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鬼様のブランチ 「幸せになりたい、でも幸せとはいったい何なの」

今回の鬼ブラ!
・急にこんなテーマ語るか? 素朴にいこうぜ。

前回の鬼ブラ!
・みんなの楽しみ、アウトドア編。波に乗ったり風を切ったり、その積み重ねが幸せってもんじゃないの?


洗濯物を干し終えて


蘭香

ハァ~ア、幸せになりたいですわね。

刹那

………!?
なんか………あったのか?

蘭香

え? 別に、「なんかいいことないかなぁ~」くらいの素朴なつぶやきですわよ。

師とお嬢さんのお世話をして、おこづかいをいただいて、今日はヒマだからお買い物にでも行こうかしらなんて、要するに「まあまあ幸せだからこそ、余裕こいて言ってること」でもありますわ。

刹那

まあまあ幸せな自覚があっても、満たされてはいないってことか?

蘭香

満月ではなく、居待月いまちづきかしらねくらいの話ですわ。
師も愛人も、結局わたくしのものにはならないわけですし、な~んかな、みたいな。かといって熱烈な恋人が出現すれば円になるのかというと、そうではないと思いますし。

月にかかる影は、青い鳥なのでしょう。その鳥は、時が満ちる時にしか姿を現さないのでしょうね。

刹那

そ………そんなステキなこと言うのか!!

メモしといて女に言おう。えーっと、居待月の……影が………青い鳥と。


彼女にとっての青い鳥候補たち


白威

こっちのビン……夏に作ったびわ酒は、いつまで飲めるんだ。もう捨てるか?

斎観

一年は寝かしとけって本に書いてあったから、置いといてくれ。
秋はどうしよっかな~。栗でも拾ってなんか作るか。女は栗が好きだし。

白威

栗はかなり面倒だぞ。虫止めと追熟をして、二重の皮を剥いてまで使いたいか?

斎観

「甘すぎないマロンペーストを山盛り食いたい」っていう需要があんだよ、女からは。売ってるやつは全部甘いだろ。
旬のものを使って菓子を作ることくらいしか、俺には取り柄がねえんだから。

白威

誠実さとかを取り柄にしたらどうだ。

斎観

誰に対して? 誠実さってそこが泣き所だろ。
一夫一婦の誠実さは一途さで、一夫多妻の誠実さは経済力なわけでさあ、女囲うほどの金はないぜ、俺。

白威

たいして金を持っていない浮気者だとしても、今よりは誠実になれると思うが……。

斎観

神無様のことは置いといたとしても、一途になった俺って相当怖いだろ。
こんなでかくて心の湿った男がさあ、自分が浮気しないかわりに、女に嫉妬しだしたりしたらさあ……。

白威

なるほど、いちばん事件を起こしそうなタイプだな。
経験上、モラハラの痛烈さは顔の良さに比例するし、明るいふりをしている男はほぼ100%、家では厄介だ。

斎観

いやいや、ホントそうよ。
俺が女だったら、俺とは絶対付き合いたくねーもん。爆発はしねえけど、「永遠に撤去できない不発弾」じゃん。

白威

そこまで自分の印象を客観視できているのに、改善できないというのも不思議なものだな。

斎観

俺と付き合って幸せになれる女はいねえと思う。
だからせめて、手間のかかる菓子を作れる男として、希少価値を感じてもらうしかねーんだよ。


自分のいる場所に幸福があるタイプ


松本

今日は天気がいいし、森を散歩して、滝を眺めながら京極夏彦の新刊でも読むか。

刹那

そういうシチュエーションで、そんな分厚い本を選ぶか?

松本

電子書籍だから厚さは関係ありません。
飲み物と菓子も持って行くかな……水と飴でいいか。おじいさまも行きますか?

刹那

行ってもいいが、水と飴て。どうせピクニックするのなら、もっといいもん携えろよ。
紅茶淹れてもらって、菓子も包んでもらうから、ちょっと待ってろ。白鷺~!

松本

そんなわざわざ。
「今あるもので快適に暮らす」のが大事だと思いますけどね。

刹那

誰からこづかいせびってそれっぽいこと言ってんだ。
手に入る範囲のものを工夫するのが、知恵であり生活というもんだ。

鳥を……えーと、存在しない青い鳥を追うのはアレだが、スズメみたいなの愛でるのは……それが満たされることというか……。

松本

??

刹那

ステキなこと言おうとして、中身が追い付かなかった。俺も本を持って行こうかな。


幸福を振りまく仕事 上級/下級


典雅

やあ、いい天気だ。
香を焚いて、レコードでもかけようか。少し風も入れよう………おや、刹那の猫だ。よしよし。

万羽

ジジイ~。

典雅

普段は若いふりをしているんだから、何もない日くらいくつろいでもいいだろう。
ほら、水飴。メロン味。

万羽

わーい。
あたし、水飴練るの大好き。♪♪………♪

典雅

可愛い女だな。おっさんを転がしているとは思えない。

万羽

おっさんはみんな働いて疲れてて、どこにも逃げられなくて、息を抜きたいだけだもん。あたしが転がさなくても勝手に癒されてるんだから。

典雅

中高年の男の逃げ場のなさは、想像するだに辛いからな……。
それをわかってくれてる時点で、君くらいどの角度から見ても金目当ての女でも、癒しの女神か。

万羽

むっ、イヤミ~?

典雅

いや、立派だと思ってる。対価として、女神や妖精の役を引き受けてやるわけだろう。

離婚させないテクニックを教えてくれないか。私の女はどうも、すぐ離婚して私と再婚しようとするんだが……。

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