「近畿地方のある場所について」を考察(山の怪異仲間として)
ミステリ大好き。せつぴっぴだよ。
山に住んでおり、地元民からおはぎとかをもらって食っている。
今回は、話題になっている怪談群『近畿地方のある場所について』の、2023年3月27日現在(最新投稿は「浮気」)までの考察をしてみた。
つたないものだが、作者が考察を歓迎しているということであるし、よかったら見ていってネ。拡散を求めているモノもいるようであるし♡
三種類の怪異、二派閥ではないか
①白デカ男
②ジャンプ女
③首の傾いた男の子
このうち、②と③は同一の派閥に属すると考えられる(後述)。
彼らの目的
白デカ男の目的
・嫁。なんぼでもほしいようだ。スケベ。
ジャンプ女の目的
・子供の友達?(某月刊誌 2009年8月号掲載 読者投稿欄)(ネット収集情報 4)
男の子の目的
・命そのもの?(インタビューのテープ起こし 2)
白デカ男のテリトリーは西のダム、ジャンプ女は東のマンション
・マンション(ジャンプ女)の怪異は死体を出す。
・ダム(白デカ男)は行方不明にする。例外もある。
「ダム=白デカ男は死体を出さない」を特に強く示唆するのは、林間学校集団ヒステリーにおける、委員長の通夜の記述。
例外的な死体
(某週刊誌 1989年3月14日号掲載「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」)
死体を出さないはずのダムの怪異に属するが、Aちゃんの叔父、Mはおそらく死体が出ている。死体なき自殺ならば付記があるはず。遺書もないため、死体が発見される以外に「自殺」が確認されるすべがない。
この自殺は
①姪を巻き込んだ罪悪感による、本当の自殺
②何者かに懲罰的に(?)誘導された自殺
②の場合、誘導した「何者か」は白デカ男ではない気がするが。嫁をもらってハッピーなはずなので。褒章的に死を与える性質などは現在確認されていない。
いや、そもそもダムで死体が出ている
(ネット収集情報 1)
2016年8月19日 『××新聞デジタル』からの引用記事。女児と母親の遺体がダムに浮かんでいる。
前項のAちゃん(1984年に失踪)は「生きてもいないし死んでもいない」と霊能者が判定し(1988年)、トラック運転手などに姿も目撃されている(1989年の記事により判明)。
しかし、この記事の女児は明確に死亡している。
この差は何か
仮説①/すでにAちゃんを嫁として手に入れていたため、新しい嫁はいらなかった
→疑問点/いや、こいつめっちゃ欲しがるじゃん。一夫一婦にしては欲しがり証言が多すぎる。
仮説②/ロリコン。Aちゃんは8歳だから合格、死亡女児は12歳だから不合格
→疑問点、というよりも否定根拠/こいつはAV女優のことだって嫁にほしがっていた(某月刊誌別冊 2017年7月発行掲載 短編「おかしな書き込み」)。
だから処女厨でもない(12歳だとギリギリ処女ではないという線があるが、それによる拒否ではない)。
結論/現時点では謎。
テリトリーの重複
「まっしろさん」が行われていたのは、ジャンプ女のテリトリーと思われる東側のマンション。
ただし「まっしろさん」を行っていたのは、地元民ではなくマンションの子。
全体として、白デカ男には旧弊的、ジャンプ女には現代的な印象がある。
「まっしろさん」が指すのはあきらかに白デカ男のことだが、この遊びは近年考えられたものなのではないか(地元民が知らないことから)。
西(白デカ男)の怪異は知名度が高く、東(ジャンプ女)はかなり低い(『近畿地方のある場所について』 2)。
ジャンプ女は近代に生まれた怪異である
高い確率で、お札屋敷(ネット収集情報 3)の自殺者親子だと思われる。男の子の首が傾いているのは、首を吊ったためではないか。
さらに、テリトリーに関する疑問
「待っている」掲載前原稿において母親が柿を用意している。
柿は白デカ男になじみのあるキーワードだが、このマンションはジャンプ女のテリトリーでは?
・ジャンプ女も柿が好き?
・このあたりで「いいもの」といえば柿?
・テリトリー争いが行われている?
そもそも、飛び降りはなぜ発生するのか。
「ダムに消える女」は輿入れとも解釈できるが、マンションから飛び降りるのは同義と見てよいのか? あるいはより多くの死者を出した方が力を得るレースか?
二種類のシール
某月刊誌 2008年7月号掲載「謎のシール、その正体に迫る!」
「女」のほうはあからさまに白デカを感じさせるが、「了」は何か。
白デカは嫁をすごくほしがっているので、「了」になることはない気がするが。
「陣取りゲームでもしてたんじゃないでしょうか」というガードマンの感想
「女」は白デカのシール、「了」はそれを邪魔するジャンプ女のシールか?
現在の仮説として、「お友達」はジャンプ女に類するワードであるため、「女=白デカ 了=ジャンプ女」であることはますます強く確信される。
あるいは、了は「子」の書きかけということもあるか?
