【不妊治療記録vol.12】FT手術を受けた話(後編)
まさにテレビで見た景色
通された部屋はまさに医龍などテレビドラマで見たようなオペ室だった。今から手術をするのだから当たり前である。煌々と光る照明に、医者が一人、看護師が4名いた。
看護師「ではこの台に乗って、リラックスしてください」
私「はい…」
さぁ、リラックスしてくれと言われてもリラックスなんかできない。震えは増すばかりで、顔も引き攣っていたし、かなり感じ悪く返事してしまったと思う。看護師さん、ごめんなさい。
医者「それじゃあ手術始めます。まず麻酔入れますね」
医者はちょっと恰幅のいい中年の男性であった。あまりにも緊張していた私は、正直に「今めっちゃ緊張してます」とポロっと話すと、「だよね。顔すごい引き攣ってるよ」とガハハと笑われてしまう始末であった。
私「静脈麻酔初めてなんですけど、どんな感じですか?」
医者「初めてなのか!ふわあ〜として気持ちいいよ。ウイスキー飲んで寝落ちする心地よさみたいな。むしろ手術もないのにこの静脈麻酔打ちたい〜って言ってる人もいるくらい」
私「えぇ…そんなに気持ちいいんですか」
医者「だから全然心配いらないよ」
看護師「麻酔、入りました」
タイムワープした初めての麻酔
唐突に告げられた「麻酔、入りました」に心の準備ができていなかった私は「全然ウイスキー飲んだ感じしないんだが!!!?」と思っていると、最初の部屋のベットの上に横たわっていた。何が起こったのかわけがわからない。
腕には点滴がついていたが、そのまま携帯を取り出し、夫にとりあえず手術が終わった旨伝えようとした。だが、何度打っても文字がうまく打てず、何回も携帯を落としては顔面に直撃させていた。眠さが限界にきてるような気分だ。
そこに看護師が入ってきて「ゆるりさん、大丈夫ですか?」と心配してくれる。さっきあんなに極度の緊張状態で感じの悪かった私に、優しい。さすが白衣の天使である。
夫によくわからない文字列で何かをうち、送信したところでまた意識を失った。そこから1時間ほど眠っていたらしい。そうして次目覚めると、目がスッキリした。
また携帯をみると、私の何を言っているかわからない文字列に夫が「手術終わったの?お疲れ様!」と返事していた。それにまた返事をすると、看護師が再び入ってきた。
看護師「朝から何も食べてないので、こちらで糖分補給してくださいね」
私「ありがとうございます…」
看護師がホットミルクティーとカントリーマアムなどのお菓子をトレイに乗せて運んできた。目もスッキリしたので座り、ホットミルクティーを飲むと久々の糖に体がみるみる回復していく。ミルクティーってこんなに美味しかったっけ?
手術後のあれこれ
ミルクティーを飲み終え落ち着いたらお着替えをするように言われ、診察室へ呼ばれた。
医者「手術お疲れ様でした。片方は狭窄してたけど、もう一つは狭窄というほどではなかったですよ。でも両方しっかり通しました」
私「あっという間でした」
医者「麻酔すごいでしょ。それで、狭窄してた方はかなり癒着してたから閉塞一歩手前でした。これで卵管が通ったから、タイミング法を続けてください」
私「タイミング法はどれくらい取ればいいですか?」
医者「半年くらいは試してもいいんじゃないかな?旦那さんも手術しましたよね?」
私「はい、夫も手術しました。ではタイミング法試してみます」
卵管が原因で妊娠していない場合は、卵管が通ったことで翌月すぐ妊娠する人も多く、卵管原因の方にとっては一気に妊娠率が上がるらしい。私たちは卵管が詰まっていることと、精子の運動率が悪いことが原因と考えられていたので、この2つの原因を取り除いた今はスッキリした気持ちになった。
タイミングを取れば妊娠できる
専門クリニックに来てからあっという間にことが運んだ。風疹ワクチンを受けて、産婦人科でタイミング法をしてた時は前進してる気がしなかったが、この病院へ来て、検査をして手術をして、確実に進んでいる感じが嬉しかった。
あとはシンガポールへ引っ越してタイミングをとって妊娠すれば完璧だなんて妄想しつつ、病院を後にした。
ちなみに術後は本当に手術したのか?というくらい痛みも出血もなく、麻酔もただめっちゃ眠かっただけで拍子抜けしたのでした。
(余談)思わぬデジタル化
気になるお会計は約8万円であった。限度額認定証を持ってなかったため、自己負担が大きくなると思いきや、マイナ保険証があれば限度額認定証は必要ないとのことで、そのままマイナ保険証をかざすとお会計が8万円に抑えられた。30万円ほどする手術が8万円になるのは大変ありがたい。お国とデジタル庁に感謝したのであった。