タペストリー終端 「針と傷の物語を終える」
今回の織り方
・蜂の残した針 35話の模様について
・タペストリー終端。これまでの糸をすべて確認し、最後の処理
・織り手は安息の場所へ。それがどこかは、自分で選べ
前回の織り方
・最後の糸のために、彼は小屋から出た。もう戻ることはない。
雨はまだ降らない
降らせないわ、私が。
ユニコーンは水の清らかさを守る神獣だ。
かの者に水の加護がなければ、嘘だろう。
怒涛の伏線回収
沙羅の政治的迷走、万羽の目のこと、花苑の怪我が継続していること、沙羅が結婚した理由、片や雨にさえ怯え片や滝を浴びる、万羽の経済力、価値があるのは克己ではなく東雲、典雅寄りの一票がそこにあること、メサイア・コンプレックス…………『蜂』の中の糸だけでもまだある。
さすが「後付け」の大将。「すでに巡らされた糸」で模様を組ませたら、あんたの右に出る者はいないわね。
それしかできることがないからな。
事務方の手伝いならばできるが、刺繍の才能はない。お前たちが丁寧に織ってきたから、模様のための糸を取り出せただけだ。
万羽が沙羅を取り込もうとしている?
これはどこから見出したの?
………ああ。
俺の邪推か? 悪意的だと軽蔑するか。
いえ、刹那が張らないタイプの縦糸だから、少し驚いただけ。
そうか、そうね……。
あんたの解釈において、万羽は「かなり悪」とされてる?
俺の言えた義理じゃねえが、道徳心があまりないと思ってる。
心根は善良なんだろう。それ以外に疑問がある。
まあ、同意する。
私も別に、万羽の心をさほど美しいとは思わないんだけど、『蝶』のような目に遭っていい女だとも思ってないのよ。
刹那の死後に朝露の立場が劣悪となる……それの解除に動いているように、「弥風の死後に万羽が孤独にさらされる」未来にもまた、少しくらいは手を入れてあげたいの。
…………。
「冷淡な縦糸」に慣れてないから戸惑うわね、私も。
無視したわけじゃない。考えていた。
親の嫌いな食べ物を、子が嫌うことは多いらしい。
……擁護的に言うのなら、父親を見捨てることができないんだろう。
あんたの認める「完璧な愛」は、誰も持ってやしないわよ。
あったとしても、あんたの目には見えない。
だってそこにあるじゃない
「弥風が万羽のために組み立てた足場」よりもわかりやすい愛が、この世にあるというの。
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