シールを探してからダムに飛び降りたRさん
Rさんの三面鏡に貼られていたシールは、回収したものなのか、Rさんが描いたものなのか(シールが人の手描きによって量産されることは一家四人の消失事件にて既出)。
「回収したシール」であった場合、懲罰的な死であった可能性がある。Rさんの鏡に貼られていたシールが「女」であったか「了」であったかは記載されていない。
「ダム側の怪異は死体を出さないが、懲罰的な場合は別」と考えると、Aちゃんの叔父の件と一致を見る。
ジャンプ女は若い怪異
機械を媒介として駆使する怪異
インターネットで自身をアピールし(某月刊誌 2015年2月発行掲載 短編「賃貸物件」)、そののちコピー機からもアピール(?)を行っている。
また、前の項においてチェーンメールにも噛んでいる。
被写体がいる時、撮影者がいる
「賃貸物件」の次の回、ネット収集情報 2において強調される事実である。バイカーを撮っている者がいる。
ではジャンプ女を撮影しているのは誰か。
インタビューのテープ起こし 1の動画において、ジャンプ女は真上から撮影されている。
なお、バイカーが接触した怪異は「白デカ男」であると思われるが、ブログに干渉するという手口はジャンプ女に親和性が高く、真相は不明である。
出張すんのかい
投稿順に読んで、まず「うわっ! 土着じゃなく、ついてくんの!?」とゾッとさせられるのが、鳥取に出張してくる男だ。(読者からの手紙 1)
これは白デカ男の擬態フォームと思われる。白デカ男は、里においては「普通の人間」の姿を模す(ネット収集情報 1)。
なおこの読者は、マンションにもお札屋敷にも行っているが、ジャンプ女周りの怪異には見舞われていない。のちにダムへ向かう道で白デカ男にターゲッティングされた。
ジャンプ女もついてくる、いや、ジャンプ女のほうが積極的についてくる
インタビューのテープ起こし 2において印象的なのは、「ついてくるものが変わった」点。
ついてくるのがジャンプ女から男の子に変遷しており、「ジャンプ女はもう憑いていない」。バトンタッチ式? そもそもジャンプ女は偵察なのか。
ジャンプ女と男の子は連動した怪異であり、親子なのではという論が有力化される。ただし、血の繋がった親子とは限らない。(次項へ)
「読者からの手紙 2」を書いたのは誰か
「子を持つ女」を悪く言っている様子から、白デカ男と思われる。
ジャンプ女がネットで自身を拡散し、力を増していくことを苦々しく思っているようだ。拡散に加担する編集部にもムカついている。電子機器にムカついているのが老害っぽい。
しかし、「西からひびく音がうるさい」とイラついている。
おやっ? 西は白デカ男のテリトリーのはず。敵(ジャンプ女)は東にいるはずでは?
では、ジャンプ女が書いたのか
この場合、「あの女が生んだ悪魔の子アキラ」がかなり唐突な存在となる。
「あの女」が誰? 白デカ目線ではジャンプ女だが、ジャンプ女目線の「あの女」は、少なくとも23話現在では思い当たらない。
ところで今気づいたのだが、「了」はアキラとも読むな。
53番目の写真
某月刊誌別冊 2010年5月発行掲載 短編「心霊写真」
白デカ男に属する怪異と思われるが、5号棟3階は「柿を用意して何かを待っていた」母親の住んでいた自殺マンションである。
ここでも白デカ男とジャンプ女の勢力の混在を認識させられる。
ジャンプ女に憑かれているものと思われるが、息子が行ったのはおそらく林間学校の保養所。
2002年の時点では白デカのテリトリーであったが、2019年にはジャンプ女のテリトリーになっている?
「母子は血が繋がっているわけではない」ことが前項読者からの手紙 2で示唆される。つい「子供をさらっては自分の子だと思い込む系の女怪異」のように思っていたが、この文章を読むと、替わるのは母親のほうとも解釈できる。
子持ちの女を呼んでいると考える場合、思いつくのはネット収集情報 1のダムの母親、待っているのマンションで柿を用意した母親。
なお、シールにハマッて消えたRさんには子供がいなかった。
余談だが、シールを量産して消えた一家は、「父親も一緒に消えている」点がレアだ。他のケースだと、家族を狙う怪異は妻と娘にしか用がない印象を受けるが。
白デカ男が女を要求したものと思われるが、前述のように「まっしろさん(ましろさま)」は、近年にジャンプ女が広めたものと考察される。それにはどのような意図があるのか。
この二者は対立しているものと思われるため、「まっしろさん」は白デカに不利益をもたらす行いか?
まっしろさんは二度手間
まっしろさんは、女の子をつかまえたあと、「身代わり」を要求するというルールだ。
「ただし身代わりを渡せば女の子は解放される」ではなく、「身代わりを渡すまでは終わらない」が主旨である。
これは白デカ男の望みとはズレる。白デカ男は、身代わりではなく、女の子を求めているはずだからだ。
ジャンプ女は「白デカから女の子を解放すること」を望んでいる?
→お札屋敷の「自殺した子供」は性別不明である。アキラという男の子なのではないかと思ってしまうが、女児なのかもしれない。
今はここまで
白デカはあきらかに山に属しているが、ジャンプ女は全然だよな。
食い物の味を吸っているのは白デカだろう。神的な行いだ。ジャンプ女はもっと霊寄りの…………いや、ジャンプ女や男の子も神寄りの位だったか(インタビューのテープ起こし 2)。
ジャンプ女の勢力が、霊から神に上がりつつあるのか?
読者からの手紙 2の「おヤマに あんなもの神なんてはずかし。い」は、新参を蔑視する「山神として先達」の白デカのムカつきを感じる。
現在も連載中なので、いずれ謎は明かされ、あるいは増えていくことだろう。楽しみにしている。
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