシグナリングから利益を得るか等を議論している。
Bergemann, Dirk and Stephan, Morris (2013), "Robust Predictions in Games with Incomplete Information." Econometrica 81 (4), 1251-1308.
Receiverが複数いるベイズ説得モデルの解概念としてBayes Correlated Equilibrium (ベイズ相関均衡, BCE) を提案。難解。
Bergemann, Dirk, and Stephen, Morris (2016), "Bayes Correlated Equilibrium and the Comparison of Information Structures in Games." Theoretical Economics, 11 (2): 487-522.
Bergemann, Morris (2013)とともにReceiverが複数いるベイズ説得モデルの解概念としてBCEを提案。いくつかのconstraintsから到達できるoutcomeを探す線形計画アプローチになっている。Forgesの不完備情報相関均衡との関連や情報構造のorderingについても述べられている。
③日本語文献&おまけ
田村彌 (2014)「最適シグナル」坂井豊貴(編著)『メカニズムデザインと意思決定のフロンティア』慶応義塾大学出版会, 63-98.
前述のKamenica, & Gentzkow (2011) の解説論文。PesuasionとDesignの双方のアプローチから解説している。元論文より大分わかりやすい。
宇井貴志 (2018)「情報設計問題とLQGゲーム」『現代経済学の潮流 2018』東洋経済新報社, 133-165.
Linear quadratic Gaussian というゲームのクラスを用いてInformation Design を分析している。LQGゲームの一例が前述のBergemann, Morris (2013)で扱われている。
Myerson, Roger (1991), Game Theory: Analysis of Conflict. Cambridge and London: Harvard University Press.
6章の Games with Communication が有用。Myerson本人が開拓した分野でもあり、他の教科書より詳しい。BCEのincentive constraintsは込み入っていて初見だと困惑するかもしれないが、その場合はここを見ておくと安心かも。
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